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「安売りは禁止」を強制するのは不当!

“業界のタブー”セブン-イレブンの「加盟店いじめ」に下された審判

711_110922_01.jpg1万3,500店舗以上を誇り、いまだ増え
続ける巨大チェーンの問題とは?

 コンビニ・フランチャイズ業界で、トップに君臨し続ける、鈴木敏文会長率いるセブン-イレブン・ジャパン。同社本部が値下げ販売制限等をめぐって約2,600万円の損害賠償を福岡市内の元加盟店オーナーS氏から求められていた訴訟の第一審判決が、9月15日に出た。福岡地裁は、販売制限を独占禁止法違反(優越的地位の濫用)と認め、同社に220万円の支払いを命じた他、加盟店契約内容が説明不十分だと認定し、本部が一審敗訴となった。

 元オーナーであるS氏の訴えを簡単にまとめると、「自身の店舗で弁当等のデイリー品の値下げ販売を実施していたことに、同社本部が散々難癖をつけたことは独占禁止法違反であり、不当だ」とするもの。田中哲郎裁判長は判決理由で「(本部が)値下げ販売をやめるように繰り返し指導したことで、店側の取引を不当に拘束した」と独禁法違反を認定した上で、「値下げすれば利益を上げることができた」とも述べた。また、廃棄や万引きで「ロス」となった商品を売り上げに計上し、チャージを徴収する「ロスチャージ」といわれるコンビニ業界で用いられる特殊会計システムについても「計算方式が一般的な方法と異なることについて、加盟店側に理解できるよう配慮する必要がある」と述べ、説明義務違反を認定した。

 要約すると、「価格販売の値下げは、加盟店の自由。廃棄リスクのある商品は値下げをしてでも販売した方が利益が上がるのだから、加盟店がそれを実施するのは当たり前。本部に制限する権限はない。ロスチャージ会計も契約時に加盟店に説明せよ」というもので、いわば、これまでの”本部側の常識”を覆す内容で、セブン-イレブン本部ならずとも、コンビニ各社の経営陣を戦慄せしめる判決なのだ。

 筆者は2年前の2009年に2度も同社の井阪隆一社長に直接インタビューしたが(参照記事1)、その際「値下げをしても売上げ・利益が伸びるような効果はないし、会計の説明もきちんとしている」という、今回の判決と180度異なる趣旨を語っている。

 S氏は1997年にセブン-イレブン加盟店オーナーになったが、2008年に脱退している。しかし、現役コンビニオーナーたちで作る労働組合「コンビニ加盟店ユニオン」はS氏を支援してきた。ある現役オーナーは「勝てる自信はなかった」と語り、本部から大金星を勝ち取ったことを誇った。九州のコンビニ加盟店ユニオンのメンバーには、契約解除を本部から不当に通告されたとして訴訟を検討しているメンバーもおり、この判決は自信となったようだ。

 だが、S氏が求めていた約2,600万円の損害賠償金に対して、判決では10分の1以下の金額である220万円の支払い命令でしかなかったことや、「廃棄分のコストの15%は本部が負担していた」と同社本部が語っていたことは事実ではない、としていたS氏の主張は無視された形で、今回の判決は決して「完勝とは言えない」というのが、裁判関係者一同の見解のようだ。

■ユニフォームで遺体の身元が分かる

 今回の裁判を支援してきたコンビニ加盟店ユニオンの活動を筆者は度々報道してきたが(参照記事23)、今年で結成3年目を迎え、先月8月24日には東日本大震災の影響を考慮して、東京ではなく大阪で定期大会を開催した。

711_110922_02.jpgコンビニ加盟店ユニオンの定期大会

 同大会には、北海道から九州まで全国のコンビニオーナーが参加し、中には被災地である福島県や宮城県といった東北のオーナーも姿を見せた。

 宮城県でセブン-イレブン美里町関根店を経営する中林茂男氏は震災直後の状況を語り、しばらくはお店をまともに開店するどころか自分が食べるものすらなく、九州のオーナー仲間から食料が届いたときのありがたさや、水道供給停止中はトイレ使用を制限せざるを得なかったことや、いまだ行方不明のオーナーや従業員がいる切実な被災地店舗の状況を話した。特に「セブン-イレブンのユニフォームを着た従業員の遺体が発見された時、警察は『良かった。これなら身元が分かる』とホッとしたそうです」という逸話は、被災地の行方不明者たちの発見作業の熾烈さを垣間見せるものだった。

 また、東日本大震災や原発事故の影響で、例年より国会議員の挨拶は少なかったが、それでも「フランチャイズ法を考える議員連盟」の事務局長・姫井由美子参議院議員と事務局次長・長尾敬衆議院議員が顔を見せた。震災でストップしていたフランチャイズ議連の活動も8月から再開しており、長尾議員は「政局がどうなろうと、フランチャイズ問題に取り組む」と、フランチャイズ法制定に取り組む強い信念を述べた他、姫井議員は「次の大会では首相を連れてくる」とまで発言した。鉢呂吉雄前経済産業大臣辞任劇に始まりドタバタの船出となった野田佳彦首相を、姫井議員はコンビニ加盟店ユニオンの定期大会に連れてくることができるのか?

 福岡地裁の判決で、コンビニ本部による加盟店への不当な締め付けの実態はより明らかになった。こうした店を取り締まるフランチャイズ法の制定は、政界・法曹界の今後の大きなトピックとなりそうだ。
(文=角田裕育)

セブン-イレブンの真実―鈴木敏文帝国の闇

真っ暗。

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最終更新:2013/09/11 15:25
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