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「なんでもアリ」はどこまで許されるか―― 秋葉原・地域活性化シンポジウム

 いまや、日本を象徴するひとつのブランドとなった秋葉原。「電気街」や「萌え」というキーワードで示される秋葉原の多様な顔を使って、今後地域をどのように盛り上げていくか。3月5日、秋葉原に関わるさまざまな人を招いた「地域オープンミニシンポジウム IN 秋葉原」が開催された。

 このシンポジウムは、野村総合研究所の経済産業省委託事業の一環。これまで、「クールジャパン」を一つの柱として「中国への日本の住まい方の展開」「キャラクター・ビジネスの現状と課題」といったテーマで開催されている。

 秋葉原をテーマに扱った今回、まず目を引いたのは登壇者の顔ぶれ。妹尾堅一郎氏(特定非営利活動法人 産学連携推進機構理事長。秋葉原再開発計画に秋葉原クロスフィールドのプロデューサーとして参画)、福嶋麻衣子氏(モエ・ジャパン代表取締役。アイドルが給仕する店・ディアステージなどを運営)、小野一志氏(秋葉原電気街振興会会長/オノデン代表取締役社長)、鈴木雄一郎氏(メイドカフェ・めいどりーみんを運営する、ネオディライト インターナショナル代表取締役社長)、パトリック・W・ガルバレス(『外国人のためのヲタク・エンサイクロペディア』著者)、右高靖智(LittleBSDなどを運営するライトクリエート代表取締役)と多様な面々がそろった。

 平日の午後開催ということもあり、参加者の顔ぶれも、やはり地域の人々、あるいは事業などを通じて秋葉原に関わっている人が目立った。

 まず、基調講演を行った妹尾氏は、秋葉原地域の歴史と多様性を丁寧に解説する。妹尾氏によれば、ヨドバシカメラができても秋葉原の街が滅びなかったこともまた、秋葉原の多様性を象徴する出来事だという。最先端のパソコンを売る店があり、メイド喫茶がある一方で、江戸時代から続く老舗も残っている。また、プロのための電気部品を扱っている店もある。そうしたいくつものジャンルの店が複合的に重なっていることが、秋葉原が滅びないカギであり「大阪の日本橋との違い」であると、妹尾氏は指摘する。

そして、いまやあらゆる企業がテストマーケティングの舞台として注目するほど情報が集積する秋葉原を「現代の高野山」だと説く。中世の頃、多くの巡礼者が訪れることによって、高野山の僧侶は昼寝をしていても世間の動向を把握し、最先端の情報を得ることができた。そのことを指す「高野の午睡」になぞらえて、交通の利便性が高く、テクノロジーと文化の最先端の情報を得られる秋葉原では「秋葉原の午睡」という現象が起こっているというわけだ。

 しかし、もはやあぐらをかいていても、誰もが「秋葉原」を信仰して巡礼に訪れ、感動して帰って行くか……といえば、そうもいかない。続いて行われたディスカッションでは、そうした秋葉原の困難な側面にも触れられた。

 自身も『ドラゴンボール』の悟空のコスプレで秋葉原に現れるなどして注目を集めたことのあるガルバレス氏は、外国人のための秋葉原ツアーを行った経験から「この街は、美少女オタクの街の側面もあります。それは素晴らしいものだが、必ずしもほかの人がそう思うとは限りません」とコメント。彼自身もかなりディープなオタクであるだけに、「さじ加減」にはかなり困った経験がある様子だ。

 これを受けて小野氏は、

「最近ではアダルトグッズ専門店が店頭にお菓子なんかを陳列するようになりました。外国人がそれを見て、”なんの店だろう”と入っていって驚いている光景も見られます。これじゃ、日本は酷い国だという印象を持たれてしまいます。やはり、交通整理は必要ではないでしょうか」

 と、率直な意見を述べた。秋葉原の魅力の根源が多様性であり「なんでもアリ」なのは間違いない。ただ、それもさじ加減を間違えると、とんでもないことになってしまう。

「秋葉原の活性化にあたって”24時間都市”という意見もありますが、私は反対です。なぜなら、暴力団が入り込んでくるからです。これまでも、秋葉原の人々はそうした勢力が入り込んでこないように戦っているんですから。もしも、そうしたものまでアリになってしまうと、歌舞伎町になってしまいます。今の六本木はまさにそう」(妹尾氏)

 暴力団はともかく、さじ加減は難しいところ。「萌え」系の店を運営している鈴木氏や右高氏は、地域住民と断絶せず調和していくことの困難さについて述べた。

 ただ、小野氏は「最先端」な店と地域住民、古くからの商店会が断絶し、対立しているわけではないという。

「歩行者天国の再開にあたって、1年あまりは地域の住民とも意見が食い違っていましたが、話し合いの場を持ち再開することができました。話し合いの場なんて、連続殺傷事件の前にはなかった。それだけでも随分と違ってきていると思います」

 秋葉原を愛してやまないのは誰もが一緒。それをどう発展させていくか、まずは常設的な話し合い「場」が必要なのではないだろうか。
(取材・文=昼間たかし)

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最終更新:2018/11/19 15:44
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