シリーズ第4作『猿の惑星/征服』の大胆な翻案? 『猿の惑星:創世記』
#映画
慣れ親しみ信頼さえ寄せていた存在がある日突然、人類を脅かす恐ろしい敵に――。「発想の転換」を起点としたストーリーを見事に映像化した新作映画2本が、相次いで封切られる。
10月7日に公開される『猿の惑星:創世記(ジェネシス)』は、いわずと知れた名作SF映画「猿の惑星」シリーズを踏まえ、現代の米国サンフランシスコを舞台に「猿が人間を支配する」という有名なプロットを再構築したオリジナルストーリー。脳を活性化させるアルツハイマー病治療薬の研究者・ウィル(ジェームズ・フランコ)は、試験薬を投与したメスのチンパンジーから生まれた”シーザー”を育てることに。母猿からの遺伝子を通じて新薬の影響を受けていたシーザーは、人間の子どもを超える驚異的なスピードで知能を発達させるが、事件を起こして霊長類保護施設に収容される。飼育係から虐待を受け、人類への敵意を募らせるシーザーは、施設の猿たちをまとめ上げ、自由を求めて行動を起こす。
SF映画の記念碑的作品である第1作『猿の惑星』(1968)の前章という位置付けも可能だが、高度な知能を持つ猿が人類に反乱を起こすシリーズ第4作『猿の惑星/征服』(72)の大胆な翻案と考えることもできる。オリジナルシリーズでは、当時最先端の特殊メイクを施された俳優たちが「知的な猿たち」を演じていたが、「創世記」に登場する猿キャラは、『ロード・オブ・ザ・リング』(01)や『アバター』(09)の視覚効果を手掛けたWETAデジタル社がパフォーマンス・キャプチャー技術で”創造”。『ロード・オブ・ザ・リング』でやはり同じ技術を使いゴラムを演じたアンディ・サーキスが、繊細な表情の演技でシーザーに魂を吹き込んだ。『スラムドッグ$ミリオネア』(08)のフリーダ・ピントも、ウィルの恋人となる美人獣医役で存在感を放っている。人間と猿の種を超えた心の交流から断絶への変化がエモーショナルに描かれる前半のドラマと、人間対猿の市街戦、ゴールデンゲートブリッジ上での最終決戦へとダイナミックに展開する後半のアクションとの対照も絶妙だ。
続いて10月8日に公開される『レア・エクスポーツ 囚われのサンタクロース』は、”サンタクロースの国”フィンランドで製作された、ブラックユーモア満載のファンタジーアドベンチャー。北フィンランドの山村に住むピエタリ少年は、古い文献を読みサンタクロースが恐ろしい存在だと信じるようになる。そのころ、国境付近の山に封印されたという”本物のサンタクロース”が多国籍企業によって掘り起こされ、ときを同じくして子どもたちの失踪やトナカイの大量死などが次々に発生。ピエタリと地元の大人たちは村の平和な暮らしを取り戻すため、敵との戦いに自ら立ち上がる。
誰からも愛されるクリスマスの定番キャラ、サンタクロースが悪役になる映画は過去にもあった。だが本作は、サンタクロースの本場フィンランドで、自らサンタのイメージを悪くしかねないダークな設定にしたという点がミソ。事件が起きる雪に閉ざされた村の寒々とした映像の中で、少年をはじめとする村人たちの素朴さが温かく、終盤にはじんわり心にしみる感動と、タイトルの意味する「珍しい輸出品」に合点がいくオチが待っている。クリスマスシーズンには少々早いが、一風変わったファンタジー映画が好みという方にオススメしたい。
(文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉)
「猿の惑星:創世記(ジェネシス)」作品情報
<http://eiga.com/movie/56076/>
「レア・エクスポーツ 囚われのサンタクロース」作品情報
<http://eiga.com/movie/57037/>
すげージャケ写。
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