“不良の格闘技大会”『THE OUTSIDER 第20戦』もやっぱり熱かった!!
#格闘技 #前田日明 #THE OUTSIDER
乱闘続発! 骨折続発! 新王者誕生!──前田日明主催の不良系格闘技イベント「THE OUTSIDER(アウトサイダー)第20戦」が12日、東京・ディファ有明で開催された。2,046人(超満員札止め)の大観衆、その約8割が不良で占められた会場では、この日もアチコチでトラブルが勃発し、時には乱闘に発展するケースも。そんな中、行われた試合では、元チーマーにして元自衛官という異色の経歴を持つケンカ屋が、強豪弁護士を骨折させて新チャンピオンに。また、イロモノ系ファイターが、勝って勢い余ったのか、前田日明を「お前」呼ばわりするなど、なんともスリリングな大会となった。当日の主な出来事を追った──。
●ケンカ、乱闘
「やんのか、コラ!」。巻き舌の怒声が、会場ロビーに響き渡った。声の主は、パーカーを着た短髪男。眉間に皺を寄せ、怒り肩でどこかへ突進しようとしている。それを制止する者、逃げ惑う女性客らで、あたりは緊迫したムードになった。
第15試合、”黒石魂継承 横濱義道会二代目総長”寺内芳彦(23歳・神奈川県)と、”天下無双 和神会の暴君”高森茂之(25歳・栃木県)の戦いが、終わった直後の出来事である。
パーカー男はどうやら寺内サイドの人間、すなわち「横濱義道会」の関係者らしく、寺内の対戦相手だった高森に対し、怒っているようである。
事情を聞く仲間に、「あの野郎、コレモンで(肩で風切って)歩きやがってよ」と説明。どこかでスレ違う瞬間に、高森がよけなかった、あるいは肩が接触したことなどが、トラブルの原因である様子。
周囲にいさめられたパーカー男、いったんは笑顔を見せたものの、遠くに隔離された高森とまた目が合ったのか、「この野郎!」と再びスイッチが入る。
ここで両者の間に割って入り、見事なトラブルシューターぶりを見せたのが、横濱義道会初代総長にしてアウトサイダーきっての人気者、黒石高大(25歳・神奈川県)だった。
黒石はまず、高森の両肩を正面から抱き、優しい顔で一言二言、何事かをささやく。すると、高森は納得したようにコクリ。続いて黒石、いきり立つパーカー男に笑顔で歩み寄り、「もう試合終わったんだからやめろ。な」と静かに諭すと、パーカー男もニコリ。これにて一件落着だ。
慌てず騒がず、両者のメンツを立てつつ、事態を沈静化させた黒石。横浜の荒くれ者を束ねてきた男の、器のデカさを見た気がした。
なお、この日の会場では、第18試合の直後にも乱闘が勃発。アウトサイダーらしいと言えばらしいのだが、主催者の前田日明は「やるんなら表行ってやれ」とウンザリ顔だった。
●”リアルアマプロレスラー”
シバ仁田厚(26歳・神奈川県)
その前田日明を「お前」呼ばわりしたのが、このシバ仁田厚である。背中に大きく「邪道」と書かれた革ジャンを羽織って、リングイン。わずか8秒で試合を片付けると、勝利者マイクを握りしめ、「オイ、前田さん! お前にその器量があるなら、次はロシア人か佐野哲也とやらせろ!」と命令口調で吠えたのだ(前田は苦笑)。「さん」を付けてしまうあたりに、ビビリも感じられたシバ仁田だが、大会終了後の単独インタビューでは、さらなる暴言を連発。客が散り、閑散とした会場に、威勢のいい声が響き渡った。
──秒殺勝利、おめでとうございます。
「オイ! オイ! オイ! 俺が、オイ! シバ仁田厚だ! オイ! オイ! オイ! 俺が、オイ! シバ仁田厚だ!」
──その革ジャンは、今日のために買ったんですか?
「おう! おう!」
──どこで?
「オイ! オイ!」
──アメ横で?
「アメ横だよ! オイ!」
──背中の「邪道」の文字は何で書いたんでしょう?
「ポスターカラーだよ! オイ! 邪道が、俺の、オイ! 生き様なんじゃい! オイ!」
──試合の冒頭で見せた、浴びせ蹴りが印象的でした。
「バカ野郎! あれはフライングニールキックだよ!」
──ヒットしましたか?
「あれは作戦だよ! 誘い込むための! 俺の『地を這う空中殺法』だよ!」
──元ネタである大仁田厚って、フライングニールキックの使い手でしたっけ?
「細かいことはどうでもいいんだよ!」
──最後の逆十字、あれはガッチリ入った?
「あれで相手の腕をヘシ折ってやった! あれ、完全に折れてたぞ! オイ!」
──容赦ないですね。
「そりゃそうだよ! それがプロレスだよ! オイ!」
──プロレスは折っちゃいけないのでは?
