3代目はスレンダー美女がお好き? 北朝鮮後継者の実像『マンガ 金正恩入門』
#本 #北朝鮮
2010年9月末、朝鮮労働党代表者会にて、金正日総書記の3男である金正恩(キム・ジョンウン)氏が金総書記の後継者として初めて姿を現し、軍事大将の称号を授与され、党軍事委員会副委員長に任命された。慢性腎不全を患い、脳卒中、すい臓がん、うつ病、認知症ともささやかれる金正日総書記の健康状態だけに、”3代目・金正恩総書記”が誕生するのもそう遠い話ではないだろう。
ベールに覆い隠され、謎めいた印象の正恩氏だが、実際はどういう人物なのか。『マンガ 金正恩入門』(TOブックス)は、金正恩の実態と政権の内部事情、北朝鮮の現状について描かれた本だ。対北ラジオ放送「開かれた北朝鮮放送代表の河泰慶(ハ・テギョン)氏、漫画家・崔炳善(チェ・ビョンソン)氏、関西大学経済学部教授で在日3世の李英和(リ・ヨンファ)氏が、それぞれ原作・作画・監修を務め、マンガながらかなり情報量が多く、ボリュームのある一冊となっている。絵柄・コマ割りなど、昔懐かしき学研マンガのような風合いで楽しい。
金正恩氏は1983年生まれの28歳。お忍びで来日し、ディズニーランドで遊んでいた長男の金正男(キム・ジョンナム)、影が薄くパッとしない印象の次男・金正哲(キム・ジョンチョル)と、上に2人の兄がいるが、正恩氏は「祖父・金日成似の風貌」と「父・金正日似の度胸のある男らしい性格」を金総書記に買われ、兄らを差し置いて後継者となった。北の報道では、4カ国語を操り軍略に長けた若き天才指導者とされているが、09年4月末、人員を総動員して田植えを行う「田植え150日戦闘」では成果を出せず、「平壌市10万世帯マンション建設事業」も建設目標を達成できず、同年11月末の貨幣改革(デノミ)では、国内に大インフレを引き起こすなど、早くもその無能ぶりをさらけ出している。
正恩氏の人物はというと、権力欲が強く負けず嫌いな性格のリーダー気質。バスケット好きで、大ファンであるシカゴ・ブルズのTシャツを着てバスケを楽しみ、試合後、必ず内容を評価し、チームメートを叱ったり励ましたりした。またマリンスポーツや乗馬を好み、国内に数十カ所存在する別荘には、広大な乗馬施設に、1頭数億ウォンを超える馬、ジェットスキー、ヨットなどを多数所持しているという。女性の好みは父と違い、長身・スレンダーのオリエンタルな顔立ちが好みのようだ。
国民の窮状をよそに酒池肉林の贅沢三昧。そんな金正日・正恩親子に対し、現在亡命中の長男・金正男氏が改革・開放を唱え対立しているという意外なエピソードも描かれている。
イラクのフセイン元大統領が処刑され、リビアのカダフィ政権も内乱によって崩壊寸前という世界情勢の中、北朝鮮はどのような展開を見せるのか。『マンガ 金正恩入門』を読むと、この指導者ではどうにも明るい未来は期待できそうもない。
(文=平野遼)
[作者]
・河泰慶(ハ・テギョン)HA, Tae-gyong
1968年釜山生まれ。対北ラジオ放送「開かれた北朝鮮放送」代表。ソウル大物理学科卒業、釜山大通訳翻訳大院、高麗大国際大学院で学ぶ。中国吉林大で経済学博士号取得。大学時代より北朝鮮と統一問題に関心を持ち、SKテレコム経営経済研究所の首席研究員時代も北朝鮮関連のボランティア活動にたずさわる。 2005年11月「開かれた北朝鮮放送」を設立、 本格的に北朝鮮の人権問題に取り組みはじめる。現在は、同放送の代表として北朝鮮の住民に世界の情報を伝え、北朝鮮問題の深刻さを韓国だけでなく 海外にも伝えるため各メディアで活躍している。
[漫画家]
・崔炳善(チェ・ビョンソン)Choi Byung seun
1946年平壌生まれ。ニューヨークアートスクールでデザインを専攻。世界美術家協会研究委員、韓国漫画家協会理事。『漫画 韓国史』『学習百科事典』などの本のほか、雑誌、新聞に作品を発表するなど多方面で活躍。
[監修者]
・李英和(リ・ヨンファ)Lee Young-hwa
1954年在日朝鮮人3世として、大阪府堺市に生まれる。関西大学経済学部教授。91年、朝鮮民主主義人民共和国の社会科学院に留学。93年にRENK(救え!北朝鮮の民衆/緊急行動ネットワーク)を結成。主な著書として『北朝鮮 秘密集会の夜』(文春文庫)、『朝鮮総連と収容所共和国』(小学館文庫)、『極秘潜入――金正日政権深奥からの決死リポート』(小学館)などがある。また 『マンガ金正日入門』(飛鳥新社)の監修を務める。
なかなかすごそう。
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