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映画『地球防衛ガールズP9』公開記念インタビュー

硬直した映画興行に一石を投じる!? 河崎実監督が9人の美女を従えて帰還

kawasaki_d_01.jpg日本を明るくする男・河崎実監督。最新作『地球防衛ガールズP9』
では現代人は何と戦うべきかを明確に描いている。

 ”バカ映画”の巨匠・河崎実監督が帰ってきた! 不謹慎で、スチャラカで、でも特撮映画への限りなき愛情が詰まった超低予算映画の数々を放ってきた河崎監督。全国公開されたSF大作『ギララの逆襲/洞爺湖サミット危機一発』(08)をど~んと打ち上げた後はしばらく表舞台から遠ざかっていたが、いちばんの好物である”地球防衛軍”もので日本映画界に帰還を果たしたのだ。しかも、とっておきのサプライズを用意して。最新作のタイトルは『地球防衛ガールズP9』。P9とはパラノーマル9の略。尋常ならざる特殊能力を持つ9人の美女たちが地球平和のために奔走する、河崎監督版ガールズムービーとなっている。P9のメンバーには国民的アイドルグループAKB48の”隠れ実力派”片山陽加、SDN48のキャプテン・野呂佳代らを起用。そして本作のとっておきのセールスポイントは、クライマックスでP9のメンバー本人が登場するというもの。ブームの3Dを上回る仕掛けではないか。明るい話題の少ない日本映画界を元気にするため、スクリーンから飛び出すP9のメンバーたちの活躍を劇場で体感するべし!

──3年ぶりの新作劇場映画。河崎監督の明るいバカ映画を首を長くして待っていました。

p9_sc_01.jpg特殊な能力を持つ9人の女性隊員たちで結成された
パラノーマル9。予算削減なんかに負けるもんか。
(c)P9プロジェクト2011

河崎実監督(以下、河崎) 『ギララの逆襲』の後、『猫ラーメン大将』(08)もあったんで、正確には2年半ぶりなんだけどね。まぁ、『地球防衛ガールズP9』は1年前から企画準備を進めていたこともあって、ボクとしてはあっという間でした。河崎実がまた相変わらずバカ映画をやるということです。よろしくね。

──本作はキャストが飛び出すというドッキリ仕掛け。従来の映画とも舞台とも異なるユニークな試みですね。

河崎 フツーの監督は、こんなバカなことやらないよね(笑)。そこはね、この映画はフツーではないんでね。油断してると、本人がスクリーンから出てきちゃうから。AKB48も最初は売れてなかったんだけど、秋元康プロデューサーの”会いに行けるアイドル”という触れ込みが広まって人気に火が点いたわけでしょ。それを映画館でやっちゃおうという企画です。映画興行としては、ウィリアム・キャッスルが元ネタですよ。1950年代に活躍した映画プロデューサー兼監督なんだけど、彼はお客さんを楽しませるために作品ごとにいろんな興行アイデアを実践したんです。

──あぁ、ショッキングなシーンに合わせて、客席を振動させるなどのギミックを仕掛けた伝説の映画人ですね。

p9_sc_02.jpgテレパス能力を持つパラノーマル9のメンバー、
土浦真八(片山陽加)。「宇宙友朋会」の集会
で不審な声をキャッチする。

河崎 そうそう。ショッカーといってお化けの格好をしたスタッフが客席を驚かせて回ったり、失神者が出たときのために看護士を待機させたり、映画館を遊園地に変えてしまったB級映画の奇才です。『いかレスラー』(04)や『日本以外全部沈没』(06)のプロデューサーだった叶井俊太郎と「ウィリアム・キャッスルみたいなことやりたいね」と前々から話していたんです。でも、叶井の会社トルネード・フィルムが倒産しちゃったからね(苦笑)。ようやく今回、そのアイデアを実際にやることになったんです。今日の完成披露試写で初めて試したんだけど、客席が沸いてくれてホッとしました。公開中はP9のメンバーが連日日替わりで登場して、台詞もアドリブで変わります。まぁ茶番と言っちゃ茶番なんだけど、お客さんには喜んでもらえるんじゃないかな(笑)。

──地球防衛軍ものは、やはり河崎監督にとって腕の鳴るジャンルですね。

河崎 そうだね、地球防衛軍ものはボクの原点でもあるしね。もともと『ウルトラ』シリーズの大ファンであるボクは、アンヌ隊員を主人公にした『ウルトラセブン』(67)を作りたいという願望があったわけです。でも『ウルトラ』シリーズの本編を作るのはなかなか難しい。なら、女性隊員をメーンにした自分の作品を作っちゃおうと考えて始めたのが、ボクの商業デビュー作『地球防衛少女イコちゃん』(87)だったんです。それを21世紀型にヴァージョンアップさせたのが今回の『地球防衛ガールズP9』。時代に合わせてヒロインを集団に変え、AKB48やSDN48からメンバーを集めてチームを結成したわけですよ。