「プロレスは折っちゃいけない? じゃあ折れてねえよ!」
──脳機能学者の苫米地英人さんから賞金をもらいましたね。
「苫米地? 俺、苫米地からカネもらうの2回目なんだよ! あいつ、俺のことが好きで好きでしょうがねえみたいだな、この野郎、オイ!」
──今回で4度目の出場ですが、いつも控え室では一人でポツンとしている印象ですね。
「それ言うなよ! オイ! 孤高の、孤高の存在なんだよ! プロレスラーは孤高なんだよ!」
──リングでは無敵のシバ仁田選手ですが、試合後の佐野哲也選手(29歳・静岡県)との舌戦では、完全に丸め込まれていましたね。
「ウホン! ウホン! ウホン!(急に咳込み、声のトーンが下がる)あれは、あれはよぉ……佐野が一枚上手だったかもしれねえ。だが、だが次は絶対あいつを……」
ここで会場の後片付けをしていたリングアナウンサーから、「シバ仁田選手、本日はご来場ありがとうございました」と追い出しをかけられ、インタビューは終了となった。
●”神速”
ソルジャーボーイ一樹(24歳・愛知県)
元チーマーゆえストリートファイト経験は豊富だが、「格闘技の練習は一切していない」と語るソルジャーボーイ。ムキムキマッチョな肉体は、自衛官時代のトレーニングによって培われたという。その剛腕から繰り出される重くて速いパンチを武器に、デビュー以来、破竹の4連勝。そしていよいよ今回、70-75kg級のタイトルマッチ(初代王者ベルト返上による二代目王者決定戦)に駒を進めた。
対するは、ホリベンこと堀鉄平弁護士(35歳・東京都)。アウトサイダーですでに、10勝(4敗)している寝技の達人である。
売り出し中の打撃系選手が、寝技系選手にあっさり負けてしまう場面は、これまでのアウトサイダーでも、幾度となく見てきた。果たしてソルジャーボーイは、その一線を乗り越えることができるのか? 試合前に、ソルジャーボーイを直撃。
──堀選手の研究は?
「どう研究したらいいのか、よくわからないんで……。でも寝技は絶対やらないほうがいいんで、倒れないようにしたいです」
──ソルジャーボーイさんは、払い腰からパウンドアウトという勝ち方が多いですが、今日は終始、スタンドで勝負を?
「基本、組むつもりはないです。タックル来たら、すぐ切ります。でも、もし先に相手の腰を浮かすことできたら、組みに行くかもしれません。でも、万が一、マウントポジション取れてもやっぱり寝技が怖い。だから立ちで勝負します」
試合は、作戦通りの展開になった。堀の執拗なタックルをこまめに切り、粘り腰でテイクダウンを許さないソルジャーボーイ。やむなく打撃で前へ出た堀に、カウンターパンチを見舞い、TKO勝ち。これで無傷の5連勝。見事、70-75kg級の二代目チャンピオンに輝いた。なお、堀は最後の一撃で、右目の上を骨折した。
試合後のソルジャーボーイに話を聞く。
──フィニッシュブローはフックですか?
「フックというより、チョップですね。狙ってません。たまたま親指の付け根が当たってくれただけ」
──堀選手の印象は?
「もうやりたくないです。苦手です。勝ったからよかったけど、たまたまだから、完全に」
──次は誰と?
「誰ともやりたくないです」
──てことは、もう試合には出ない?
「これ(お金)が絡んできたら、僕は動きますよ」
以下、前田日明の記者会見。
──ソルジャーボーイ選手の戦いはどうでした?
「この子はね、初参戦のときから体幹がしっかりしてるしね、見るたび確実にレベルアップしてる。注目株ですよ。ただね、アウトサイダーの選手は、褒めるとすぐ違う方向いっちゃうんで(笑)、『コイツいいな』って子は褒めないことにしたんだよ。だから、今まで何も言わなかっただろ? でもこないだ本人に聞いたら、プロでやりたい気持ちもあるみたいなんで、期待してます」
──こうすればもっと強くなる、というアドバイスがあれば。
「どんな技でもね、いろんな解釈があるんですよ。同じ関節技にしても、決め方がいろいろある。今までできてた技も、もっとよく考えて、どういう原理でどういう風になってるのかをよく理解した上で、ひとつひとつ技を分解していくと、また違う解釈が見えてくる。格闘技も馬鹿では強くならない。必要な脳みそってのは、ここ(頭)だけじゃない。神経の末端まで使う。それが格闘技の脳。そういう感覚を大事にしてほしいですね」
追う立場から追われる立場になった、新王者のソルジャーボーイ。床にヒザを付き、真剣な顔をして、前田の言葉に聞き入っていた。
次回アウトサイダーは5月13日(日)、東京・ディファ有明で開催予定だ。
(取材・文=岡林敬太/撮影=長谷英史)
技術より闘志!
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