【お笑い評論家・ラリー遠田】2011お笑い界 総まとめ!「賞レース編」
#お笑い #キングオブコント #THE MANZAI
2011年を振り返ると、お笑いの世界にも大小さまざまな出来事があった。「お笑い賞レース部門」と「テレビバラエティ部門」の2つに分けて、2011年のお笑い界を振り返っていきたい。
まずは、2011年のお笑い賞レース戦線についてまとめてみよう。この1年に行われた主なお笑い賞レースの結果をまとめると以下の通りになる。
【1月】
『ABCお笑い新人グランプリ』最優秀新人賞:ウーマンラッシュアワー
【2月】
『R-1ぐらんぷり』優勝:佐久間一行
【3月】
『NHK上方漫才コンテスト』優勝:スーパーマラドーナ
【4月】
『上方漫才大賞』大賞:ブラックマヨネーズ
【7月】
『お笑いハーベスト大賞』優勝:ニッチェ
『オンバト+』チャンピオン大会 優勝:トップリード
【8月】
『MBS新世代漫才アワード』優勝:スーパーマラドーナ
【9月】
『キングオブコント』優勝:ロバート
【10月】
『NHK新人演芸大賞』大賞:ニッチェ(演芸部門)、桂まん我(落語部門)
【12月】
『THE MANZAI』優勝:パンクブーブー
こうして並べてみると、新人賞レースの中で頭ひとつ抜きん出た実績を残しているのが、『NHK上方漫才コンテスト』『MBS新世代漫才アワード』を制したスーパーマラドーナと、『お笑いハーベスト大賞』『NHK新人演芸大賞(演芸部門)』で優勝を果たしたニッチェの2組。スーパーマラドーナは、関西を拠点に活動する若手漫才師。線が細く気弱な性格の田中一彦と、元・暴走族で気性が荒い武智正剛。対照的なキャラクターを備えた2人が、精密でテンポの良い漫才を演じて人気を博している。ニッチェは主にコントを得意とする女性コンビ。小柄でぽっちゃり体型の江上敬子と近藤くみこが、持ち前の演技力を武器にして多彩なコントを演じる。江上は「クリアアサヒ」のCMで上戸彩と共演を果たすなど、快進撃を続けている。賞レース二冠という実績を引っさげて、2012年の活躍にも期待がかかる。
ピン芸人の祭典『R-1ぐらんぷり』を制したのは、素朴で底抜けに明るい芸風が売りの佐久間一行。彼が決勝で披露した3本のネタは、いずれも独創性に満ちたオンリーワンの逸品。売れっ子がなかなか出てこない「泥の97年組」の一員だった彼が、芸歴13年でようやくビッグタイトルを手にした。ただ、今年の『R-1』で実質的に勝ち組となったのは、準優勝のAMEMIYAだろう。「冷やし中華はじめました」の歌ネタで一躍有名になった彼は、音楽芸人としてギター片手に多数の番組に出演した。
コント日本一を決める『キングオブコント』では、オーソドックスで演劇的なネタに対抗して、型破りなネタを演じる芸人の台頭が目立った。ひたすら音楽ネタを貫く2700は、勢いに乗って準優勝を果たした。若手コント芸人のラブレターズは、ヒップホップ調の校歌を熱唱するネタで見る者の度肝を抜いた。そんな大混戦を制したのは、絶対的なボケの破壊力を備えた秋山竜次率いる3人組のロバート。2700の猛追をかわしたデッドヒートは見ごたえ十分だった。
年末には新たな漫才の祭典として『THE MANZAI』が開催。大会発起人である島田紳助の引退によって一時は開催も危ぶまれていたが、最終的にはナインティナインを総合司会、ビートたけしを最高顧問とする盤石の布陣で無事に開催される運びとなった。
決勝の舞台は、芸歴も芸風もキャラクターもそれぞれ異なる16組の漫才師が、16種類のハイクオリティな漫才を披露する刺激的な空間となった。優勝を果たしたのは、M-1チャンピオンで唯一の出場者となったパンクブーブー。M-1で優勝したときを思わせる一分の隙もない完璧な漫才を演じて、見事に栄冠を手にした。
『THE MANZAI』には、『M-1グランプリ』とは全く異なるコンセプトが感じられた。『M-1』は、勝者と敗者を点数で明確に序列化したり、格闘技中継さながらの派手な演出をすることで、漫才師とそれを見る者に緊張を強いる。だが、『THE MANZAI』はそれをしない。16組の漫才師が提供する16通りの笑いをそれぞれに評価しようとする。そして、すべての演出は視聴者の緊張を解きほぐし、純粋に漫才を楽しんでもらうために存在している。『THE MANZAI』の舞台には、みじめな敗者は1組もいなかった。それぞれが自分の持ち味を出し切って、輝きを放っていた。それは、3.11以降、「緊張」よりも「安らぎ」を求める人々のニーズにも合致している。『THE MANZAI』は、現代の新しいお笑い賞レース番組のひとつのあり方を示したと言えるだろう。
(文=お笑い評論家・ラリー遠田)
来年も笑いたい。
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