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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.166

祭りの終わりと新ステージの幕開け、3部作完結『サイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』

sr31.jpg“北関東3部作”完結編となる
『SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』。
夢を追い掛けて故郷を離れたマイティのその後が描かれる。

 夢を追い掛けているつもりだったが、いつの間にか現実から逃避しているだけなことに気が付いた。埼玉のブロッコリー畑育ちのマイティは夢をその手でもぎ取るために東京に向かったが、知らず知らずにいろんなものから逆に追い掛けられるはめに陥った。お金にシビアな怖い大人たち、警察、東京でトラブルを起こしてバックレたバンドのメンバー……、みんなでマイティを押さえつけようとする。長回しで繰り広げられるこのクライマックスシーンは、観ている人間をひどく息苦しくする。マイティがいろんなものから追われているように、この映画を観ている自分もいろんなものに追われている。毎月の家賃の支払いだとか、滞納気味の国保だとか年金だとか、今の仕事に未来はあるのかとか、付き合っている彼女とのケジメはどうすんのとか、実家をめぐる火種とか、切実な問題がすぐ後ろから首根っこを捕らえようと手を伸ばして迫ってきている。入江悠監督の地元・埼玉県深谷市を舞台にした『SRサイタマノラッパー』(08)、群馬在住のアラサー女子の葛藤を描いた『SRサイタマノラッパー2 女子ラッパー★傷だらけのライム』(10)に続く『SR』シリーズの第3弾。『SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者』は“北関東3部作”の完結編となる作品だ。前2作が切なくもおかしいコメディだったのに対し、本作はシリアスな作風へと大きく振り切れている。

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