気鋭の旅行記作家がバカバカしい例え話で科学の本質を語る『感じる科学』
#本
素粒子って、朝○新聞夕刊のつまんないコラムのこと? しばしば目にはするけど、どういう意味かはよくわからない物理科学の世界。学会の先端では是非を巡って様々な議論がなされているが、実際のところ、研究者にもよくわかっていないのだという。
それならド文系の私にわかるわけないじゃないか、と理科学アレルギーの貴兄にこの一冊。『感じる科学』(サンクチュアリ出版)は、旅行記作家で、「相対性理論を世界一面白く解説する男」を自称するさくら剛氏が、難解な科学理論をわかりやすく、かつバカバカしく解説した本だ。業界有数の物理マニアであるさくら氏が、相対性理論から万有引力、量子論、進化論、ダークマターにビッグバンといった宇宙論まで、聞いたことはあるけどイマイチわからなかった不思議な科学の概要を、「プルルンと潤う上戸彩ちゃんのアヒル口から跳ね返った光子が私たちの目に入り……」といったような身近な例え話で面白おかしく説明してくれる。科学自体の面白さもさることながら、著者の軽妙な語り口が楽しい本だ。
例えば、「光は常に他のものより秒速30万キロメートル速く動いている。にもかかわらず光自体のスピードは常に変わらず秒速30万キロメートルのまま。宇宙では光速度を変えないように時間と空間が変形している」相対性理論の光速度不変の原則や、「物質を構成する最小の単位の粒である素粒子は、観測者が見ようとすると動きを止めてひと固まりの粒になってしまい、決して見ることが出来ない」「素粒子は何度も繰り返し観測を行うとまれに壁を越えた隣の部屋で見つかることもある」量子テレポーテーションのように、もう全然意味不明の、まさしく「なんだそりゃ~!」な世界。物理の授業がつまらなかったのは物理の教科書がつまらなかっただけで、「真面目さ」「難しさ」が物理を学ぶ妨げになっていたのではないか、とさくら氏は語っている。
この他にも「1500万円で死体を冷凍保存してくれるアメリカの財団」の話や、「タイムマシンや物質転移装置の開発は理論上可能。って全然理論上可能になってない」話など、興味深い話は尽きない。この『感じる科学』は、知的好奇心と笑いの欲求を同時に満たしてくれる良書だ。女子高生やアイドル、キャバクラなどのバカバカしい例え話に吹き出しながら科学を勉強しよう。
(文=平野遼)
●さくら・つよし
1976年静岡県生まれの作家。”相対性理論”を 世界一面白く解説する男を自称している。処女作の『インドなんか二度と行くかボケ!! …でもまた行きたいかも』(アルファポリス)がベストセラーに。以降、『三国志男』(サンクチュアリ出版)『南米でオーパーツ探してる場合かよ!!』(メディアファクトリー)など多数の著作がある。
インターネットラジオ【さくら通信】http://sakuratsushin.com/
感じたい。
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事