火事場泥棒話はなぜ報じられない? 東日本大震災で露見したタブーだらけのマスメディア
#プレミアサイゾー #東日本大震災
──東日本大震災によって国内の各業界に少なからぬ影響が出ているのは周知の通りで、それはまた報道の世界においても例外ではなかった。半年がたった今、今回の震災で新たに生まれ、固定化されつつある報道における規制には、どんなものがあるのだろうか?
つめる家族らしき人物の写真をニューヨーク・タイ
ムズが一面掲載。日本と海外メディアではこうし
た災害でも報じ方が異なっている。
東日本大震災から半年余りが経過した。復興に向けた動きが草の根レベルから続いているが、この情勢下で新たな政権が組閣されるなど、日本全体が混迷している。また、同時に起こった福島第一原発事故もまったく収束の気配を見せず、社会にはうっすらと疲弊した空気が堆積したままだ。放射性物質の拡散や被ばく被害について、さまざまな情報が錯綜し、神経を尖らせて過ごす人も増えていることだろう。
神経を尖らせているのはまた、そうしたニュースを報じるマスコミも同様である。震災発生直後、国家レベルの非常事態に世間が浮き足立つ中で、何をどのように報じるか、各媒体の姿勢が問われた。特に、常日頃から大手マスコミを「マスゴミ」と呼んではばからないネット住民などは、それらの報道体制に対して、揚げ足取りレベルでも容赦ない批判を繰り返した。もちろん、災害発生直後となると規模が大きく体力のある報道機関しか現地取材に入ることは難しく、大手メディアが流す情報に頼らざるを得ない部分があったため、批判も生じたと考えられる。
当特集【2】の図【1】【3】のように、3月時点の報道において、テレビ局関係者による問題行動や発言がいくつかあったのは事実。『スッキリ!!』(日テレ)の大竹真レポーターや、首相会見中継におけるフジテレビスタッフなど、たとえ音声切り替えミスによる事故だったにせよ、非常時に報道に臨む者がそのような姿勢でいることは、批判されても仕方のないことだろう。
「中継中のああいった事故は珍しくないですが、大竹さんはタイミングが悪すぎた。中継が切れまくることへの皮肉だった、という話もありますが、被災直後の混乱した現場じゃ機材トラブルがあるのだって別に不思議はない。まぁ彼はレポーター系大手の圭三プロダクション所属ですし、あんなことがあっても、テレビ関係者の間ではクビになることはないと思ってる人が大半でしたけどね」(制作会社社員)
一方で、【2】のように、仕方なしに取った処置に対して、「不謹慎」という言葉を盾にした視聴者からの苦情も発生した。
「『非常事態をいいことに、ACが広告枠を買い占めている』と思った人もいたとかで、たいへんな誤解ですよ。通常のCMが入れられないから、差し替えでAC広告を入れてるのにね。『ポポポポーン』が耳障りだってところには同意しますけど(笑)、やり場のない苛立ちやストレスをぶつけた人が大半だったんじゃないでしょうか。一般企業のCMが再開したら再開したで、『まだそれどころじゃないだろう』と苦情が入るっていうんだから、じゃあどうすればいいんだよ!? って話ですよ」(キー局営業社員)
こうした報道をめぐる事件の中で最も大きなものは、東海テレビの「セシウムさん」騒動【4】だろう。午前の情報番組で、視聴者プレゼントの当選者名が表示されるべきところに「怪しいお米 セシウムさん」などと書かれたテロップが流れ、世間は騒然。表示する内容が決まるまで、仮で入れていた文字が誤って流れたものとされたが、制作時にスタッフ間でふざけてそうした文言を書いていたのだとしたら、よりタチが悪い。
■破られた東電タブーそれでもテレビは……
原発事故をめぐる報道については、当初、マスコミにおける「東電タブー」によって、きちんと報じられないのでは? と、そうした事情を関知する人の間でささやかれた。
東京電力が毎年マスコミ各社に支払う広告宣伝費は300億円近くになるとされ、また、電力会社各社が加盟している電気事業連合会が支払う宣伝費も合計すると、1000億円に上るとする意見もある。マスコミ業界に厳然と存在する「スポンサータブー」から、原発事故には踏み込めないのではないかと危惧されたわけだ。しかし事故の規模は無視できるレベルになく、雑誌メディアを中心に、さまざまな独自取材記事が世に出ることとなった。
このように、従来は週刊誌等の雑誌においても、広告出稿の都合からタブー視されていたものの重しが外れたのは、今回の震災で大きく変わった点だろう。それでも、テレビのように幅広い層を対象にした媒体では、報じ方が難しいことには変わりがなかったという。
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