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もしも哲学者がミミズにハマったら......

あの“スカトロ教授”が「ミミズへのラブレター」を書籍化!? 

mimizu10.jpg『教授とミミズのエコ生活』(三五館)

 狂おしいほどの“スカトロ愛”を「月刊サイゾー」本誌で訴え続けてきたあの大学教授が、今度は“ミミズ愛”を叫ぶ!?

 ……と書くと、何やら怪しげなドロドログチョグチョなものを想像してしまうだろうが、さにあらず。2012年2月に刊行された三浦俊彦氏の新著『教授とミミズのエコ生活』(三五館)は、いたってマジメ(?)な“ミミズ飼育記”だ。哲学者である著者が、自宅に太陽光発電パネルを設置したのを機に、「大地でもエコっぽいことを」と、ミミズによる生ごみ処理システムである「ミミズコンポスト」(約2万匹まで増える屋外用のキャノワームと、数千匹程度飼育できる室内用のミミポットとがある)を導入し、その維持・管理にハマる日々を詳細につづったものである。

 その過程で同氏は、ミミズで生ゴミを処理して有機肥料を作るという本来の目的を早々に放棄して、ミミズのために「サトウのごはん」を丸ごと投入したり、生ゴミをわざと過剰に出したりと、ミミズを飼うこと自体が目的化するという本末転倒な状態に陥り、ついには東日本大震災発生時に真っ先にその心配をするほどミミズを愛するようになっていく。そして、ある日唐突に訪れるミミズの大絶滅……。

 三浦氏といえば、美学・論理学を専攻する現役の女子大教授であり、芥川賞候補に3度も挙げられた才気あふれる作家であり、自著の装丁画を自ら手がける芸術家でもあるという才人だ。これまでに取材で何度か訪れたあの邸宅で、12年もの間、数万匹単位のミミズが人知れず暮らしていたとは! 早速、都内某所のお宅を訪問し、ことの次第を聞いてみた。

mimizu04.jpg自宅地下にある、室内用の「ミミポット」
をほじくり返し、愛しのミミズちゃんを手の
ひらに載せる三浦氏。

「もともとエコ意識は高いほうだったんですよ。熱帯雨林が伐採によって激減してる話なんかを聞くといたたまれなくなるし。それに、サプリメントが好きなことと通ずる点もあるんです。サプリメントの中には化学合成したものもたくさんあるけど、僕は基本的に天然素材を寄せ集めてなんとか効果を出そうという自然食品系のものにしか興味ないですからね」

 そう、三浦氏は、1日3食をカップ麺で済ませ、足りない栄養を300錠の錠剤で補う重度のサプリメントオタクであり、烏龍茶の340mL缶のみを蒐集して自宅リビングの一番目立つ飾り棚に陳列する好事家であり、そして何より、自称日本一のスカトロAVマニアであるというヘンタ……いやいや、まさに哲学者の鑑というべき柔軟で鋭利な頭脳の持ち主なのだ。

「それに、本当の『美』とは、ダイエットや整形など、人間の意志で自然を矯正、改造したものにではなく、八重歯とかガミースマイル(歯ぐきの大きく露出する表情)とか、偶然生まれ持ったものにこそ宿ると考えています」

mimizu08.jpg自宅の庭にある、屋外用の「キャノ
ワーム」を分解する三浦氏。こちら
のミミズちゃんは、現在ほとんど
壊滅状態……。

 それが自然の産物であるミミズへの愛にもつながったと。では、ミミズを飼ったことによって、なんらかの哲学的な発見は?

「たとえば、ミミズコンポストは、投入する生ゴミの種類のちょっとした違いなどによって、表面的にはわからなくても、内部でいとも簡単に大絶滅が起きてしまう。それから、小バエは台所に放置した生ゴミにはほとんど湧かないのに、ミミズを入れた飼育箱には大発生する。人間の観点からは、あるいは飼育箱の体積からいえば、ミミズの存在などほんの“微差”に過ぎないのに、小バエの世界にとっては大問題なわけです。そういう事実を目の当たりにして、『やっぱり世の中の表層構造と深層構造は大違いなんだなあ』ということを痛感しましたね」

 なんとも深遠な思索であるが、われわれ凡俗な人間の観点からすれば、家の中にミミズが何万匹もいるということ自体大問題なのだが……。ミミズを飼うことで、アニマルセラピーや子どもの情操教育に役立つとか、何か得られるものは? 

「うーん、その点では、きめ細かな反応の得られる犬猫のほうがはるかに有意義でしょうね。しかもあっという間に全滅するので、生命の尊さを学べるどころか、逆に『どうせすぐ死ぬじゃん』みたいに死に対する感覚が鈍麻して、生命に対する軽視を生みそうです。処理できる生ゴミの量もたかが知れてるし、要するに実用的側面はまったくないということですね。でも、ミミズはホントにかわいいですよ」

 ……なんだか身も蓋もないオチになってしまったが、ムシ好きな人、逆にムシ嫌い克服のきっかけを得たい人、エコに関心のある人などなど、この本を手に取る人々それぞれの欲求に対して、決してストレートな回答を与えてはくれないのが本書のキモ。単純なエコ礼賛本や飼育実用書には到底望めない、哲学的な奥行きとエンターテインメント性の高さが、読者を惹き込む魅力となっているのだ。三浦ファンならずとも必読の1冊である。

●みうら・としひこ
1959年、長野県生まれ。東京大学文学部美学芸術学科卒業後、同大学院総合文化研究科比較文学比較文化専門課程修了。現在は和洋女子大学教授。美学、論理学の研究のかたわら、90年には小説家デビューし、『これは餡パンではない』(河出書房新社)などで芥川賞候補3回。『のぞき学原論』(三五館)で、スカトロAVのマニアであることが判明。『論理パラドクス―論証力を磨く99問』『論理サバイバル―議論力を鍛える108問』(共に二見書房)など著作多数。

教授とミミズのエコ生活 または私は如何にして心配するのを止めてミミズを愛するようになったか
「もしも哲学者がミミズにハマったら?」――。12年前に開始された独りきりのエコ生活の顛末を徹底リポート。章ごとに繰り出される哲学的アフォリズムと、バカバカしくも狂おしいほどにせつないミミズ愛!! 数万匹のミミズとの生活はいったいどこへ向かうのか?
発売/三五館 価格/1,470 円
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最終更新:2013/09/24 17:56
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