朝夕2回の出動で勤労の尊さをあらためて確認! ももいろクローバーZ「労働賛歌」キャンペーンの一日
#アイドル #ももいろクローバーZ
11月12日の横浜BLITZから全国ライブハウスツアー『ももいろクローバーZ 魂のシュプレヒコールツアー』を開始したももクロZ。14日は朝から大忙しだった。
まず、メンバーが全国5大都市の主要駅に散らばり、新曲「労働賛歌」(キングレコード)の発売告知を記した「ももクロ オリジナルティッシュ」配りを行った。札幌駅に玉井詩織、東京・新橋駅に百田夏菜子、名古屋駅に高城れに、大阪駅に佐々木彩夏、博多駅に有安杏果。東京だけターミナル駅でないのは、もちろん新橋駅前のSL広場に、「労働賛歌」に歌い上げられるべきビジネスマンたちが闊歩しているからである。
ティッシュ配りの開始時刻である朝7時30分はラッシュアワーよりも少し早く、改札口から吐き出される背広着用の大人たちの数も控えめ。ファンでもない会社勤めの見知らぬ人々に言葉をかけながらティッシュを渡す、という行為は、ただでさえ百田にとって少しハードルが高いのに、少ない人数が相手ではより緊張が増すというもの。
「えー、どうしよう……」
なかなか最初の一歩が踏み出せず、ひと声がかけられない。
それでもファンらしき人に気づいてもらい、わずかに言葉を交わした後「お仕事頑張ってください!」と送り出し、スタッフに「それをみんなに!」とコーチングされると元気が出てきたのか、道行く人々にティッシュを差し出す勢いが力強いものになった。
そのころになると、改札口からはどどっと溢れるように、絶え間なく新橋の勤め人が姿を現すようになる。次々にティッシュを渡さなければならないため、戸惑っている余裕はない。集中するうちに手際がよくなり、歩く速度を緩めず通り過ぎながらもらおうとする人にも手渡せるようになった。すっかり調子が出てきた百田は、予定の時間よりも早く800個のティッシュを配り終えた。さらにはスタッフに勧められ「無理無理」と言いつつ、「新橋のみなさんご一緒に! ももいろクローバ~~~ゼェエーット!」と、いつものZポーズで締める。最後にはTwitterで拡散された情報を頼りにファンが現場へと辿り着き、百田を囲んでいた。
「みなさん、お勤め大丈夫なんですか?」(百田)
「あー、もういいや今日は(笑)」(ももクロファン)
その瞬間はアウエーでなくホームの雰囲気に切り替わっていた。
「ティッシュを配るお仕事は何気なく見ていたけど、やってみると大変でした。どうなることかと思っていたけど、なんとか全部配り終えました。(省エネエコスーツ姿については)スタッフの方には新橋の人たちと同じ格好だから大丈夫と言われていたんですが、半袖半ズボンは浮いてましたね(笑)」(百田)
23日発売の6thシングル「労働賛歌」については、「ぜひたくさんの働く人、そうではなくとも何かに向かって頑張っている人に、ストレートにエールを送りたい」と語った。
「労働賛歌」はタイトル通り、労働者を応援するサポートソングであり、いつもの楽曲よりダンスのスピードを抑え、じっくりと歌詞を聴き取れる方向性のもの。サウンドアレンジがソウルファンキーなブラックテイスト寄りで、ラップ調(作詞は大槻ケンヂ)なのはちょっと意外かもしれないが、ネクタイを頭に巻いたスーツ姿と相まってサマになっている。
夕方17時からは、東京都大田区の株式会社マテリアル工場内で、キャンペーンイベントとして「労働賛歌」のライブが行われた。同社の従業員、地元民を招いての歌とダンス。工業地帯であり住宅街、というアイドルのイメージとはかけ離れた場所でのパフォーマンスは、ももクロらしさが漂っている。
従業員のひとりに話を聞いた。相当重要な部品を扱っているようで業務内容について多くを語ることはできないが「日本でしか、ここでしか削っていない部品がある」と言う。それではここが水没したら、タイの洪水後にHDDが値上がりしたように供給が止まる製品があるのかと聞くと、その通りだと答えられた。
湾岸の倉庫で芸術だ音楽だといっていたバブルの時代とはわけが違う。いま、アイドルが工場でライブをすることについては、「いいですよね。この場違いな感じが、それ故に面白い」と実感を込めて話してくれた。何か普通とは違うぞ、ということは十分に伝わっているように見えた。
全国各地に散らばっていた百田以外のメンバーが急ぎ帰京、集合してのイベント。歌い終えたももクロメンバーは半袖半ズボンスーツと、株式会社マテリアルの作業服を着てフォトセッションに応じた。
囲み取材では、メンバー5人が工場でライブを行った感想と、ティッシュ配りへの感想を述べていく。
名古屋でティッシュ配りをした高城は「路上時代にビラ配りをしたときに、全然もらってもらえないという苦い経験をしているので、すごく不安でした。でも、みなさんすごく優しくて、ティッシュを受け取ってくれて。頑張ってと言ってくれて、すごくうれしかった」と語る。勤労経験の乏しさからくる不安とは別種の、アイドルとしての不安もある。対人ストレスがのしかかるキャンペーンを、5人はそれぞれに乗り越えたようだった。
最後に『NHK紅白歌合戦』への決意を求められると、百田が5人を代表して答えた。
「大晦日に紅白歌合戦に出るという結成当時の目標は、今も変わっていません。それに向かって頑張ってるんですけど、そこに関しては本当に分からないので……。今日、ティッシュ配りをさせていただきましたが、自分たちを知らない人の方が多く、まだまだだなと感じました。でも、私たちは目の前のことしか見られないんですよ。いま目の前にあるのは、紅白よりも、さいたまスーパーアリーナのライブなので、そっちを大成功させるように頑張って、(紅白は)それから考えたいなと思います(苦笑)。一個一個、壁を乗り越えていきたいです」
以前よりも大きな目標に近づいたからこそ、その目標をより現実的に捉えようとしていることがよく分かる。結末にある大きな大会の優勝を語る前に、一試合、ひとつの大会ごとに集中しようというアスリートの心理にも似たものがあるのかもしれない。
「労働賛歌」の発売を挟んだツアーの後、年内に予定されている大きなイベントは12月25日の「ももいろクリスマス2011 さいたまスーパーアリーナ大会」だけだ。
以前より、ファンの数も報道するメディアの数も飛躍的に増えた。大きく躍進した一年の総仕上げ。労働の厳しさと喜びをあらためて噛み締め、年末へ向けての最終調整が始まった。
(取材・文・写真=後藤勝)
今日も働こう!
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