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イーストウッドが”規制社会”に投げ掛けるメッセージ『J・エドガー』

edgar01.jpg(C) 2011 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

 今週は、歴史上の重要な転換期に光を当て、そこから反射した光が現代の問題をも照らし出す、重厚なドラマ映画の新作2本を紹介しよう。

 1月28日に封切られる『J・エドガー』は、米連邦捜査局(FBI)を創設し初代長官を務めたジョン・エドガー・フーバーの半生を描いた作品。1920年代、FBIの前身組織で捜査の近代化に貢献し、若くして長官に就任したエドガー(レオナルド・ディカプリオ)は、30年代にFBIへ改称されて以降も長官として君臨。国民の身元情報の管理、指紋照合の活用、科学捜査の導入でFBIを巨大組織へと発展させ、さらには大統領までも対象とした盗聴などで膨大な機密ファイルを作成、影響力を強めていった。一方でその私生活は謎に包まれていたが、年老いたエドガーは部下に口述筆記を命じ、過去の記憶を静かに語り始める……。

 監督のクリント・イーストウッドと主演のディカプリオは意外にも初タッグ。エドガーを支えた秘書役のナオミ・ワッツと補佐官役のアーミー・ハマーも、見応えたっぷりのアンサンブルを通じて、栄光あるFBI初代長官の”影”の部分を徐々に明かしてゆく。コンプレックス、虚栄心、生涯独身だった理由など、一人の人間としてのエドガー像に迫ると同時に、国家権力が個人情報を握って濫用することの恐ろしさも示唆する。折しもアメリカではインターネットを規制する法案が大問題になっている今、イーストウッド監督が本作に込めた現代の観客へのメッセージを真摯に受け止めたい。

 同じく1月28日公開の『劇場版テンペスト3D』(3D上映のみ)は、19世紀の琉球王国を舞台に、ある女性の波乱万丈の物語を描いた作品。女性が官吏になれなかった時代、真鶴(仲間由紀恵)は家の再興という父の願いをかなえるため、孫寧温(そんねいおん)と名乗って宦官(かんがん)を装い、男性として王宮に仕える試験に合格。外交や財政改革で活躍し、若くして異例の出世を果たす。薩摩藩士の浅倉(谷原章介)との出会いに淡い感情を抱くのも束の間、やがて王宮内の権力争いと、清国から派遣され乗っ取りを企む宦官の徐丁垓(じょていがい/GACKT)の策略に巻き込まれて窮地に陥る。

 池上永一の同名ベストセラー小説を原作にテレビドラマ化、NHK-BSでオンエアされた全10回分の映像を、2時間半に編集しポストプロダクションで3D化した。主演の仲間由紀恵の凛々しい男役と美麗な女役とを存分に堪能できる、ファン必見の構成だ。共演陣も谷原とGACKTのほか、塚本高史、高岡早紀、小林幸子、かたせ梨乃、八千草薫、奥田瑛二らと豪華。後処理の3Dは不自然さが目立つ部分もあるが、沖縄ロケでの美しい景観を大画面で立体的に楽しめるのはうれしい。日本でも清国でもない琉球を象徴したヒロインを通じて、今も基地問題に揺れる沖縄県の歴史、特に本土や列強との関係を知る上で参考になる作品だ。
(文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉)

『J・エドガー』作品情報
<http://eiga.com/movie/57231/>

『劇場版テンペスト3D』作品情報
<http://eiga.com/movie/57078/>

FBIフーバー長官の呪い

怖ろしか~。

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最終更新:2013/09/09 17:57
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