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「KDDIの社員は口が軽いんだよ」ドコモもあきれる「iPhone5騒動記」の行方は?

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 「米アップルが今秋にも発売する『iPhone5』を、KDDIが日本で販売することが判明した。日本では初代iPhoneから3年間続いたソフトバンク(SB)による独占販売体制が崩れる」(以上、9月22日付け日経ビジネスオンラインより)

 日経ビジネスオンラインが報じた「KDDIがiPhone5参入」の記事が波紋を呼んでいる。その後、日経本紙や他メディアもこぞって追随し、この結果ソフトバンクの株価が下落するなどの騒ぎになっている。これまでiPhoneといえば、国内ではソフトバンクモバイル1社の独占販売。報道が事実なら、スマートフォン市場で出遅れたKDDIの大幅な巻き返しが予想される。

 しかしこのニュース、関係者の間では真偽のほどを疑う声も少なくない。第一報を報じた日経ビジネスオンラインも、それを後追いした一般紙も、情報ソースを明らかにしているところは一社もないからだ。場合によっては、各メディア総ぐるみの世紀の大誤報ということにもなりかねない。KDDI側は「当社からアナウンスしたものではないから、コメントのしようがない」(広報部)、「メディアさんが勝手に言っているだけでこちらは何も聞いていません」(都内auショップ)の一点張り。ライバル会社であるドコモのある関係者は、今回の報道のソースについて「日経ビジネスオンラインの記者が個人的なコネクションでKDDIの関係者から聞き出したということでしょう。政治記者が個々の情報ソースを秘書や代議士に持っているのと同じです」と推測するが、「事実かどうかは課内でも懐疑的」だという。

 これについて、「可能性は極めて高い」と言うのは、ITジャーナリストの石川温氏だ。

「22日の報道を知った後に、私も複数の関係筋に確認したのですが、その感触では信ぴょう性は非常に高いというのが実感です。今のところ、誤報という結果にはならないと感じています」

 発売時期を日経ビジネスオンラインが「11月」と報じた点については(他メディアは「年明けの可能性」とも報道)、アメリカでのiPhone5発売時期と関係しているという。アップルでは北米におけるiPhone5の発表を10月4日に、発売を中旬ごろに開始するとしており、日本のソフトバンクもこのスケジュールに準ずることが予測される。KDDIの「11月」は、これに極力近づけたいという意思の表れだというのだ。

 KDDIは現在、Cメールをグローバル機種でも送受信できるように、メッセージングサービスを国際規格であるSMS/MMSに対応させようとシステムの改修を進めており、この完了が来年1月ごろといわれています。それを待ってiPhone5を発売するのか、前倒ししてソフトバンクのスケジュールに合わせるかという判断だと思います」

 ただ、課題も残されていると石川氏は言う。

「当然ながら、料金体系もキャンペーンもアップルが仕切る形になりますし、相当量の販売ノルマも課せられる中で、KDDIが主導権を握れるかという懸念があります」

 また、ユーザーの増加でネットワークのキャパシティーにも不安が残る。

「iPhoneユーザーがau利用者に拡大すれば、ネットワークも当然ながらひっ迫します。結果的に今のソフトバンクと同じくらい、つながりにくい状態になる可能性も否定できません」

 一方、「今回の報道はあまりにソースがあいまい」として、情報自体の信ぴょう性を疑うのは、モバイル業界に詳しい武蔵野学院大学准教授の木暮祐一氏だ。

「交渉自体はauもドコモもアップルとはしてきているはずですから、その意味ではどちらも可能性がゼロということはありませんが、現時点での報道内容を見る限り、懐疑的にならざるをえませんね」

 また、KDDIの社風という観点からも疑問を呈する。KDDIは自社のビジネス目的の達成のために、メーカーや販売店に制約をかける傾向が、他のキャリアより非常に強い企業なのだと木暮氏は言う。

「この26日に発表されたモトローラ社の『PHOTON(ISW11M)』は、本来は世界中で通信ができるようにさまざまな通信システムを搭載するように設計された機種なんです。ところが、今回KDDIを通して発売するにあたり、ドコモやソフトバンクが採用しているW-CDMAや、国際規格のGSMを外してしまった。完全に国内使用限定モデルにしてしまったわけです。SIMカードを外して海外などで使わせないようにとの意図なんでしょうが、設計段階の思想を崩壊させてまでも、わざわざコストをかけてユーザーの利便性に反することをする。そういう企業文化の会社が、果たしてiPhone5を扱えるのかという疑問は残ります」

 さらに、今回の一連の報道のソースがKDDIからのリークであった場合、契約に厳密な米アップルが黙っているかという問題もある。

「アメリカでは機密保持契約に対する概念が、日本とは比較にならないくらい厳しい。過去にも海外で、アップルと提携した経営者が記者発表の前日にポロっとしゃべってしまい、それで契約破棄になったという事例もあります。国内でも過去にドコモの山田社長が『iPadで使えるSIMを提供する』としゃべってしまい、後日撤回する騒ぎがありました。仮に今回、KDDIが本当にアップルと合意に達していたとしても、この大騒ぎをアップルがどう見るかというのは、今後注目すべきところでしょう」

 KDDIは26日、スマートフォン秋冬モデルの新作発表を都内で行ったが、記者からのiPhone5に関する質問に対しては、予想通りノーコメントを通した。

 冒頭でコメントしたドコモ関係者があきれ気味に言う。

「そもそもKDDIは脇が甘い会社でしてね。ドコモ以上に官僚体質というか、頭が固い会社の割に、口が軽い方が比較的多いんですよ(笑)。記者からドキっとする裏情報を聞いたときは、たいがいソースがKDDIだったりする。今に何か大きな問題に発展すると噂していたんですが……」

 今回の報道で多くのauユーザーが歓喜したことは想像に難くない。しかし、彼らの手にiPhone5が届くまでには、まだまだ多くの紆余曲折を経る必要がありそうだ。
(文=浮島さとし)

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最終更新:2013/09/11 15:14
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