今クール話題の学園モノを徹底分析!『男子高校生の日常』『Another』
#アニメ #週刊アニメ時評
アニメの定番ジャンルといえば「学園モノ」。
やはり義務教育制度が行き届いている現代日本において、学生生活を描く「学園モノ」はもっとも視聴者に受け入れられやすいジャンルなのだろう。今クールも、学生生活というこれ以上ない共有体験をベースにした、さまざまな「学園モノ」アニメがテレビをにぎわせている。
中でも大きな話題を呼んでいるのが、『男子高校生の日常』(テレビ東京系)である。男子校を舞台に繰り広げられる日常アニメ……というと、いかにも女性ファン向けのボーイズ・ラブ的な作品という先入観を持つ読者も少なからずいるだろうが、本作の監督を務めるのは、『銀魂’』も手掛け、そのパンキッシュな作風がしばしばアニメファンの間に物議を醸しだす高松信司だ。
その鋭い切れ味は本作でも一切鈍ることはない。
放送開始直前にもともとEDテーマを担当する予定だったビジュアルバンド・人格ラジヲのメンバーの不祥事によって、急きょ楽曲が差し替えられるというトラブルに見舞われた本作だが、第1話のEDテーマには、代わりに本編のセリフをそのまま歌詞にした、ある意味適当だがセンスを感じさせる楽曲を用意。さらにその後、字幕スーパーで「放送に間に合いませんでした!」と一連の事件を堂々とネタにしてアニメファンの度肝を抜いた。
本編に関しても、体は大人で頭脳は子ども、という思春期の(非モテ)男子ならではのどうしようもない日常をあっけらかんと描いており、その作風は女性よりもむしろ男性のほうが共感を持って受け入れられるはずだ。
一見、平穏な学園生活。そのすぐ隣に潜む暗部を描くサスペンスホラー『Another』(TOKYO MXほか)も注目だ。
本作を手がけるのは水島努監督。
『おおきく振りかぶって』『侵略!?イカ娘』など、朗らかな作品で高い支持を受けている水島監督だが、彼の本領が発揮されるのはやはりスプラッタ描写を盛り込んだ作品だろう。
古くは『撲殺天使ドクロちゃん』、近作では『よんでますよアザゼルさん』『BLOOD-C』など、血と肉が乱れ飛ぶスプラッタ描写をギャグやアクションなどさまざまな作風で料理してきた彼が今回挑むのは、サスペンス&ホラーである。
物語の語り口は、どこまでもクール。淡々と描かれる平穏な学園生活は、ただクラスメイトと主人公・榊原恒一の日常風景を静かに描き出すばかりだ。
だが、そこに切れ目を入れるように登場する隻眼の少女・見崎鳴の存在と、時折見せる友人たちの「何かに怯える」不自然な言動がドラマに言いようのない緊張感と不安感をもたらす。そしてその緊張感と不安感が限界に達した時、唐突に不条理でグロテスクな死の描写が投げ込まれるのだ。
初の犠牲者となったクラス委員長・桜木ゆかりの死に様はこうだ。
階段から足を滑らせ転がり落ちる最中に、自分が持っていた傘の先端を喉に突き立て、悶絶死。
その描写も、実にエグい。
じわじわと広がる血だまりと、もがくように宙をさまよう手。そして痙攣する四肢が執拗に描かれるも、次第に身体は動きを失っていき、再び静寂が画面に戻ってくるのだ。抑え目な演出と、限界まで張りつめた緊張感を一気に解放するかのようなスプラッタ描写。そこから再びいつもの「日常」へと収斂していく演出は圧巻である。ここに水島監督の、「やっと描けたぜ!」という無言の喜びを感じてしまうのは気のせいだろうか。
ハイテンションな作風が多かった水島作品に新風を吹き込むような、静と動の対比の果てに描かれるスプラッタシーンは一見の価値がある。
一口に「学園モノ」といっても、これだけ差がある辺りに日本のアニメ文化の懐の深さを感じずにはいられない。今回紹介した作品を見て、かつて自分たちが体験した日常的な学生時代と、もしかしたら体験していたかもしれない非日常的な学生生活に思いをはせてみてはいかがだろうか。
(文=龍崎珠樹)
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