ゾンビアイドル小明がハリウッド女優サラ・ウェイン・キャリーズさんを急襲!?
#DVD #インタビュー #小明
昨年末、「小明さん『ウォーキング・デッド』って知ってますか?」と編集さんに聞かれ、最近ハマッて読みふけっていた漫画だったので、つい鼻息荒く「当たり前じゃないですか! ドラマ化もされて、今すごい人気なんですよ! ストーリーはゾンビの王道なんですけど、切り口が新しいっていうか……。生き残った人間の小さなコミュニティ内での人間関係とか、登場人物の繊細な心情描写がすごくいいんです。ただ、主人公の嫁のローリっていうヒロインがちょっと共感できないタイプの人で……。すごく情緒が不安定で、泣いたり怒鳴ったりおっかないんですよ。作画の人が変わったせいで途中からすごいむかつく顔になったし……。ヒロインがああいうキャラクターっていうのはちょっとなぁ(笑)」と上から目線で一方的に語りまくっていたら、編集さんは言いづらそうに「そのヒロインのローリ役をやったサラ・ウェイン・キャリーズを取材しないかって話なんですけど……。DVDが出るんで……」。
えっ、どうしよう。得意ジャンルになると急に早口でペラペラしゃべり出すのはオタクの悪い癖とはいえ、そういう電話が来た時点で仕事の話の可能性が高いんだから悪口なんて言わなきゃいいのに、私はなんであんな上から目線で好き勝手言ったの……? それが広報の耳に入ったら普通に断られるかもしれないのに、頭が悪すぎて自分で自分の言動が理解不能。こうしてバカはどんどん墓穴を掘っていくんだ……と自己嫌悪に陥りながらも、”海外スターにインタビュー”という、私の芸能生活きっての華やかな仕事を失うまいと、とりつくろうように「ドラマ版は最高の監督に最高のキャストでオリジナルの話もたくさん入っていてめちゃめちゃ評判がいいですよね! 知ってます? 『ショーシャンクの空に』とか『グリーンマイル』のフランク・ダラボン監督が撮ってるんですよ? それもあってかゾンビのクオリティも半端ないらしいんですよ、いやぁ見たいなぁ、サラさんも美しいんだろうなぁ、DVD楽しみだなぁ」と早口でまくしたて、なんとかインタビュー権を得たのだけれど、何故か「ゾンビの格好で」という条件つきでした。
えっ……? 頭の中に思い浮かべていた『王様のブランチ』(TBS系)のLiLiCoのように華やかにスターにインタビューをする自分の姿がすぐに泥色のゾンビに変更です。「あの、ゾンビじゃなきゃいけないんでしょうか?」とおずおずと尋ねると、「この仕事においてゾンビじゃないお前に一体何の価値があるというのか」というような、わりと冷酷なことをストレートに言われたので、全部聞き終わる前に「やります」と即答して電話を切りました。
インタビューに向けて、まずはDVDを鑑賞。発売前に見られるのは本当に役得! ドラマ版『ウォーキング・デッド』は原作に忠実なところは忠実で、オリジナルのストーリーは原作の世界観のまま、物語をより味わい深くしている文句なしの面白さ! ゾンビの数やクオリティの高さは想像以上だし、ローリも漫画と設定は同じなのに全然腹が立たず、むしろ応援したいキャラクターになっているのはきっとサラさんの演技力のなせる技ですねー(お世辞じゃないよ)!
取材当日、まずゾンビのメイクをしてリッツ・カールトンという一生縁のなさそうな高級ホテルに向かいました。「ゾンビでやれ」と言ったくせに離れて歩こうとする編集には殺意を抱かずにはいられませんでしたが、『ウォーキング・デッド』の広報の方々はたいそう盛り上がってくださって、「サラさん本当に怖がりだから、大丈夫かなぁ(笑)」とか「隠れてから『ウオー!』って出て行ってサラさん脅かしましょうよ!」とか、「『オーマイガー』って言いますかね~?」とか、”もしかして私がスターなんじゃない?”と錯覚するほどのチヤホヤぶりで、乗せるだけ乗せていただいたわけですけれども、そこは私もけっこう冷静ですから、すべった時が恐すぎて「いや、いいです……普通で……はい」とノリの悪いゾンビになりました。
そしてついにサラさんが登場。にこやかにスタッフの女性と話すサラさんはあまりに足が長く、顔が小さく、初めて外国人を見た田舎の子どものように「あ、あががががが……!」と挙動不審になるも、どうせこちらの見た目はゾンビですし、これ以上気持ち悪くなることもないだろう、とハートを持ち直すことができ、さっとサラさんの前に進み出て「ハーイ、ナイスツーミーチュー!」と精いっぱいの笑顔でごあいさつ! そしてゾンビに「ハーイ」とあいさつを返してくれるサラさん! はい! ノーリアクション! まさかの! ほら、よかったじゃん、隠れたりとかしてウオーって脅かしてたら絶対微妙な空気になって大ケガしてたよ。あのチヤホヤはきっとスター相手にふざけた格好でやってきた女に対する罠だったんだと思います。業界は怖いです……。
小明 初めまして! 『ウォーキング・デッド』は日本にもたくさんのファンがいて、サラさんの来日は大変うれしいです!
サラ 私もすごく楽しんでます。ウフフ。
小明 『ウォーキング・デッド』にはリアルなゾンビがたくさん出てきますが、撮影中は怖くなかったですか?
サラ そうですね。今回『ウォーキング・デッド』の特殊メイクを担当したのはグレイク・ニコレッドさんという、ジョージ・A・ロメロ監督のゾンビのメイクも手がけていた、ゾンビ界のゴッドファーザー的な存在の方なので、リアルなゾンビを作るテクニックは素晴らしいの。側にいてとても怖かったです。
小明 私は映画やゲームなどでゾンビを見た後、必ず夢でゾンビに襲われるんですが、サラさんもそんな夢は見ませんでした?