──P9のメンバーが着るコスチュームのこだわりを聞かせてください。

河崎 今回もかなり限られた予算だったんだけど、彼女たちのコスチュームは1着あたり10万円近くかかっているからね。女性隊員だけで9人いるから、コスチューム代だけですぐに100万円飛んじゃって大変(苦笑)。ピンクとブルーは『イコちゃん』のときのイメージカラーであり、今回も基本カラーにしています。布地はアンヌ隊員のウルトラ警備隊みたいに厚めの質感を出したかったんだけど、撮影が7月なことを配慮して薄くしました。ちょっとチープになってしまったかなぁと反省しています。でも本格怪獣も登場させたし、かなりの予算をつぎ込んだので、『P9-2』『P9-3』とシリーズ化して、『P9-10』までやりますよ!

p9_sc_03.jpg出てくるのはゆるキャラな小怪獣ばかり。「高山
怪獣と戦いたい」「できれば成田デザインでね」
というP9の期待に応える本格怪獣は現われるか?

──P9のメンバーでテレパス少女・土浦隊員役の片山陽加は、独特な雰囲気の持ち主。前半はあまり目立たないけど、後半からぐいぐいと不思議な魅力を放っていますね。

河崎 そうだね、あの娘は芝居がうまいんだよね。我ながら、いい感じで配役できたなと思っています。後半は超能力者同士の心理劇になるわけなんだけど、SF映画って『スター・ウォーズ』シリーズにしても『ねらわれた学園』(81)にしても最後は超能力者同士の観念的な演技合戦になっちゃう。でも、彼女は神秘的な雰囲気を出して、うまく演じてくれましたね。

──謎の女性を演じるのは『ウルトラマンA』(72)で南夕子隊員を演じた星光子。土浦隊員(片山陽加)との会話のやりとりは、三島由紀夫のSF小説『美しい星』を連想しました。

河崎 えぇ、三島由紀夫からインスパイアされたんです(笑)。実は『美しい星』を映画化できないかと動いていたこともあったんですが、なかなかそちらはうまく行かなくてね。あっ、これはあんまり触れないでよ(苦笑)。星光子さんは劇団四季出身だけあって、演技がかっちりしています。星さんとは『ウルトラマンA』以来の共演となる沖田駿一さん、『ウルトラセブン』のアマギ隊員役で知られる古谷敏さんにも重要な役を演じてもらっています。ただカメオ出演させるだけじゃつまんない。そこはね、歴代の『ウルトラ』シリーズに名前を連ねてきた方たちへのボクからの愛なんです。

p9_sc_04.jpgP9のメンバーを率いるクムタキ隊長(写真左)。
演じるのは、木村拓哉のそっくり芸人もっぷん。
お笑い芸人が続々登場。

──相変わらずスチャラカな内容なんだけど、今回はこれまでの河崎作品とはひと味違った深遠さも感じられますね。企画そのものは2010年から動いていたということですが、3.11後に撮影されたということが何かしら影響しているんでしょうか?

河崎 ひとつ映画の企画が決まって、その作品が公開にまで辿り着くということは、社会がその作品を待ち望んでいたという一面があるとボクは考えています。企画そのものは昨年から考えていたこともあって、事業仕分け問題などを取り入れたわけです。平和な時代に地球防衛軍の存在意義はどこに見出せばいいのかというね。3.11があって企画は一時中断したんだけど、内容そのものは変えていません。それは純粋にボクの映画を観て、みんなに笑ってほしいからですよ。「バカだなぁ、下らないなぁ」とね。ちょっと観念的な部分もあるけれど、P9のメンバーが歌う劇中曲「まだ見ぬ怪獣」で盛り上がってほしい。「夢に見るミサイル発射♪」なんて不謹慎な歌詞をアイドルに歌わせているんでね。それに『P9』は海外マーケットも意識しているんです。エスパー伊東をはじめ”宇宙芸人”たちが披露する宇宙ギャグは、外国人に大受けするはずですよ。ボクの映画はゆるギャグ、美少女、オヤジ俳優、それに怪獣の4本柱でできているんです。

