「継続を模索中」突然の閉店を決めた「自炊の森」店長を直撃取材!
#本 #電子書籍
店内に陳列された書籍を「自炊」(スキャナーなどを使い、自分自身で電子化する行為)できるとして賛否の議論を生んだ「自炊の森」(東京都千代田区)が近く閉店する意向を明らかにし、再び注目を集めている。
秋葉原にある同店は、昨年12月末にプレオープン。「店内の書籍を店内で電子書籍化して持ち帰ることができる」として、12月末にコミックマーケット会場周辺でチラシを配布し、著作権者に対する利益還元やモラルの問題などで議論を巻き起こした。今年3月からは、著作権者への利益還元として「1冊1スキャンに対して定価の10%を支払う」と提案し、営業を行っていた。
突然の閉店告知に対して、今年9月に講談社・小学館・集英社ら出版社7社と作家・漫画家ら122人が自炊代行業者約100社に対して行った「自炊代行は複製権の侵害」とする旨の質問状との関連性も想像されたが、
「質問状に関連してマスコミから取材依頼はあったが、質問状は届いていない」(同店店長)
とのこと。著作権法では「『使用する者が』複製することができる」と定められているため、店員は代行せず、使い方を説明するだけの同店は対象外と判断されたようだ。
そんな中での閉店は、同店のオーナーの判断で店長にも寝耳に水の出来事だったという。
「閉店する意向を告げられたのは、10月3日のこと。本当にTwitterに、閉店の旨をツイートする直前のことでした」(店長)
閉店はオーナー側の意向であり、開店以来、店を切り盛りしてきた店長の無念さは計り知れない。
「開店以来、爆発的ではないにしても、収支はトントンといった具合でした。常連のお客様も増えてきたので、もうちょっと粘れば……と思っていたのですが、”悪名”が轟いたままやめてしまうのは残念です。常連のみなさんにあいさつもしたいので、できるかぎり営業は続けるつもりです」(店長)
店内に陳列された書籍を「自炊」できるシステムにしたために「悪名」が轟いてしまったが、店長は将来的には権利侵害の可能性が高い「自炊代行」に変わって、店頭で客が自分で自分の持ち込んだ雑誌や書籍をスキャンする、本来の「自炊」が主流になっていくのではないかと考えているという。そのため今後は店内に書籍を陳列しなくても経営は成り立つと考えているようだ。
「このまま閉店してしまっては無責任なので、なんらかの形で継続を模索しています」(店長)
ブームともいわれる「自炊」だが、個人で設備を整えることは困難だ。高速なスキャナーや、分厚い雑誌や書籍を一度にバラせる業務用の裁断機を自由に使うことができるビジネスに需要があるのは間違いない。
そこで店長は、早くも公式サイトで「事業ノウハウ、資産の買取などを希望される投資家、企業の方」を募っている。
「今のところ”設備を買い取りたい”という方が多いですね。正直、店の一角や空き倉庫でも営業はできます。また、現在の店舗は少し広すぎるので、家賃の部分はもっと圧縮できると思います」(店長)
すでに設備はそろっているので、場所さえあれば、いつでも新たな形で営業を再開することは可能なようだ。
「自炊」は、まだ普及は始まったばかりの黎明期に過ぎない。閉店が決まったからといって、このビジネスモデルが否定されたわけではない。今後、なんらかの形で再生するのか? 動向に注目したい。
(取材・文=昼間たかし)
モラルも忘れずに。
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