アメコミDCコミックのキャラを完全網羅した大事典『THE DC COMICS ENCYCLOPEDIA』
#本
日本の三大出版社といえば、講談社、集英社、小学館であるが、アメコミにも勢力を二分する2つの出版社が存在する。「スパイダーマン」「X-MEN」などを擁するマーベル・コミック、そして「スーパーマン」「バットマン」など長く人気を誇っているDCコミックである。スーパーマンが誕生したのが1938年、バットマンが39年であるから、そのキャラクターたちがいかに長く愛され、幾人もの作家により語り継がれ、描かれてきたかがわかる。
1つの出版社の75年に及ぶ歴史がすべて収められた事典はほかに類を見ない。『THE DC COMICS ENCYCLOPEDIA』(小学館集英社プロダクション)は、DCコミックのキャラクターを一同に集結させた大事典だ。延べ1,000人以上のヒーロー&ヒロインがアルファベット順に収録され、オリジナルのイラストとともに、初登場年月日、本名、本拠地、身長体重、目・髪の色、特殊能力などデータが子細に記されている。本のサイズはなんと縦31cm、横26cm、厚さ3.3cmと超特大の豪華愛蔵版。装丁も超人のように硬く、力強く、ダイナミックだ。
「スーパーマン」「バットマン」のほかにも、宇宙の治安を守る銀河警察「グリーンランタン」、閃光よりも速く移動する「ザ・フラッシュ」など、人気を博したヒーローは沢山いる。だが、その中でも「キャプテン・マーベル」は特異でアンタッチャブルな存在だ。10代の少年ビリー・バットソンが「シャザム!」と唱えると、空を飛び、弾丸をも跳ね返す屈強な中年男性へと変身する。1940年、フォーセット・コミックによって生み出されたキャプテン・マーベルは当時、スーパーマンに比肩するほどの人気を誇っていた。しかし、スーパーマンに酷似した外見・設定のため、DCコミックから訴えられ、フォーセット社はコミック事業から撤退。のち、DC社がライセンスを取得し、キャプテン・マーベルはDC社へ”移籍”する形となった。しかし法廷闘争の間、マーベル・コミックが「キャプテン・マーベル」という同一名のヒーローを作ってしまったため、本家キャプテン・マーベルは商品としてキャプテン・マーベルを名乗ることができなくなってしまい、何ともわけのわからない存在となってしまった。この裁判は初のコミック著作権裁判として、コミック業界に大きな影響を与えている。
1930年代末に誕生したアメコミは今なお世界中で愛され、映画 『ダークナイト』『キック・アス』のように、新たな切り口で創り続けられている。日本のマンガに与えた影響も多大だ。アメコミヒーローは、時を超え、場所を変え、異なる作家によって紡がれてきた神話だといえる。『THE DC COMICS ENCYCLOPEDIA』のページを繰ればいつだって、マイナーヒーローも、グラマラスなヒロインも、クセのある敵役も、その活躍が目に浮かんでくるのである。
(文=平野遼)
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