“原子力ムラ”お抱えの元経産相が密かに民主党エネルギーPT座長に就任していた!?
#政治 #民主党 #原発
「(原発の重要性を訴える研究報告書について)これだけ変数の多い中をよくここまでまとめられた。敬意を表したいと思います」(民主党衆議員・大畠章宏元経産大臣)
「(原発の圧力容器は)40年で設計をしているわけですが、細心のメンテナンスをしていけば60年は問題ない。では60年で寿命になってしまうかというと、そんなこともない」(武藤栄・当時の電気事業連合会原子力部部長、2010年6月~11年6月東京電力副社長)
03年に行われた社団法人エネルギー・情報工学研究会議(EIT、後述参照)の座談会にそろって出席した両氏は、「原子力が2100年の発電の中で圧倒的な位置を持ちます」と結論づけるEITの研究報告書「地球再生計画のモデル解析」に「敬意を表し」ながら、意気投合していた。
10月4日、小沢一郎元民主党代表の初公判を2日後に控えメディアが盛り上がる裏で、この大畠氏が民主党の「エネルギー政策のあり方を検討するプロジェクトチーム」(民主党エネルギーPT)座長に就任するという人事が発表された。このPTの目的は、民主党の政策を決定し直接政府へそれを提言する政策調査会(政調)における、エネルギー政策の「議論のベースをつくる」(全国紙記者)ことだという。
ほとんど世間の話題に上らなかったこの人事が、「自民党への政権交代の引き金となりかねない」(同記者)との声もあるが、どういうことなのか? 大畠氏という地味な政治家のバックグラウンドを探ると、大畠氏と”原子力ムラ”とのただならぬ関係が垣間見えてきた。
まず、元日立製作所の原発設備設計者である大畠氏の選挙基盤であるが、同社の工場が集積する日立市を含む茨城県第5区から、90年の衆議院議員総選挙に立候補し初当選。以後7期連続の当選を重ねているが、「その最大の強みは日立労組、電機連合、そして同連合も加盟する日本労働組合総連合会(連合)による資金面、選挙活動面での全面的な支援」(同記者)という。
特に原発メーカーである日立、東芝、三菱電機などの電機メーカーの労組で構成する電機連合は、大畠氏が総支部長を務める民主党茨城県第5区総支部へ年間2,400万円(09年度政治資金収支報告書による)もの寄付を行っている。また、夕刊フジによると、同支部に対し東電労組、全国の電力会社労組で構成する電力総連からも献金が行われている模様だが(09年度)、こうした支援組織は、大畠氏の政治活動にどのような影響を与えるのか?
「電機業界、電力業界の完全な”お抱え候補”である大畠氏が、業界利益の代弁者であり、業界の意に反する行動を行うことなどできないのは明らかです。彼らは、自分たちが支援する政治家にお願いしている案件の進捗状況が悪いと、『ところであれはどうなっていますか?』などと逐一政治家本人にチェックを入れてきますから」(政治ジャーナリスト・宮崎信行氏(http://blog.goo.ne.jp/kokkai-blog))
ちなみに電機連合の有野正治中央執行委員長は、連合の10月4日定期大会冒頭挨拶で古賀伸明会長が「脱原発」の方針を示したことについて、電機連合HP上で次のように待ったをかけている。
「『脱原発』あるいは『脱原発依存』という熟語一つで表していくことは受け取る方に誤解を招く危険が大きいと感じます。(略)原発に代わるエネルギー源を確保するには相当な時間と費用がかかることになり、時間軸は読めません」
また、全国の電力会社(10社全て)及び電力関連会社の労働組合で構成する電力総連の内田厚事務局長も6月18日付け東京新聞の取材に対し、「原子力発電は、議会制民主主義において国会で決めた国民の選択。もしも国民が脱原発を望んでいるのなら、社民党や共産党が伸びるはずだ」と発言。大畠氏を強力にバックアップする両組織の原発に関する方針は言わずもがなである。
■前原政調会長が大畠氏を脱原発からの舵切りに利用!?
