次世代の中島みゆき!? ”声だけで泣ける路上の「シンデレラ」”奥華子
#音楽
みなさんは、奥華子をご存知だろうか? 2004年頃から東京・渋谷や千葉県・柏、津田沼などを拠点にしたストリートライブで頭角を現し、06年にはアニメ映画『時をかける少女』(監督/細田守)の主題歌を手がけて一躍ブレーク。全国区の知名度を得たキーボード弾き語りの女性アーティストだ。
今年3月、シンガーソングライターの奥華子は全国ツアーの最中に震災に遭遇したという。その後、「奥華子にできること」を自ら企画し、「スマイルライブ」と題して全国各所で支援金を募るフリーライブを開催。6月にはコンセプトアルバム『君の笑顔-smile selection-』を発表し、その後も日本に笑顔を取り戻したいと、精力的なライブ活動を続けている。
そして来年1月11日、満を持しての新曲である「シンデレラ」が発表される。今回のシングルで彼女は、aiko、JUJU、いきものがかりなどでスマッシュヒットを飛ばしている島田昌典氏をアレンジャーとして迎えている。これまでは単独での弾き語りスタイルで、どちらかというと静かでバラード的な要素が強い作品が多かったが、「シンデレラ」の前向きなメロディラインと島田昌典のポップなアレンジは間違いなく彼女の新境地と呼べるものだろう。
奥華子は、特異なアーティストである。彼女のテーマにあるのは、いつだって”不幸な女性”。恋に破れ、望んだものに手が届かず、それを必死に求める様……それはともすれば「自己中心的」とも「ストーカー一歩手前」とも取られかねない、苛烈で切実な思いである。表現される物語はすこぶる重く、身勝手だ。男性側から見れば、「気持ち悪い」「ウザい」「もう関わりたくない」と思えるほどリアルな心象風景。軽やかなその歌声とは裏腹に、その肌触りは、中島みゆきの面影さえ感じさせる。
そんな奥の楽曲を評して、「まるで素足でアスファルトに立っているような感触」と評する声がある。失恋や届かぬ思いをストレートに表現するその歌詞は刺すような痛みを感じさせ、体感温度は低い。ところが、その場に立ち続けているとそのダイレクトな痛みがまろやかな心地よさに変わり、そのまま一歩、二歩と踏み出したくなってくるような感覚。あくまで個人的なその世界観は、日常の中でひととき非日常を感じさせ、すべてを洗い流してくれるような清冽さに満ちてくる。
好きすぎて 苦しくなって 信じたいのに疑って
「別れよう」って言ったのは
「別れたくない」って言葉が聞きたかっただけなのに
今回リリースされる「シンデレラ」もまた、不意に別れを迎えた恋人同士の物語である。”声だけで泣ける”と言われた切ない世界観はそのままに、より前向きな楽曲に仕上がっている。
ちなみに過去の話になってしまうが、奥華子にとってトレードマークの赤いメガネについて、彼女はかつて日刊サイゾーのインタビューにこう答えている。
「路上ライブの時に、メガネをかけたら覚えてもらいやすいかも? と思って、はじめて赤いメガネをかけて歌ったら、それまではCDが30枚くらい売れていたのですが、その日にいきなり100枚売れたんです。偶然かもしれないんですが、それ以来ゲン担ぎで、ずっとかけています(笑)」
この楽曲を期にその赤いメガネを外し、黒ぶちメガネにかけ替えた奥華子。それでも、「シンデレラ」の魔法は、まだ解けない。
LIVE音源を含む、全6曲収録。
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