AVの焼き直しがこんなピュアな作品に!?『平成百合族 ある愛の詩』
#梶野竜太郎 #アイドル映画評
アイドル映画をこよなく愛する「アイドル映画専門」映画監督が、カントク視点でオススメのアイドル映画を、アノ手コノ手で解説します。
●今回のお題
『平成百合族 ある愛の詩』
監督:大寺俊吾
女性主演:今野由愛、椎名りく
今回はあえて、映画という文化を「娯楽」と言い切り、「それは真の”作品”ではないだろう」というカテゴリーに入りそうな作品をレビューしてみようと思う。『平成百合族 ある愛の詩』タイトル通り、百合系の物語であります。
互いに孤独の由愛とりく。りくは
由愛に寄り添おうとするが、由愛
は昔りくに因縁を付け性的虐待を
行ったことを気にしており……。
(Amazonより引用)
DVD発売中/2,940円(税込)
先日、『魚介類 山岡マイコ』のインタビュー(※記事参照)の最中にアイドル論になったとき、「最近の女の子はアイドルのグラビアを見る子が多いですよね」って話をしたら、ライターの女性が「女の子は基本、バイなんですよ」って……そりゃそーだ。頭では分かっていたけど、露骨に言葉で言われてなるほどって思った。
女の子同士で、手をつなぎ合う子、抱きつく子、イチャイチャする子。普通にどこでもいる。男の場合は、”そっち”の方々じゃない限り、そんな奴はいない。
まー女の子の場合、それがキレイだからいいんだけどね。そんな作品で最近面白かったのが、この『平成百合族 ある愛の詩』です。
物語は以下のようなもの。
登校拒否の由愛は、教師と援助交際をしていた。由愛がひさしぶりに学校へ行くと、そこには病気で登校拒否のりくがいた。
最初は由愛によるイジメに遭っていたりくだが、ふたりは徐々に惹かれ合っていく。ふたりは愛を育んでいくが、実は、りくが大きな病に侵されていることを由愛は知る……。
短い物語説明ですが、それで十分~ってくらい、分かりやすいエロ&涙の物語。学生が3人しか出てこない学園もの。
で、なんで冒頭で「こりゃ映画じゃないよ!」なんて言ったかといいますと、実はこの作品、『放課後レズビアン 思春期のビラビラ』というAVの、U15発売可能焼き直し作品なのである。
思春期のビラビラ!! ものすごいタイトルだなー、ビラビラ! 自分のタイトルにも使おうかな『魚介類 山岡ビラビラ』……意味分からん。
AVって私の中では”見たいとこだけ映像”という認識があり、ロマンポルノが777のパチンコ台だとしたら、AVは玉が入るまでの工程を端折ったパチスロかなと。
そんな”見たいとこだけ映像”から、U15発売可能焼き直しってことは……ほとんど中身なくね? とか思ったし、だいたい焼き直すってことは、AVによくある手法で、ひとつ撮ったんでタイトル変えてちょい編集してもう1回売っちゃおうぜ~ウッシッシみたいな感じなので、まーそこまで悪意はないにしても、作品魂よりも、商売魂重視なタイトルであることには変わりないわけです。
そのような作品なのに、あえて、どうして、アイドル映画評で、取り上げたのか。あえて取り上げる魅力があったのか?
あった。あったんです。ずばり、女の子たちの眼です。ピュアなんですよ! なぜか! この作品は添い寝をしているシーンが多いのですが、その時のふたりの眼の優しさに撃たれました。病気が原因で友達ができなかったりくと、りくにイジメ行為をしたことで心を開いた由愛、このふたりの添い寝しているときの優しい眼は、レズシーンにもかかわらず、変にふたりを見守ってあげたくなる感覚に変化していきます。
基本はAVのカメラワークなのですが、ふたりの会話の最中のちょっと素人臭いかわいらしさと、添い寝中も教室内のふたりのシーンも、本当に温かく「最後は死んじゃうのかな……」という先入観もあいまって、1分でも長くふたりを一緒にいさせてあげたいと思ってしまいます。
どうしてそのような空気がこの映像の中から生まれたのか。エロ先行なのに、この温かさは……? この作品、気持ちよく見るには、絶対の条件があります。
【1】『放課後レズビアン 思春期のビラビラ』を見たことない人。
【2】あくまでも、ヌくこと前提ではなく、物語として見れる人。
この2つの要点から生まれた効果は、
【1】モザイクが入るような股間中心な映像をCUTしたことにより、エロさがモロではなく、ピュアに変わった。
【2】AV女優なので、褒められるような芝居ではない演技が、本番でごまかしてないため、ピュアな芝居に変わった。
この思いもよらない科学変化! 「メインデイッシュのハンバーグがなくなったらOUTなはずなのに、添え物のポテトがおいしかった!」とか、「レッドカードでワントップのフォワードが居なくなったから生まれた、残り10人の予想以上の力!!」とか!! そんな予想不可のピュアレズ女の子同性愛作品『平成百合族 ある愛の詩』、この手の棚ぼた作品は、作りたくても作れないんじゃないでしょうかね~。
(文=梶野竜太郎)
●かじの・りゅうたろう
映画監督&脚本、タレントプロデューサー。1964年東京生まれ。
短編『ロボ子のやり方』で、東京国際ファンタスティック映画祭の部門グランプリを受賞。
08年に長編『ピョコタン・プロファイル』でメジャーデビュー。
アイドルを女優として扱う映像が特徴的でファンを多く掴む。
11年に『魚介類 山岡マイコ』、13年に『こたつと、みかんと、ニャー。』を発表。
アイドル映画では収まらない独特なファンタジーワールドを展開。新作も目白押し。
木嶋のりこ等が所属するプロダクションを持っている。
(ブログ)http://ameblo.jp/ryutarokajino/
美しい……。
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