高齢者獲得のためのあの手この手……これからのフーゾクの上得意は”年金族”?
#雑誌 #出版 #元木昌彦 #週刊誌スクープ大賞
第1位
「福島第一原発”最高幹部”がプルトニウム検出の真相を語る 調べればもっとひどい現実がわかる」(「週刊朝日」10月21日号))
第2位
「『60歳以上向けフーゾク』行列のできる店」(「週刊ポスト」10月21日号)
第3位
「独占入手!島田紳助『山口組ナンバー2との親密写真』」(「フライデー」10月21日号)
アップルのS・ジョブズが死んでしまった。彼の有名な言葉「ハングリーであれ、愚かであれ」を思い出す。こうしたベンチャー企業で、トップが創業者から変わってうまくいっているところなんかあるのだろうか。スポーツの世界でもよくいわれる。長嶋と王のいない巨人の監督になった王は大変だったろうと。
さて、今週の第3位は「フライデー」のスクープ第2弾。
紳助が極心連合会の橋本弘文会長を上回る山口組の大幹部と同席していた写真や、どないや紳助、グーのネもでえへんやろう。
見開きでドーンと出てるがな。右におるのが山口組のナンバー2、弘道会・高山清司会長や。山口組のナンバー4とナンバー2の間に座ってる芸人なんて、フツー考えられんことやそうや。
兵庫県警の関係者が言うてはる。
「大きなシノギ(収入を得るための手段)について、話し合いをしていたのかもしれない。山口組内では、紳助はフロント(企業舎弟)として認識されているのかもしれません」
これで紳助も絶体絶命やな。だけどこの写真、どこかで見たんと違うか? あれっ、この間スクープした写真と同じやないか。あん時は高山会長のところだけカットして出して、今度は全部出したというこっちゃな。
1粒で2度おいしいグリコのようなことやるんやな。まあ、どっちゃにしても橋本会長と高山会長がOKしたというこっちゃな。やっぱり会見で紳助が、橋本会長とそんなに親しくないと言ったことで、2人を怒らせてしもうたんや。
紳助の持っとる不動産にも暴力団が絡んでるという話やし、まだまだ紳助がらみの悪い話はでてきそうやな。
第2位は軟派記事でこのところ気を吐く「ポスト」の記事。人生80歳時代。還暦なんかまだまだハナタレ小僧みたいなもんだ。
だいぶ前から年金支給日はソープランドやマッサージ、中にはデリヘル嬢をホテルに呼ぶ高齢者もいるといわれていた。
草食系といわれる若い男連中は風俗には来ない。やはり狙い目は若いころからフーゾクにどっぷり浸かったことのある団塊世代。そこで連中が考え出したのは高齢者獲得のためのあの手この手だ。
東京・吉原のソープ街では年金が支給される偶数月の15日からしばらくの間は高齢者の客が急増する。これを「吉原年金族」というとポストに書いてある。
30歳未満の客はお断りの池袋の派遣型アロマエステ。やはり客を30歳以上に限定している東急沿線のデリバリーヘルスでは、30代が90分コース2万5,000円で、ナイスミドル会員は2万4,000円、ナイスシニア会員だと2万3,000円と年齢が上がるほど安くなる。
完全予約制で”心のふれあい”を大事にしているという中高年専門の老舗・店舗型ヘルス「ナイスミドル」は高田馬場駅近く。11年前にオープンしたが、60歳代が客層の中心で、岡山、北海道からも来てくれる客がいるという。
ED(勃起不全)に悩む男にとって打ってつけなのが、池袋の派遣型回春マッサージ。ここは高齢者の場合、看護士の資格を持った女の子を派遣するようにしているそうだ。
障害者や高齢者専門のデリバリーヘルスが大阪にある。ここへ入店する娘には、体の起こし方や脱がせ方、あそこの洗い方、手動式人工呼吸器の使い方まで指導する。ここは会員になると70分1万8,000円と指名料2,000円と交通費がかかる。90分で1万5,000円の「プラトニックコース」もあるという。
コラムも面白い。鶯谷の熟女専門のデリヘルに82歳のフーゾク嬢がいるといううわさを聞いて探してみると実際にいて、大塚駅近くのラブホに来てもらった話が書いてある。お客さんは実母のように甘えてくるのがいたり、話し相手欲しさに来る客が多く、空襲や戦争体験を彼女に話すそうだ。
