生活保護を取り巻く受給者バッシング――“ナマポ”は本当に悪なのか!?
#生活保護 #貧困
長引く不況などの影響から、生活保護の受給者は今年1月の時点で209万人を突破、昨年7月から過去最多の更新が続いている。その勢いは止まることを知らず、今後もますます増え続けると予想されている。あちこちで国の予算が削減される中、高齢者、母子家庭、障害者、うつ病、DV被害などの世帯を中心に、年間3.7兆円もの税金が投じられているのが現状だ。
ネットの世界では“ナマポ”と呼ばれ、月に十数万円が支給されるケースもあることなどから、「働いたら負け」と揶揄されることもある生活保護。しかし、生活保護はあくまで最後のセーフティネットであり、損得勘定で語られるべきものではない。そこで、日本女子大学で貧困や福祉政策を研究し、『現代の貧困―ワーキングプア/ホームレス/生活保護』(ちくま新書)の著者としても知られる岩田正美氏とともに、生活保護というシステムの仕組みやその問題点を考えてみたい。
■「水際作戦」と「受給者バッシング」
まず、生活保護を受給するためにはいくつかの条件がある。収入が国が定める最低生活費に満たないこと、家や車などの資産を持っていないこと、また親族などからの援助も受けることができないことなどが挙げられる。このような基準は、福祉事務所のケースワーカーと呼ばれる職員によって査定され、受給の可否が決定される。受給金額は個人や地域によって異なるものの、支給される金額は“ワーキングプア”として汗水流して働く人とほとんど大差はない。その結果、ネット上などでは受給者に対するバッシングが後を絶たない。
かねてから、生活保護の受給には暴力団などによる不正がはびこってきた。その金額は2005年度で72億円にも上るといわれている。そこで、窓口業務を担当する各自治体の福祉事務所では「水際作戦」と呼ばれる対応をする。これは、福祉事務所の窓口でできるだけ申請を受け付けず、相談のレベルで相談者を追い返してしまうことをいう。「生活保護の申請は国民の権利なので、申請をした上で却下となれば不服申し立てや裁判もできますが、申請をさせなければ、そうしたこともできなくなってしまいます」と岩田氏。しかし、その審査の厳しさによって、受給申請が却下された者による孤独死や犯罪事件などが発生すると、「弱者切り捨て」と批判の矢面に立たされてしまうのだ。
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