「今だからこそ」お笑いブームの全貌を俯瞰する、ラリー遠田『この芸人を見よ!2』
#お笑い #本 #ラリー遠田 #岩崎夏海
10月5日、お笑い評論家のラリー遠田氏による単行本『この芸人を見よ!2』(サイゾー)が発売された。これは、「日刊サイゾー」に連載されているコラムをまとめたもの。お笑いを取り巻く状況も激変しつつある今、ラリー氏は現状をどのように見ているのか? 著者本人を直撃してみた。
――2011年10月というこの時期に、サイゾーからの単行本第2弾を出すことになった経緯について教えてください。
ラリー 「日刊サイゾー」の連載コラムがある程度たまってきたら書籍化するという話は以前からありました。中身に関していえば、『エンタの神様』(日本テレビ系)、『爆笑レッドカーペット』(フジテレビ系)、『M-1グランプリ』(テレビ朝日系)といったネタ番組が次々に終了して、「お笑いブームの終焉」が叫ばれた2010年が過ぎ、2011年を迎えた今こそが、「お笑いブーム」と呼ばれたものの全貌を振り返るにはちょうどいい時期だと思ったんですよね。ブームを総括するという意味でも、今出す価値がある1冊になっているのではないでしょうか。
――この単行本の中では、そんな時代状況の変化がどういう形で反映されているんでしょうか?
ラリー まず、本文を全面的に改稿した上に、すべてのコラムに新たに「追記」を足しています。ここでは、その芸人のテレビでの扱われ方やその人を取り巻く状況の変化に合わせて、情報を補足したり解釈を加えたりしています。例えば、09年に執筆したフットボールアワーに関するコラムでは、主に漫才における彼らのボケとツッコミの技術論に言及していましたが、「追記」では最近のバラエティー番組における彼らのいじられ方、特にめきめきと頭角を現している後藤輝基さんの扱われ方について書いています。
このような追記を45本のコラムすべてに加えたことで、記述に厚みが増して、単にウェブ上のコラムをまとめただけではなく、それを通してひとつの時代を概観できる仕上がりになっているのではないかと思います。
――単行本でしか読めない特別企画として、放送作家の元祖爆笑王さん、作家の岩崎夏海さんとの対談記事も収録されていますね。
ラリー ガンバク(元祖爆笑王)さんは、『めちゃ×2 イケてるッ!』(フジテレビ系)をはじめとする数多くのお笑い番組で構成を務め、長年にわたってお笑い養成学校の講師も務めている笑いのスペシャリストです。その人に『めちゃイケ』を含むテレビのお笑いについてじっくりお話をうかがうことができたのは非常に興味深かったです。
また、岩崎さんは、250万部を突破したベストセラー小説『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(ダイヤモンド社)の作者でもあり、かつては秋元康さんに師事してバラエティー番組の構成も手掛けていた人物です。岩崎さんとは、「エンターテインメントとしてのお笑い」という観点から、『M-1グランプリ』やとんねるずについてお話をさせていただきました。岩崎さんはドラッカーの解説者として注目されていますが、お笑いに関しても独特のロジカルな視点があって面白いです。岩崎さんのそういう一面が見られるのも貴重だと思います。
――では最後に、次の単行本への展望はありますか?
ラリー 第3弾が出せるかどうかは状況によりますね。これからお笑いシーンが盛り上がって、有望な若手が次々に出てくるようになれば、連載コラムで取り上げるべき人材も充実してきて、これから3冊目、4冊目と出していくことはできると思います。また、別の形になるかもしれませんが、お笑いに関する特定のテーマを掘り下げた評論にもいずれ取り組みたいと考えています。
現在、私は『コメ旬』(キネマ旬報社)というお笑い専門ムックの編集長を務めています。そこでは、テレビの笑いを中心にして、お笑い、演芸、コメディーなどを幅広く取り扱っています。編集者・取材者としてはそういう媒体を生かしながら、書き手としてはまた新たなプロジェクトに積極的に挑んでいきたいと思っています。
(取材=編集部)
●らりー・とおだ
1979年生まれ。おわライター/お笑い評論家。テレビ番組制作会社勤務を経てフリーライターに。在野のお笑い評論家として多方面で活躍。雑誌「黄金のGT」(晋遊舎)、WEBマガジン「日刊サイゾー」、ケータイ版「imidas」にてコラムを連載中。現在、お笑いムック『コメ旬』(キネマ旬報社)の編集長を務めている。主な著書に『M-1戦国史』(メディアファクトリー新書)、『THE 芸人学 スゴい!お笑い』(東京書籍)、『この芸人を見よ!』(サイゾー)がある。公式HPは「おわライター疾走」(http://owa-writer.com/)
イラストは今回もホセ・フランキー先生の描き下ろし!
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