私が会社に入ったころ、渋谷に60歳を超えたトルコ嬢(今のソープランド嬢)がいて、尺八が上手いと評判で、夜な夜な通う先輩がいた。どうしてそんな婆さんがいいんですかと聞くと、歯が抜けていてほとんどない、だから何ともいい難い感触がいいんだと、ニヤニヤしながら教えてくれた。横浜にメリーという娼婦がいたことが話題になったことがある。映画まで作られたが、彼女も相当な歳だった。
これだけ高齢者が増えてきて、まだまだ下半身も元気な連中は、これからのフーゾクの上得意になること間違いない。そういう意味では「ポスト」は金鉱を掘り当てたのかもしれない。
第1位は地味な記事だが、内容はすごい「朝日」の記事。9月30日、文科省は原発80キロ圏でストロンチウムが検出され、さらに原発の北西部・飯舘村ではプルトニウムが検出されたと発表した。
こうした深刻で大事な話を、なぜ2ページしかやらないのか疑問はあるが、やらないだけましか。
フクイチの最高幹部は以前「原子炉から核燃料が飛び散った可能性がある」と話していたが、それが現実になったのである。
プルトニウムは重いし、3号機のプルトニウムは陶器のように焼いて固めてあるから、そう遠くまで飛散しないと思っていたそうだが違った。
「そう考えると、今回のプルトニウムの検出は、3号機の爆発がいかに大きかったかという裏付けになるでしょう」
爆発直後「プルトニウムは飛ばない」と言っていた御用学者を非難し、調査サンプルが十分でないと疑問を呈している。
特に警戒区域、計画的避難区域のサンプルが少ない。それに文科省は約3カ月前に調査していたのになぜこんなに発表が遅れたのか? その理由は調査グループのメンバーを見ればわかるという。
「今回の調査には、電気事業連合会(電事連)がサンプル採取にかかわったと聞いています。(中略)言うまでもなく、みんな、原発を持っていて、つぶしたくない人たち。公正さを考えれば、今後、調査方法は考え直す必要があります」
プルトニウムは長く残存するし、少々取り除いてもダメだという。
「それほど爆発の威力が大きかったということを認め、汚染地域の住民の皆さんの帰宅は再考する必要があります。いくら除染しても、すぐに放射線量が下がるとは限りません。除染に使った水などの処理はどうするのか。下水や地下に流れたり、地中にしみこんだりして、また汚染が広がってしまう」
「週刊文春」のモノクログラビア「飯舘村の叫び」と合わせて読んでもらうといい。
「今度のプルトニウムも東電は知っていて今頃出してきたんだ。次は何が出るんだか。我々をバカにしてんだべ。バーアンと爆発したとき、県や市のお偉いさんは我々を置いて逃げたんだって。知らなかったのは我々だけだ」
今も「見捨てられた村」に残って暮らす佐藤義明さん(60)の言葉である。
84歳になる佐藤強さん(84)は、今年は米作りはできなかったが、この時期は山にマツタケをとりに行くのが楽しみだという。「飯舘のマツタケは最高だ」「俺は自分で作ったものを食べているんだ。放射能なんか関係ねぇんだ」。
愛する家畜たちを守りながら生活している夫婦もいる。こうした村を捨てず共に生きる覚悟をもった人びとの声は、永田村で安穏と暮らしている政治屋や霞が関村の税金泥棒たちには届かない。
何度もいうが、もはや原発事故は収束したかのような政府の発表と、それを鵜呑みにする大新聞やテレビ報道にだまされてはいけない。
福島第一原発事故は次第にその大きさが分かってきた。最悪の事態は避けられたかもしれないが、まだ放射能が飛散していることは間違いない。私の友人が先日福島市に行ってきた。だいぶ前に測った高い放射線量が減少していないところがまだまだあるそうだ。
ということは、放射線が福島第一原発から出続けているということではないのか。原発事故はまだ終わっていないことを知らせるのは週刊誌しかないのだ。頑張れ! 週刊誌。
(文=元木昌彦)
●元木昌彦(もとき・まさひこ)
1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。
【著書】
編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか
タイトルとジャケのギャップがすごい。
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