サラ それは間違いなく! どの作品でもやっている最中は夢に出てくるんですけど、今回は心地よく眠れないくらい出ましたね。そういう場合は、脚本家にすぐ「こんなアイデアどう?」って電話します。まだ採用されてないんですけど(笑)。中でも一番ひどかったのは、川で泳いでいて、ふっと見たら、ゾンビが下からぶわーっと浮き出てきて……。これは立ち直るのに数週間かかりました……。
小明 アハハ! では、夢だけじゃなく、実際に目覚めて街中にゾンビが溢れていたらどうします?
サラ リックと同じようにまず家族を探し、必死に守ります。もし、家族がいない状態だったら、自ら「一抜けた!」という形を取るかもしれませんね。
小明 Oh……。サラさんが演じるローリは登場人物の中で、最も女性的な弱さと母親としての強さを兼ね備えたキャラクターだと思うのですが、ご自分と似ているところはありますか?
サラ 自分自身、ローリの要素も持っていれば、リック、シェイン、エイミー、ダミー……それぞれの面もあります。どんな人間も温かさと残酷さを持ち合わせていて、その時にいる環境や決断によって左右されると思うわ。極限状態に追い込まれたら、なおのことね。
小明 『ウォーキング・デッド』でも、亡くなった母親がゾンビになって家に帰ってきてしまうシーンがありましたが、ゾンビには生前の習慣を繰り返してしまうという説がありますね。もし、サラさんがゾンビになった場合、どんな行動を取ると思いますか?
サラ 私の場合は、チョコレートをありったけ食べてしまったり、ハイキングに出かけたり……。たぶん、人間として脳みそが回ってない時にやることをしてしまうでしょうね。シャワーを浴びたり歯を磨いたり……そういうことをするかもしれません。でも、そんなゾンビばかりだったら全然違う番組になってしまう(笑)。
小明 あはは! ちなみに、『ウォーキング・デッド』のご家族の評判はいかがでしたか?
サラ 母は「次はコメディにしてね」って(苦笑)。でも、友達、家族、全員が心から楽しんでくれているのが伝わってくるので、自分自身がハッピーな気持ちになれました。さらにみんながすごく辛口の批評をするんです(笑)。特に、私の母は大学でシェイクスピアを教えているくらいなので、ドラマに対してはすごく基準が高いんですけれど、そんな人でも見入ってしまうドラマだから、素晴らしいと思うわ。
小明 アメリカはゾンビに襲われても大丈夫な家があったり、日本よりもゾンビ対策がすすんでいてうらやましいです。サラさんは、どんなゾンビ対策をされてますか?
サラ (笑)。アメリカでもゾンビ文化が爆発しているんです。アメリカのCDCという疾病管理予防センターを知ってますか? 実は6話のシチュエーションはそこがモデルなんですが、そのCDCの方が興味を持ってくれて、ゾンビの感染対策を伝えるウェブページを作ったんです。そこには「ゾンビが襲撃してきたらどうするか」「何を持って行くべきか」「噛まれたらどうすべきか」ということが綿密に書かれていて、ウェブのカウント数が今までの感染病対策を遙かに超えて1位なったんですって(笑)。だから、ゾンビに襲われた場合は、とりあえずそのHPに行けばいいかな。
小明 いいですね。日本は「ただちに問題はない」でいっきにゾンビが広がりそう……。
――(そろそろお時間ですので、最後の質問を……)
小明 あっはい。ええと、あの、あー……私のゾンビってどうですか?
サラ アハ! 素晴らしい、という意味で、最悪ね(笑)。
小明 あ、ありがとうございました!
えっ、なんで最後の質問を私用に使ってるの? という現場の空気もなんのその、無事”最悪”という最高の称号に大満足です。帰り道にニヤニヤしながら撮った2ショットを見せていただいたら……やだ、何? この等身バランスの違い。サラさんの腰が私の胸にあるんだけど……。
売れなかったにしろアイドルという看板を背負ってる手前、ゾンビの姿だからまだなんとかなっている(?)ものの、素面だったらそれこそ死にたくなっていたと思います……ゾンビでよかった! それに『ウォーキング・デッド』のローリの隣でグネグネしている自分はいつもよりも輝いているように見え、なんとなく、私の人生は死んでからが本番な気がしてきました。今はその本番の予行練習中と考えれば、妙にゾンビ仕事が多いことも納得できますし、これは選ばれた人間にのみ与えられた試練なのかも……。
そうとわかれば先に手を打っておかねば、と母親に電話し、「ちょっとゾンビになりたいから死んだら土葬にしてほしいんだけど」と告げると、母親は声色一つ変えず「気持ちわるっ」とつぶやいた後に電話を切り、それから一度も実家に帰っていません。CDC、ゾンビをめぐっての親子関係悪化の対策もしてくれないでしょうか……。
(文=小明)
●『ウォーキング・デッド』
■DVDリリース情報 発売・販売元:角川書店
シーズン1DVD 絶賛レンタル中、2月24日DVD&Blu-ray BOX発売!
http://www.kadokawa-d.jp/lineup/walkingdead/index.html
(c)2010 American Movie Classic Company, LLC. All Rights Reserved.
■放送スケジュール FOX bs238にて放送
シーズン2: FOX bs238にて2月24日(金)放送開始 毎週(金)21:00-22:00ほか
★公式サイト:<http://foxbs238.tv>
■コミック情報 発売:飛鳥新社
原作コミック発売中、2012年2月下旬 第2巻刊行予定
2月24日発売。
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