ジュニアアイドル・ワールドへようこそ!『実写版 マイコうそみたい!』
#梶野竜太郎 #アイドル映画評
アイドル映画をこよなく愛する「アイドル映画専門」映画監督が、カントク視点でオススメのアイドル映画を、アノ手コノ手で解説します。
●今回のお題
『実写版 マイコうそみたい!』
監督:Yosshi.com
女性主演:小林万桜、愛川萌、朝倉みかん、倉田みな、日美野梓、片岡さき
日本は世界に誇るロリコン王国である。ロリコンといっても、犯罪的なほうではなく、ジュニアアイドルの女の子たちがグラビアなどで活躍することを世間がちゃんと認めている王国なのである。
バトミントン部に所属する中学3年
生のマイコは夏の合宿へ来ていた。
昼はライバルと競い合い、夜は肝
だめし大会に怪談話と盛り上がる。
しかしそんな中、マイコに驚愕の
事実が襲い掛かる…。
(Amazonより引用)
DVD発売中/3,990円(税込)
確かにコンビニに行けば、中高生のアイドルが水着で表紙を飾るマンガ誌や、情報誌が普通に置いてある。今人気の大物若手女優の方々もジュニアアイドル時代はグラビアをガンガンやってますし、モー娘。も、SPEEDも、デビューは小学生。子どものころから芸能界を目指す女の子たちにとっては、日本は最高のエンタメ王国なのである。
お菓子系(ブルセラ専門)雑誌や、女子中学生専門グラビア誌が定着し、市場も一息ついた2000年代。ジュニアアイドルたちを使ったオリジナル・ビデオ・シネマもたくさん発売された。その中で、U-15サポーターからすると夢のような共演……いや、言いすぎた。何でもミックスしちゃえ~~~的なキャスティングで、ちょっと話題になった(私の周りではね)作品が今回の『実写版 マイコうそみたい!』である。
物語はというと、アキバ中学3年生の真地マイコは、クラスの人気者。だけど、ちょっぴりドジな女の子。バドミントン部に所属するマイコの目標は、インターハイへの出場だ。そんなバドミントン部の夏合宿が始まった。ライバルの妙子をはじめ、美佳や、和美や、ハルと腕の競い合いに張り切るマイコ。夜は、テニス部の伝統の肝だめし大会。2人1組になって、キャーキャー叫びながら怖がる部員たち。怪談話大会には、なぜか旅館の番頭の太郎も参加する。彼が語る「本当にあった恐い話」とは? そして、マイコに襲いかかる驚愕の事実とは!? 「も~、マイコうそみた~い!!」
もー、ものすごい作品でした。全体のセリフの70%はアドリブ……いや、アドリブとはいわないな、キャーキャー遊んでるだけだもんな。要は30%しか台本がないと思っていい。4人の女の子たちは本気で戯れ、本気で叫び、本気で笑い、本気で楽しむ。
セリフとフリートークの境界線もしっかりわかる。肝だめしや、怪談のシーンの驚きはマジ。ちょっと引いちゃうナレーションが結構入り、ツッコミだけをする。でも、物語は存在し、ちゃんと進んでいく。
つなぎは粗いし、大きく遅刻してきた女の子に遅刻理由も聞かず、普通に溶け込んでたり(マジの遅刻っぽいな、たぶん)「うそみた~~~~い!」はこっちのセリフじゃ~~~~い!……って叫びたくなる作品なのに、最後まで見てしまう大きなポイントがある。それは、制服パンチラ? スク水? ブルマ? それもあるが、台本のセリフ以外のシーン、すべてにおいて、カメラ目線がひとつもないことなのだ!
例えば、制服から水着への展開(脱衣のこと。業界用語です)シーンを4人一挙にしてくれるシーンも、一切カメラ目線なし。女の子たちはペチャクチャ喋りながら、徐々に脱いでいく。ひとりは大胆に、ひとりは隠しながら、ひとりは喋りに夢中~といった具合に。
それを誰一人としてカメラを見ない。そこだけはプロ! カメラを見ないってことは、こっちの存在感がない。つまり! ヘルスの女の子選びマジックミラールームの様!! それのジュニアアイドル版!(例えがあぶねーな)
例えば、風呂場での掃除のシーンは、みんなスク水(スクール水着のこと)なんですが、狭い温泉でスク水でキャッキャする画って素晴らしすぎるじゃないですか。お互いで泡を塗り合ったり、お尻をブラシでこすったり、男の存在がなく、ガールズトーク、いや、ガールズ・ボディランゲージが繰り広げられていく……それはまるで、ペットショップの子イヌをガラス越しに好き勝手に見ているのと一緒!! スク水パラダイス!!
カメラを意識しないから、ヘタな芝居も、”安っぽさ”ではなく、”かわいいお遊戯”に、変わる。ここの境界線は大きい。そして、一番効果的なシーンが、物語の中でうれしいくらい数多くあるパンチラ……いや、そんなレベルじゃないな、パンモロシーンの数々だ。カメラマンが、ちょっとしたチャンスがあると、すぐ下からあおったアングルになる。スカートの中のパンツがチラリ~ではなく、スカートの中に入りたいんじゃーい!! どりゃ!! って感じ。そんなムチャパン撮影にも、女の子たちはカメラを意識しない。お見事! この作品で、女の子のことを褒めると思ってなかったよ。
そんなポイントが楽しい作品なんだけど、1つだけ『シックス・センス』を彷彿させる(言いすぎか?)物語が仕込んである。ありきたりといえば、ありきたりなんだけど、ありきたりじゃないお遊戯作品なだけに、ほほーって終われるところも面白ポイントとしてお勧めしたい。
まー最後に文句で〆るとしたら……「DVDのパッケージがカッコよすぎだろー! 騙されるじゃーん! うそみた~~~い!」
(文=梶野竜太郎)
●かじの・りゅうたろう
映画監督&脚本、タレントプロデューサー。1964年東京生まれ。
短編『ロボ子のやり方』で、東京国際ファンタスティック映画祭の部門グランプリを受賞。
08年に長編『ピョコタン・プロファイル』でメジャーデビュー。
アイドルを女優として扱う映像が特徴的でファンを多く掴む。
11年に『魚介類 山岡マイコ』、13年に『こたつと、みかんと、ニャー。』を発表。
アイドル映画では収まらない独特なファンタジーワールドを展開。新作も目白押し。
木嶋のりこ等が所属するプロダクションを持っている。
(ブログ)http://ameblo.jp/ryutarokajino/
うっそ~ん!
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