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マンガ"原作レイプ"映画【1】

映画化の旨みは一切ナシ! 年間20~30本大量生産されるマンガ原作映画の功罪

【プレミアサイゾーより】

──2011年も『GANTZ』というマンガ界の大作の映画化を皮切りに、『あしたのジョー』『パラダイス・キス』など、次々と人気のマンガ作品が実写映画化された。しかし、そのどれもが話題性に比例することなく、公開後には忘れられていく。”原作レイプ”と揶揄されるマンガ原作映画は、いつまで続くのか?

1112_moteki_gantz_n.jpg大根仁監督の作家性も色濃い『モテキ』。
大根はインタビューで、「原作は久保さ
んのものだが、映画は俺のもの」と話す。
一方、期待された『GANTZ』は、映画が
完全に負けていたが……。

『GANTZ』【1】『あしたのジョー』(高森朝雄原作)『モテキ』【2】──今年の公開作だけでも話題作が目白押しだったように、マンガ原作の映画化が止まらない。すでに2012年に公開が予定されている作品も、『宇宙兄弟』(小山宙哉原作)『荒川アンダー ザ ブリッジ』(中村光原作)『闇金ウシジマくん』【3】『ヒミズ』【4】『テルマエ・ロマエ』(ヤマザキマリ原作)といった人気作ばかり。ヒットメーカー候補として、マンガは邦画界の熱い視線を集め続けている。ただ、本誌でも再三指摘してきたように、マンガ界と映画界がWin-Winな関係を築いているかというと、そこには留保をつけざるを得ない。最近の日本映画では、広告代理店やテレビ局、出版社が相乗りして出資する「製作委員会システム」が横行。結果として、マス向けにストーリー改変、キャラクター変更が行われることも多い。そしてこれを、”原作レイプ”とバッシングするネットユーザーもいる。それもそのはず、複数のスポンサーのお眼鏡にかなう作品となれば、社会的な表現は緩和され、エンタメ色が重視されてしまう。これはドラマの話だが、『ハガネの女 season2』(テレビ朝日)では、原作とかけ離れすぎた脚本に原作者が不快感を表明。クレジット削除を要望するという話題もあった。

「製作側に”マンガ原作は映画化企画を通しやすい”という認識があるのは確かですね。原作の認知度が高ければ製作発表そのものが話題になるし、発行部数は観客動員の裏づけとなり、マーケティングもしやすい」

 そう語ってくれたのは、「映画秘宝」(洋泉社)編集長の松崎憲晃氏。松崎氏によると、企画立案から監督決定、キャスティングを経て製作発表に至るまでは最短でも1~2年。このため、ヒットの芽が見えたマンガには、いち早くオファーがかかるという。さらに、映画・マンガライターの奈良崎コロスケ氏も、マンガ原作の消費加速を嘆くひとりだ。

「大手映画会社のプロデューサーの机には『このマンガがすごい!』(宝島社)の1~20位に入ったコミックスがズラリ。部下に読ませて次の映画化ネタを探している、というエピソードを聞いたことがあります。実際、『このマンガ~』の11年版1位(オトコ編)に輝いた『進撃の巨人』(諫山創原作)も、映画化が発表されたばかりですしね」(奈良崎氏)

 しかし、マンガ原作が期待されるようになったのはいつからなのか。奈良崎氏によると、映画界がマンガ原作を乱獲し始めたのは90年代後半。ホラーマンガ、少女マンガというジャンル作品が突破口になったという。

「まず、『リング』に始まるJホラーブーム。小説の候補作はあっという間に払底し、映画界はマンガに触手を伸ばしました。『富江』などの伊藤潤二作品、『神の左手悪魔の右手』をはじめとした楳図かずお作品などが実写化され、映画会社は、最初から客の動員が見込めるマンガの原作が楽なことに気づいたんです。ゼロ年代に入ってからは、ベタな恋愛ものがヒットし、『NANA』(矢沢あい原作)をはじめとする少女マンガ原作が次々映画化されました。この2つの流れが合流してほかのマンガも続々映画化。『海猿』(佐藤秀峰原作)『DEATH NOTE』(大場つぐみ原作)などのヒット作を経て、年間20~30本のマンガ原作映画が作られる現在に至ります」(同)

 これらのヒットは、元気のなかった邦画界に喝を入れた。『青い春』(松本大洋原作)、『殺し屋1』(山本英夫原作)などの佳作が続出。マンガ原作のインディーズ系映画に活況をもたらした、と奈良崎氏。しかし、メジャー映画会社が乗り込むようになり、作家性の強いマンガに映像で新たな解釈を加えようという気概はどこへやら。後には、原作の青田買いというフローだけが残されている。

「確かに、”このマンガをどうしても実写化したい”という、監督なり、プロデューサーの熱い想いがほとばしっている作品は少なくなりました。製作委員会システムでは、それぞれの企業の意向を反映しなければならず、メッセージ性や情念はゼロに近いほど希釈されます。『映画秘宝』でも取り上げた問題ですが、『BECK』【5】の、美声を持つ主人公の歌をボーカルレスにするという演出は、”なんだったんだろう”感が拭い去れません。でも、例え映画が大惨事になっても、結果的にそのツケは製作委員会ではなく、名前の出ている現場の人々に回る。外から見ていると、メディアミックスの名の下、現場の立場が弱くなる一方に思えます。静かな小品が得意な監督を、いきなりSF大作に起用してみたりとか、本来の資質を生かしているのか微妙なスタッフ構成を見たりすると、ただただ切ない、の一言です」(松崎氏)

 そんな中、希望が持てる萌芽もある、と両氏は語る。

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最終更新:2011/11/29 10:30
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