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【TAF2012】「まずは、入ってから考えろ」アニメ業界に就職する方法は、これだ!

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 日本動画協会が行う文化庁の支援事業「アニメ・クリエイター育成ビジョンづくり」。そのシンポジウムの様子は以前、当サイトでもお伝えしたが(記事参照)、「東京国際アニメフェア2012」(以下TAF)のビジネスデー2日目、アニメ業界を志す学生を対象に、ずばり「業界への就職」を主題としたセミナーが開催された。このセミナー、TAFの会場で開催されるにもかかわらず、なぜか告知は「育成ビジョンづくり」のサイト上程度。登壇した『アニメビジネスがわかる』(NTT出版)の著者でもある増田弘道氏(日本動画協会データベースWG座長/映画専門大学院大学教授)は、「TAFでも告知されていないイベントにわざわざお越し下さってありがとうございます」とあいさつをした。

 このセミナーの趣旨は、アニメ業界を志望する学生に向けて、アニメ業界には具体的にどのような仕事があるのか紹介するというもの。通常、アニメに関わる仕事としてまず思い浮かべるのは、実際の制作に携わるアニメーター。あるいは、指揮を執るアニメプロデューサーといったものだが、実際、アニメ業界の仕事の種類は多種多様だ。単に作品を作って自分の世界を表現したいなら、アーティストになるのが手っ取り早い。これなら、儲けなど考えずにやりたい放題ができる。しかし、多くの人が携わりたいと思っているアニメ業界が扱うのは、アニメーションではなくてアニメ。1960年代に始まった日本式リミテッド・アニメーションによる商業目的の作品だ。要はビジネスが目的なのだから、必要なのは採算と生産性と継続性。中でも生産性はもっとも重要な要素だと、増田氏は説明する。新海誠氏をはじめ、個人で活動するアニメーション作家もいるが、ビジネスを目的とするならば、やはり集団作業は欠かせないのだ。ゆえに、アニメーションではなく、アニメに携わるなら、まずはどこかの会社に所属することから始まるのである。

 「制作=作ること」「製作=プロデュースすること」等々、細かい用語の違いまで説明しながら、増田氏は「作るだけなら誰もできる」という。ビジネスである以上、でき上がった作品を運用し、投入した資金を回収、分配することは必然だ。さらに、作品を流通させる過程もあることを考えると、アニメ業界に関わる仕事は無数に存在するのだ。

「制作と製作は無数に入り組んでいます。バンダイやアニプレックスのように製作を主としながら制作にも深く関わる企業があります。かと思えば、アニメイトのように小売りから作る側へとシフトする企業もあります。実は、業界に入るにもいろいろな道があるし、さまざまな形で関わることができるんです」

■意外に仕事が豊富なアニメ業界

 かつては、アニメ制作会社は「誰でも就職できる企業」だったという話はよく知られる。面接に行ったらその場で採用決定、翌日から出社というエピソードはよく聞かれるところ。中には、アニメのことなど何も知らず、資格は運転免許だけなのに、制作進行に採用されて、社長になった人もいる。今ではそこまで「ザル」ではなくなったとはいえ、それでも「なんでもいいからアニメに関わる仕事を」と思うのならば、難関ではない。

 とはいえ、気になるのは「ちゃんと給料をもらえるのか」というところだろう。増田氏は、制作会社では一般的な初任給は15~20万程度(ボーナスなし)と、一般に考えられているほど悪いものではないと指摘する。一方、アニメ業界の薄給の代表格といえば、アニメーターだが……。

「アニメーターは、本質的にミュージシャンなどと同じ自営業です。そして職業としての“アニメーター”は“原画”の仕事から。“動画”(原画に中割りを加えて清書した線画)は見習い期間で、本来ならばお金がもらえるような存在ではありません」

 と、厳しい意見も。ちなみに、動画を3年やって原画になれないならば、適性がないとの指摘も。逆に、制作の現場で「オイシイ仕事」は、著作権があるので印税が入るメリットのある脚本家なのだとか……。さらに、求人数が増加しているのはCG制作だという。

 いずれにせよ、アニメーターへの道は厳しいのだが、実写に比べて優遇されているという側面もある。というのは、アニメーターの場合は、制作スタジオが機能し、そこで職業人として育ててくれるからだ。アニメに関わる仕事がしたい学生に向け、増田氏がひとまずの結論として述べたのは、「とりあえず、何か仕事に就いてから目指す方向性について考えていけばよいでしょう」というものだ。

 ただし、アニメ業界を志望する人の多くは、アニメファンということになるだろうが、実際に業界で成功するのは、冷静にビジネス的な感覚で携われるタイプの人々だ。いまや小売りから製作にまで携わる、アニメイトの創業陣の前身が家具屋だったように、他業種から転身した人々が成功する理由もこの部分だ。

 いずれにしても、単に消費者として終わりたくないけれど、絵も描けないし、なんの技術もないという人であっても、一旦、業界の端っこに入り込むことができれば道は自ずと開けるはず。結局、必要なのは自分が好きではない作品でも「これは面白いんですよ!」と、作ったり売ったりできる、メンタルの強さなのではなかろうか。
(取材・文=昼間たかし)

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最終更新:2013/09/06 16:04
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