祭りの終わりと新ステージの幕開け、3部作完結『サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』
#映画 #パンドラ映画館
瑛太)が『SR3』の主人公。鬱屈した日々
の中で、溜め込んだ情念をMCバトルで
爆発させる。
『SR』シリーズは、入江監督にとってリアルな自分自身の進行形の物語だ。日大芸術学部を卒業して念願の映画監督になったものの、キャリア不足、ネームバリュー不足、予算不足のないない尽くしで、ままならない日々が続く。もう20代も終わりが近づき、貯金残高も残すところあと僅か。ギリギリに追い詰められた自分の心境を、ニートなダメラッパーのイックら登場キャラクターたちのラップに重ねた。『SR』シリーズは同じような境遇にある地方在住もしくは地方出身者たちの共感を集め、インディーズ映画としては異例のロングランヒットに。入江監督は全国各地の映画館に呼ばれてせっせと舞台挨拶に出掛けたが、その分生活費を稼ぐことができずに、余計に生活は苦しくなった。一時的に深谷の実家に戻るはめに。しばらくして、いろんなところからオファーの声が掛かるようになったが、今度は殺人的スケジュールを乗り切らなくてはならないという別のシビアさに直面する。最初のステージは全力でぶつかることで何とかクリアできたものの、新しいステージではより面倒な難敵たちが手ぐすね引いて待ち構えていた。
として国際的な注目を集めた北村昭博が
「極悪鳥」のメンバー役。今まで以上に
配役もグレードアップ。
『SR3』の主人公はお調子者のMC・マイティ。『SR1』でイックやトムと一緒にヒップホップグループ「SHO-GUNG」のメンバーとして初ライブする日が来ることを待ちこがれていた。でも、夕方になると真っ暗になる地元の街にはライブハウスはおろかクラブもCDショップもない。一度、公民館でラップを大人たちの前で披露したけど、大恥ぶっこいた。夢を叶えるなら、やっぱり東京に出たほうがチャンスに近い。そう考えたマイティは、イックとトムを裏切るようにして故郷を後にした。これも夢を叶えるためだ。東京で人気ラップグループ「極悪鳥」の見習いメンバーになるものの、実際はただのパシリでステージに立たせてもらえない。福島出身のポッチャリ娘・一美と同棲しているが、まだ自分のラップを聴かせることもできずにいる。昼は日雇い労働で、夜はパシリというサイアクな生活。実家でブロッコリーを収穫しながら、イックやトムと曲づくりしていた日々がずいぶん昔に感じられる。ある日、メンバー入りの約束を反故されたマイティはキレて、メンバーをボコボコに。一美を連れて流れ者となったマイティは、栃木で盗難車の転売を手掛ける違法業者の下請けに身をやつす。夢を叶えるどころか、もはや裏社会の人間になりつつあった。そんな中で、違法業務を仕切るコワモテの胴元から詐欺まがいの野外フェスを開くように命じられる。その野外フェスにカモがネギを背負うようにひょこひょこと現われたのが、相変わらず能天気にラップを続けていたイックとトム。3人はあまりにも皮肉な形で再会することになる。
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事