「若い局員ほど海外に……」リビア死亡事故 徹底されなかったテレビ朝日の危機管理
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テレビ朝日のカイロ支局長がリビアで交通事故死した。
37歳という若さで亡くなったのは野村能久さんは、早大ラグビー部での活躍を経て1997年にテレ朝入社。警視庁記者クラブの担当記者や、同局の情報番組『スーパーモーニング』のディレクターなどを経て、今年6月からカイロに赴任し支局長を務めていた。
事故は20日、リビアの元最高指導者カダフィ大佐の死を受けて野村さんが、同じくテレ朝のカメラマン、現地ドライバーら4人で現地取材に向かったところ、シルトより東190キロほどの地点で何らかの事故があったとされる。テレ朝関係者によると、「気が付いたときには病院のベッドにいた」と話すカメラマンから他の3人が死亡したことが伝えられたという。現場は戦闘地域ではなかったが、事故の詳細はまだ詳しく分かってはいない。
驚いたのは危険な内戦状態にある国に若い記者が突入していたことだ。野村さんは海外取材は経験豊富だったというが、海外赴任はこれが初で、赴任後わずか4カ月足らずの悲劇だったことになる。また、同行カメラマンはなんと入社2年目の23歳だという。この点についてテレ朝関係者に話を聞くと「海外赴任は若い局員に人気がある」のだという。
「大半は自ら志望して海外赴任する形なんですが、その理由はいろいろ手当てがついて高待遇で、また出世の近道になることです。入社1~2年で現地の言葉も話せないのに海外赴任している若い局員もいます」
今回の事故がそうした背景で起きたことかは分からないが、過去に海外赴任経験を持つ同局のテレビディレクターによると「仕事熱心な若い人は、こういう大事件のときに気持ちが先走りして慎重さを欠きやすい面がある」という。
「テレ朝では1991年、長崎・雲仙普賢岳の火砕流で取材中の記者が事故死したことがありました。その後は定期的に勉強会を開くとか”危険を冒すな”という姿勢はあったんですが、でも現場で”危ないから行くな”という指示が出るほど徹底されたことでもなく、雲仙の事故も20年前の話。危機意識が薄くなっていたといわれたら返す言葉はないでしょう」(同ディレクター)
リビアは外務省から全土に退避勧告が出ていた。中東に詳しい記者からは「こういう混乱中は安全を確保するために車の通行ひとつ地元有力者への根回しが必要なこともある」という声も聞かれる。
記者会見で武隈喜一報道局長は「社員の命を一番に守らなければいけない。大変申し訳ない」と頭を下げたが、まずは事故の詳細と原因の究明が求められる。
(文=鈴木雅久)
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