kawasaki_d_02.jpg「”パラノーマル9″の9という数字は”気学”に
基づいたもの。人間は9つのタイプに分かれるん
です」と河崎監督はうんちく披露。

──なるほど、4枚のカードの組み合わせで河崎監督は現代社会を描いてしまうわけですね。

河崎 それ、いいなぁ。ぜひ、そこは強調してくださいよ(笑)。まずは、東京での公開を盛り上げますよ。映画興行って初日は満席になるんだけど、翌日からガタッと落ちて、平日はガラガラになってしまうんです。そこで今回は初日だけでなく、平日の上映も含めて連日、P9のメンバーたちが日替わりで登場するわけです。週7日のローテーションをどうメンバーに割り振るか、今考えています。東京での反響次第で、大阪以降の公開形式も変わってくると思うんで、お客さんは一緒に楽しんで、盛り上げてほしいですね。P9のメンバーがスクリーン脇でこそこそと待機している様子は、客席から見てもおかしいと思いますよ(笑)。

──河崎監督は、日刊サイゾーで『小明の副作用』が絶賛配信中のアイドルライター・小明ちゃんの新曲のPVも撮るとのこと。PVの撮影に4日間も掛けるとは気合いが入ってますね。

河崎 あぁ、それはね、実は予算がないんでお昼ご飯を食べてから撮影しましょうということなんです。毎日午後1時から撮って、夕方5時には撮影終了。実労4時間×4日間。そうすることでお弁当代がかからなくて済むわけです。キャストやスタッフのお弁当代って、けっこーバカにならないからね。『P9』も同じ方法で撮っていたんで、撮影日数は20日間も掛かりましたよ。それまでのボクの作品は10日間程度で撮っていたんだけどね、早朝集合で深夜まで撮影を続けて。まぁ、『P9』はお弁当代は節約しているわけだけど、撮影日数はじっくり掛けているから、ぜいたくな作品ですよ。最近のインディペンデント映画はこのパターンで作られているんです。メジャーとは違うんで、試行錯誤の繰り返し。でも、それがインディペンデント映画なんですよ。

 * * *

 大好きな映画を作り続けるために、従来の常識に囚われずさまざまなアイデアを注入する河崎監督。”生アイドルに会える映画”という発想自体は誰でも考えつくものだが、企画を実現させてしまったのは河崎監督しかいない。河崎作品には、世知辛い社会で生きていくための”夢のあるヒント”の数々が隠されているのだ。映画ファン以外の人も、ぜひ劇場に足を運んでみてほしい。
(取材・文=長野辰次)

『地球防衛ガールズP9』
プロデューサー&脚本&監督/河崎実 脚本協力/中野貴雄 音楽/黒澤直也 出演/片山陽加(AKB48)、野呂佳代(SDN48)、浅倉結希、小桃音まい、伊倉愛美、高城樹衣、山本麻貴、阿衣華、巴奎依、エスパー伊東、星野卓也、なべやかん、リカヤ・スプナー、レイパー佐藤、高円寺ジャックスパロウ、萩原佐代子、紫子、サン・ジュナ、もっぷん、沖田駿一、古谷敏、モト冬樹 配給/ファイヤークラッカー 11月26日(土)より渋谷シネクイントにて2週間限定レイトショー 12月10日(土)よりテアトル梅田ほか全国順次公開予定 <http://girls-p9.com>

●かわさき・みのる
1958年東京都生まれ。明治大学在学中より特撮怪獣映画『フウト』などの自主映画で注目を集める。オリジナルビデオ作品『地球防衛少女イコちゃん』(87)は話題を呼び、文部省選定ビデオ映画になるなどシリーズ化された。主な劇場公開作品に三枝実央、桜庭あつこがセクシー競演した『美乳大作戦メスパイ』(97)、叶井俊太郎と初タッグを組んだ『いかレスラー』(04)、中川翔子をヒロインに起用した『兜王ビートル』(05)、筒井康隆原作&出演作『日本以外全部沈没』(06)、フジテレビ系で続編が作られた『ヅラ刑事』(06)、夏木マリ主演による『髪がかり』(08)、水野晴郎先生の遺作となった『ギララの逆襲/洞爺湖サミット危機一発』(08)など。2010年より中野でバー「ルナベース」の経営を始め、今回の『地球防衛ガールズP9』の作戦司令室の撮影に使用されている。また、実相寺昭雄監督と長年にわたって交友関係にあり、実相寺監督が生前集めていたピンクちらしのコレクションを遺族から託されたことでも知られる。
<http://luna-base.net>

ギララの逆襲 洞爺湖サミット危機一発

こっちもよろしくね。

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最終更新:2013/09/10 14:37
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