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「取次や再販制度はどうなる……!?」TPP参加は日本出版界壊滅への序曲か

 少し前まで経済ネタとして盛んにマスコミで報じられていたTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)。シンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランド、アメリカ、オーストラリア、マレーシア、ベトナム、ペルーの9カ国が参加している経済協定で、当初は農業関係と誤解されていたが、後にすべての品目が対象になることが広く知られるようになり、国内経済に多大な影響を及ぼすとして激しい賛否両論を巻き起こした。特に反対派は、さらなる規制緩和とグローバル化によって、国民生活が深刻な状況になると猛反発している。

 そうした意見が飛び交う中、一部で取り沙汰されているのがTPP参加による出版に対する影響である。複数の出版関係者は、「TPPで日本の出版界が、まったくの手つかずということは考えられないのではないか」と話す。

「日本の出版業界は、再販制度にしろ取次にしろ、流通の点だけとっても特殊な形態になっています。これに対して、アメリカが規制緩和や市場解放を求めてくることは十分に考えられます」(中堅出版社の編集者)

 日本の出版社は再販制度や取次業者による流通などによって、ある部分では保護されている。だが、それらも日本がTPP参加ということになれば、劇的に変化する可能性が否定できないわけだ。

 かつて、1990年代後半に始まった規制緩和によって、各地の商店街などの商業関係は大打撃を受け、ほかにも雇用や労働環境も劣悪な状況になってしまった。そうした経験を我々は知っているからこそ、さらに大きな規制緩和であるTPPが現実のものとなれば、かつての悲劇がまた繰り返されるのではないのか危惧する声が出てきてもおかしくはない。

 また、気になる情報もある。外資系の某大手ネット書店では、出版社に対してある契約を提示しているという。

「電子書籍についての契約なんですが、販売に関してはネット書店側が版元の決めた価格に対して一定のマージンを版元に支払うとしている。ところが、販売価格はネット書店側が決めるというのです」(前出・編集者)

 ここには2つの要素が読み取れる。まず、販売側が自由に価格を設定できることは再販制度の事実上の無効化である。さらに、販売価格にかかわらずマージンを払うということは、場合によってはネット書店側が赤字になる可能性もある。赤字覚悟ということは、それなりの意図があるということ、例えばシェアの獲得ということが考えられる。

 このように、わずかな一端ではあるが変革の兆しは少しずつ現れてきている。

 ところが、出版関係者の中には、この話題に興味を示す向きはむしろ少ない。TPPに関しても、「出版には関係ない」などと無関心というケースも多い。しかし、その根拠を尋ねても明確な答えはほとんど返ってこない。

 少し前、インターネットが出版に対して脅威になるのではという問いに、「やっぱり情報は紙でしょう。ネットは出版に勝てない」などと根拠もなく豪語していた出版関係者は少なくなかった。だが、今やインターネットの普及と充実に、出版は危機に立たされている。

 TPPが長らく続いてきた出版業界の慣習について息の根を止めるのか、それともたいした影響もないのか、それはまだわからない。だが、日本の出版が大きな曲がり角に来ていることは事実だ。その変革のきっかけが、TPPなのか、それとも何か別の要因になるのか。いずれにせよ、現在の不況を見る限りではさらに厳しい状況が来ることは避けられないだろう。
(文=橋本玉泉)

TPP亡国論

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最終更新:2013/09/09 17:18
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