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日刊サイゾー トップ > カルチャー  > さよなら119系 浅春の飯田線
元祖聖地巡礼の旅【1】

さよなら119系 浅春の飯田線の旅――雨と涙の下山ダッシュ

 と尋ねると、店のほうに回るよう指示され、店だった部分の戸を開けて中に招いてくれた。出してくれたのはスタンプと駅ノート。開いてみれば、今年になってからも10人あまりが既に訪問していた。聞けば、多い時には30人も来たことがあるというし、かつてのブームの時以来、今では子ども連れで訪れてくれる人もいるそうだ。おばあさんも「ああ、“あ~るくん”のファンね」「119系もなくなっちゃうね」と、とても詳しかった。そんな歴史の重みを感じるノートをじっくりと見せてもらったが、誰もが田切駅を訪れた感動を書き記している。

iidasen01_011.jpgこれが、あの駅スタンプ。今でも大切に使われている


iidasen01_011.jpgかつて行われたファンのツアーのポスターも貼られている

 きっと、現在盛り上がりを見せているアニメの聖地も、廃れて誰も来なくなるなんてことはなくて、数が減っても何度も訪問する人は絶えないだろう。

iidasen01_011.jpgここまで来なければ絶対に手に入らない。その苦労が楽しい

 丁重にお礼の言葉を述べて、再び田切駅から次の目的地に向けて列車に乗り込む。こうして綴ると、順調に列車が来ているように見えるかもしれないが、通常の飯田線の運転感覚は1時間に1本程度。それに、全線は乗りっぱなしでも7時間はかかる長大な路線だ。

 とにかく、この路線に来ると時間はゆっくりと流れていく。乗っている時も、誰もいない駅で待っているときも。都会でせかせかと過ごしている時には、絶対に味わえない贅沢な時間の使い方が、ここではできるのだ。旅行だからといって、値段の高い旅館に泊まったり、贅沢な料理を食べなくてもよい。流れていく車窓を長めながら、うとうととしているだけで十分に満足することができるのだ。

 乗るなり、撮るなり、聖地巡礼なり、多様な楽しみ方ができるのも魅力だろう。『飯田線のバラード』を聞きながら、ずっとこのまま乗り続けていたいと思った。
(取材・文=昼間たかし/次回は伊那市駅に停まります)

最終更新:2012/04/10 13:32
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