次に、大畠氏の人脈を見てみよう。大畠氏は毎年「政治経済セミナー・レセプション」という名の政治資金パーティーを開催し、09年11月18日に行われた同パーティーでは計1,450万円の収入を上げている。政治資金パーティーでは「その政治家と日ごろからつながりが深かったり、ブレーンである人物が講演を行うことが多い」(前出の記者)が、大畠氏のパーティーでは、なぜか毎年のように原子力推進をテーマとする講演が行われている。
07年 「原子力は地球環境問題からも大切なエネルギー」
講師 木元教子氏(評論家)
08年 「フランス国における高レベル廃棄物処分計画と原子力政策」
講師 ピエール・イブ・コルディエ氏(フランス大使館原子力参事官)
09年 「日本と世界のエネルギーの現状と今後」
講師 十市勉氏(当時の財団法人日本エネルギー経済研究所専務理事)
(「日本のエネルギー政策の未来の鍵は原子力」との結論)
また、大畠氏が個人社員(全11人)を務める冒頭の社団法人EITは、10年度事業計画に「(EITは)わが国の原子力立国構想にも影響を与えてきたと確信している。『原子力ルネサンス』といわれる時代に、より重要性を増しているのではないだろうか。(略)研究課題を原子力に関する政策提言により特化していくことが望まれている」(EITのHP)と掲げる研究調査機関である。
そしてEITの法人会員には、電力総連、電機連合、電気事業連合会(電事連)、日本原子力研究開発労働組合と、原発推進で恩恵を受ける組織がずらりと顔をそろえる。
以上のバックグラウンドからも「脱原発」派とは言いがたい大畠氏を、なぜ民主党は「脱原発依存を前提」(10月4日産経ニュース)として据えられたPTの座長に据えたのか?
その裏には性急な脱原発の動きを抑制したい、民主党執行部の意向が働いているという。
「鳩山、菅政権時代に、民主党と経団連が代表する経済界との関係はボロボロになりました。消費税増税、TPP推進、そして再来年実施が濃厚な衆議院議員総選挙に向け、民主党にとっては経団連との関係修復が喫緊の課題になっています。しかし経団連は脱原発への反対を表明しており、世論を気にする民主党執行部は、明確に脱原発の方針を表明できない。そこで管前総理が唱えた脱原発路線からの舵切りを『あくまで党内議論の積み上げの結果』を担保として打ち出すため、特に前原政調会長の強い意向で、今回の人選は行われたとの見方があります」(前出の記者)
長きに渡り原発を推進してきた自民党に加え、民主党さえも「原発推進」となると、もはやこの方向は既定路線なのか?
「自民党は次の衆議院議員総選挙で政権を取れなければ、過去の社会党同様に衰退の一途をたどるとの危機感が強い。そこで民主党との明確な対立軸を打ち出すために、『脱原発』を訴えてくる可能性があります。脱原発により石油火力発電の燃料である石油の輸入・消費の増大が予想されますが、自民党は小泉政権時代、マラッカ海峡への巡視船派遣(海賊対策)やイラク戦争に伴う海上自衛隊派遣などを通じ、船舶の燃料である石油業界との関係を強化しました。同政権で外務大臣を務めた町村信孝氏、川口順子氏、官房長官であった細田博之氏は経産省出身であり、他にも同省へいまだ強い影響力を持っている議員は自民党には多数います。このようなパイプをフルに活用し、後のない自民党が、『脱原発』を鮮明にする可能性も十分に考えられます」(前出の宮崎氏)
経済界との関係を重視し、脱原発路線からのシフトを図る民主党と、世論を見方につけるべく脱原発路線を打ち出そうとする自民党。
今回ひっそりと行われた人事が、政権交代のカギを握っていると捉えるのは早計であろうか?
(文=編集部)
いいかげん、解体しようよ。
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