シャープ「GALAPAGOS」撤退騒動に見る電子書籍の本質
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るかも……となれば、ちょっと考えます。
2010年は「電子書籍元年」と呼ばれたが、実際のところ、日本においてはまだ電子書籍が広く普及したとは言えない状況だ。幅広いユーザーへと波及しないのはなぜなのか? 先般話題になったシャープの電子書籍リーダーをめぐる騒動からその本質を考察する。
9月中旬、シャープの電子書籍リーダー「GALAPAGOS」が「撤退へ」と、新聞各紙などで一斉に報じられる騒ぎがあった。たとえば日刊スポーツはいかにも扇動的な「ガラパゴス”絶滅”真価を見せられず」という見出しで、こう報じている。
「液晶画面に触れるだけで簡単に操作できるタブレット端末。その国産品の一角が脱落した。シャープは15日、昨年12月に鳴り物入りで発売した『ガラパゴス』の自社販売を今月30日で終了すると発表した。わずか10カ月の短命となった背景には、先行する米アップル社『iPad』の勢いに勝てず、電子書籍のコンテンツ不足などが重なった。さらに、人気の多機能携帯電話『スマートフォン』にもアピール力で及ばなかったことなどが浮上した」
最後の文章など何を意味しているのかわからず、いかにもスポーツ紙らしいIT音痴ぶりを発揮しているが、しかし一般紙などの記事もおおむね「撤退」という論調だった。
これに慌てたのが、シャープ自身。翌日になって「撤退は事実と異なる報道だ」と異例の声明をリリースした。自社販売は終了するが、アンドロイド搭載のGALAPAGOS製品に関しては通信キャリアのイー・アクセスから発売しており、今後も販売していく予定だというのである。そして同時に濱野稔重副社長が大阪の機械記者クラブで「GALAPAGOSは決して撤退しない。来年にも、さらに新モデルを追加販売する予定だ。今後もさらに魅力ある端末とコンテンツサービスの提供に努め、事業拡大を図る」と説明したのだった。
しかし、GALAPAGOSのビジネスが岐路に立たされているのは間違いない。その約10日後には、今度は配信プラットフォーム「TSUTAYA GALAPAGOS」からTSUTAYAが撤退し、同プラットフォームがシャープの100%子会社になるという発表も行われた。
そもそもGALAPAGOSの販売方式には、残念ながらかなり無理があったと言わざるを得ない。家電量販店で購入を申し込んでもその場で製品は受け渡しされず、後日シャープから直送されてくる形式になっていた(あるいは、シャープのオンラインストアでの購入)。なぜ直販方式を採用したかといえば、電子書籍のプラットフォームビジネスでは単にリーダーという家電製品を販売するだけでなく、リーダーを中心とした電子書籍エコシステムを包括的に利用してもらわなければならないからだ。そのためには、ユーザーに製品購入時に必ず決済やアカウントの登録をしてもらう必要がある。
シャープの担当者は今年初め、私の取材にこう答えている。
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