故デニス・ホッパーの愛息が好演! 優しくて切ない『永遠の僕たち』
#映画
娯楽大作の話題が先行しがちな正月映画シーズンだが、派手さこそないものの心に染みる珠玉作、深く考えさせられる秀作も見逃せない。1年を振り返り新しい年を迎えるこの時期にふさわしい、静かな感動をもたらす青春ドラマと、さまざまな気づきを与えてくれるドキュメンタリーの2本を紹介しよう。
現在公開中の『永遠の僕たち』は、死にとらわれた若い男女の愛と再生を描く、ピュアでユニークで少し奇妙なラブストーリー。交通事故で両親を亡くした少年イーノックは、事故で臨死体験をして以来、自分だけに見える旧日本軍特攻隊員の幽霊・ヒロシと会話や戦艦ゲームに興じて過ごしている。見知らぬ故人の葬式に親戚のふりをして列席していたある日、子どものガン患者のためにボランティアをしているという少女アナベルと出会う。共に過ごすうち少しずつ心を開いていくイーノックだったが、アナベルにはある秘密があった……。
監督は『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(1997)『エレファント』(2003)「『ミルク』(08)のガス・ヴァン・サント。若者の疎外感と葛藤、生と死のはざまで揺れる心情を、親密な雰囲気の美しい映像で表現した。イーノック役を演じた故デニス・ホッパーの息子ヘンリー・ホッパーと、ベリーショートの髪がよく似合うアナベル役ミア・ワシコウスカ(『アリス・イン・ワンダーランド』、2010)のピュアな佇まいに、特攻兵姿のヒロシ役・加瀬亮が違和感なく共存。詩のように優しく切ない映像世界と愛おしい登場人物たちに、いつまでも浸っていたくなる。
もう1本の『第4の革命 エネルギー・デモクラシー』は、再生可能なエネルギーがテーマのドキュメンタリー(東京で公開中、2012年1月以降全国で順次公開)。ドイツで2つの主要な再生エネルギー法を制定させ、風力発電と太陽光発電の急速な普及に貢献したヘルマン・シェーア氏をナビゲーターに、各国の環境活動家、ノーベル賞受賞者、政治家、起業家らが、再生可能エネルギーへの移行を30年以内に実現できることをそれぞれ分析し、紹介する。
2010年にドイツで最も見られたドキュメンタリー映画。3.11後にはテレビ放映され200万人が視聴したことでエネルギーシフトの世論が高まり、原発事故の”当事者”である日本より先にドイツ政府が脱原発を決定することになった。太陽光・風力・水力・地熱といった各種の自然エネルギー源の可能性が語られるだけでなく、エネルギーの地産地消による地域活性化の成功例などビジネスのヒントも盛り込まれている。日本で今後エネルギーをめぐる建設的な議論が活発化するためにも、参考になり得る作品といえそうだ。
(文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉)
『永遠の僕たち』作品情報
<http://eiga.com/movie/55280/>
『第4の革命 エネルギー・デモクラシー』作品情報
<http://eiga.com/movie/57414/>
いい映画です。
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