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日刊サイゾー トップ > カルチャー > 本・マンガ  > 殺風景な仮設住宅が大変身!?

殺風景な仮設住宅のイメージがガラっと変わる!?『仮設のトリセツ』

 車も通らない仮設団地の通路には子どもたちもいっぱい。元気に遊びまわり、夏にはお祭り、おえかき教室やボランティアさんとの鬼ごっこ……。家の中から子どもたちの様子が手に取るように分かることも含めて、古き良き昭和の長屋のような雰囲気だ。

 「誰にでも住める」仮設住宅は、「誰にでも住みにくい」住宅でもある。そんな殺風景な仮設住宅が並ぶ仮設団地は、カスタマイズによって人の手が入ることでだんだんと街らしくなっていくのだ。

■『仮設のトリセツ』著者は大学教授

 本書の著者は、新潟大学工学部建設学科准教授の岩佐明彦氏。新潟では、2004年から07年にかけて、7.13水害、中越地震、中越沖地震という3つの災害が続いた。これらの3つの災害で計5,500戸の仮設住宅が建設され、たくさんの人が一時的に不自由な生活を強いられた。新潟大学工学部の岩佐研究室では“同じ新潟に住む者として何かできないか”と、「仮設de仮設カフェ」というプロジェクトを実施。実際に被災地へ足を運び、仮設住宅に住む人々から仮設住宅の暑さをしのぐ方法や彩りを与える方法、ご近所さんと仲良くなる方法など、さまざまな「仮設の知恵」をヒアリング。居住者による環境改善策に注目しながら、仮設住宅の居住環境支援に取り組んできた。

 東日本大震災ではこれまでに蓄積されたアイデアをもとに、ウェブサイト「仮設のトリセツ」(http://kasetsukaizou.jimdo.com/)を開設。被災地へ何度も足を運び、居住者に仮設住宅の改善策をレクチャーしたり、冊子を配布するなどの活動を行ったそうだ。

「つらいことばかりじゃありません。この本のアイデアで前向きに暮らしています」(福島県いわき市好間仮設住宅自治会長 藤井和彦さん) 

 と本書の帯には書かれているが、この本から見えてくるのは逆境にも負けない人間のたくましさや、地震や津波によって失われた町が少しずつ再興していく確実な息吹。一見、仮設住宅のマニュアル本やリフォームアイデア集のように見える本書だが、復興を支援する一つの表現なのかもしれない。

●いわさ・あきひこ
新潟大学工学部建設学科准教授・博士(工学)。1994年東京大学工学部建設学科卒業。2000年同大学院博士課程修了。同年新潟大学工学部助手。03年より現職。

仮設のトリセツ』

最終更新:2012/04/12 14:00
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