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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 大槻ケンヂさんの至言「ネガティブを売りにすると自家中毒に陥るんです」(中編)
【第30回】小明の「大人よ、教えて!」"逆"人生相談

大槻ケンヂさんの至言「ネガティブを売りにすると自家中毒に陥るんです」(中編)

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前編はこちらから

大槻 嫌かぁ~。でも、まだ若くてきれいな娘さんがぼやいてるところに、あんまり伸びしろはないと思うよ。中森明菜とかもそうだったけど、ぼやいてるうちはいいの。けど、「ちょっと受けるかなー?」と思って自殺未遂とかすると、世間は一気に引いちゃうの。そういうのはダメですよぅ。

──受け狙いで、自殺未遂はしづらいですよ……。

大槻 う~ん、そうだよな~。でもね、結局、小明ちゃんの性格は僕も似たところがあるからよく分かるんですけど、最初に不幸を前提とするんだよね。それによって、自分がいざ不幸な目にあったときのために、心にセーフティをかけてるんだよね。

──あっ、そうです! 痛いのが嫌だから、転ぶ前にまず先に受身を取ってるんですよ!

大槻 それは、ある程度効果はあるんですよ。でも、本当に困った状況でそれをやってると、どうにもならなくなるんですよ。

──どういうことですか?

大槻 結局、ポジティブシンキングで生きていかないと、人間は不幸を乗り越えられないんですよ。僕もまったくそうだったんだけど、サブカルの子にショートストーリーの四コマ漫画を描かせると分かるんです。みんなでわーいってピクニックやドライブに行きました。そしたらバーン! 事故で死にましたって漫画を描くの。

──それしか浮かばないですよ。

大槻 でしょ? それは、深層心理が出ていて、あらかじめ不幸を想定することによって、起こるべき不幸を防御してるんだけど、それで防げることは限られてるの。本当に、もう生きるか死ぬかみたいな、それこそ東北の震災みたいのが来たら、絶対乗り越えられない。そういう人から折れていくの。やっぱり、ネガティブなものを自分のセールスポイントにすると、自家中毒に陥ってミイラ取りがミイラになるんですよ。そういうのを僕は26、7歳のノイローゼ時代に痛感してやめたんです、そういうの。だから、小明ちゃんは、まず不幸を前提としないで、いつも幸せが前にあると思って生きていく!

――お、おお……難しそうだけど、やってみます! ちなみに、なんでノイローゼになったんですか?

大槻 ネガティブシンキング。物事をネガティブに考えることから発生する、オタクサブカル者特有の思考が悪い方向に向いちゃったから……それを逆転したの。いいことないよ! そもそも、小明ちゃんはいつからそういう性格になったの? さかのぼってみようよ。

──さかのぼると、幼い頃に、顔も頭も運動神経もいい姉と比べられ続けて、まず「どうせ自分は……」っていう卑屈な性格になって、そんなだから友達もできなくて、それで……。

大槻 (さえぎって)分かりました。アメリカの映画でよく、「幼い頃の家族のトラウマで……」ってパターンがあるんですよ、つまり、あなたはアメリカ人だね。

――いえ、栃木生まれです。

大槻 いいから聞いて! そんな何十年も前の家族のことなんて、別にどうでもいいじゃん! 僕はね、実の兄の結婚式にも呼ばれなかった男だよ!

──えっ!?

大槻 あのね、お正月に実家に帰ったら知らない女の人が家にいて、ケンヂなんかより全然打ち解けてたんですよ。で、「誰だろ? 親戚の方かな?」と思いながら様子を見ていたら、これはどうも兄の嫁らしい、と。「あれ? お嫁さん?」って聞いたら、母親に「そうだよ。言わなかったかい?」って言われて、「言わなかったんだよ」って親父が言って、「あ、そうだった。あんた来ると面倒くさいから式に呼ばなかったんだわ」って(笑)。俺も、ショックより「面白い! いつかこれは絶対ネタに使おう」って。そんなもん! 家族なんてそんなもん! それくらいでちょうどいいのだから、トラウマはもう関係ないよ!

──家族って意外と冷たいんですね……。うちの姉もデキ婚するとき、私にだけ教えてくれなかったです……。

大槻 そうだよ、お姉ちゃんにとって妹なんてそんなもんなんだから、妹もお姉ちゃんなんてそんなもんだって思えばいいんだよ。そっからやり直そうよ。

──そうですよね、いろんなところでネタにして回収しよう!

大槻 それもね~。たぶんね、小明ちゃんと親しくなると「書かれるんじゃないか?」っていう恐怖がみんなあると思うのね。

──実際、変な暴露とかじゃなければ、面白いと思ったら書いちゃうかも……。

大槻 俺もそう。もう、いろんな人に嫌われて、書かなくなったよ……。筋少が復活するときに、復活に至るまでのお話を書こうと思ったんだけど、メンバーにね、「君はそういうふうに好き勝手に書くけど、書かれた方の気持ちを分かっていない」って言われて、それ以来、ブログにもメンバーの名前とかほとんど出さないし、書いたとしても「メンバー」としか書かない。親兄弟もそう。結局分かったことは、書かれて喜ばれるのは、まだ売れてない芸人さんだけ。それ以外はどんな人でも、「お前、こんなこと書いて、いい死に方しないよ」って言うよ。小明ちゃんも『アイドル墜落日記』(洋泉社)とか、怒られるよ、絶対。

──確かに、前の事務所の人には送ってないです……。

大槻 でしょ? ただ思ったのは、紙ではわりと書いても大丈夫。なぜかというと、読んでないんだよ紙は、誰も! 悲しい! でも、ネットは読むんだよね。だから死に物狂いで紙に書いた原稿より、何もなしにツイートしたものが、何千倍もみんな読むんだよね、本当不条理だよ!

──それで1円も入ってこないで、下手したら変に拡散されて名声だけが落ちていくという。

大槻 そうなんだよ! うう~、俺ずっと「ぴあ」で連載してたんだけど、休刊になって連載がウェブに移行したの。そしたらそれまで何の反応もなかったのに、ウェブに移行した途端に「見ました!」「見ました!」って。だから、なんか怖いよサイゾーのウェブも。「大槻ケンヂ●●を罵倒!」とか、変な見出しとかつけないでよ。

──大丈夫ですよ! っていうか、まだ全然ネガティブじゃないですか!

大槻 とにかく、小明ちゃんは今が転換期ですよ。僕もそのくらいだったし、鬱になりやすい時期ではあるんですよ。

──最近、夜になると鬱々とした気分が悪化するので、寝酒とか飲んじゃうんです。今までお酒なんて飲まなかったのに。で、深夜ラジオ聴きながら寝落ち。あはは。

大槻 俺も聴いてるよぅ、TBSラジオの『JUNK』楽しいんだよねぇ、この間の伊集院さんのさぁ……じゃなくて! 結局、鬱っていうのは、集中力のある人がなるんですよ。その集中力が自分の暗い部分に集中しちゃうと鬱になる。だから、その集中力を拡散させるんですよ。

――私、よく本とか漫画とか読んで気を拡散させてますよ! この間も根本敬先生の『果因果因果因』(平凡社)と月山きららさんの『おひとりさまの幸せな死に方』(長崎出版)を読んで……。

大槻 ……あのね、なんか方向性として、人から「なんだそれは!?」って言われない、ポジティブな趣味を見つけるといいのよ。よくスポーツバカって言うでしょ? あれは最高に素晴らしくて、スポーツをやって、人からなんのかんの言われないでしょ? それが根本さんのマンガだったらどう? 言われるでしょ? そっちに行っちゃいけないの!
後編につづく/取材・文=小明)

●おおつき・けんぢ
1966年、東京都生まれ。ロックミュージシャン。87年に「筋肉少女帯」としてメジャーデビュー。一躍スターダムに上り詰め、「特撮」でも活動中。また、92年に処女小説『新興宗教オモイデ教』(角川書店)を発売。以降、文筆家としても多数の作品を著している。

●あかり
1985年栃木県生まれ。2002年史上初のエプロンアイドルとしてデビューするも、そのまま迷走を続け、フリーのアイドルライターとして細々と食いつないでいる。初著『アイドル墜落日記』(洋泉社)、DVD『小明の感じる仏像』(エースデュース)発売中。
ブログ「小明の秘話」<http://yaplog.jp/benijake148/
サイゾーテレビ<http://ch.nicovideo.jp/channel/ch3120>にて生トーク番組『小明の副作用』(隔週木曜)出演中

5年後の世界

6年ぶりの新作です。

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最終更新:2018/12/19 14:59
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