アメリカの闇がまざまざと 忘れられた棄民たちヒルビリーの神話
#映画 #町山智浩 #プレミアサイゾー
雪に隠れた岩山のように、正面からは見えてこない。でも、映画のスクリーンを通してズイズイッと見えてくる。超大国の真の姿をお届け。
『ウィンターズ・ボーン』
17歳の少女リーは、貧しい田舎町で、病気の母と幼い妹弟と暮らしていた。しかし、そんな中、自宅を保釈金の担保にしたまま失踪した父を見つけなければ、自宅が差し押さえられてしまうことが発覚。彼女は父を探し始めるのだが……。
監督/デブラ・グラニック 出演/ジェニファー・ローレンス、ジョン・ホークスほか 日本では、10月29日より公開
映画『ウィンターズ・ボーン』のヒロイン、リー・ドーリー(ジェニファー・ローレンス)は、ミズーリのオザーク山地に住む17歳の少女。父は覚せい剤の密造で逮捕され、母は精神を病んでいて何もできない。幼い弟と妹の面倒はリーが看るしかない。
ところが父親は保釈されてすぐに行方不明になった。父が出頭しないと保釈金のカタとして家が差し押さえられる。家族を抱えたリーは父を探すため、オザークの闇社会に入り込んでいく。
リーのような白人たちをヒルビリーと呼ぶ。ヒルビリーが住むのは、テネシーからミズーリ、アーカンソーにかけて東西に広がるオザーク山地と、東側のジョージアからヴァージニア、ニューヨークにかけて続くアパラチア山地の2カ所。ヒル(丘陵地)に住むビリー(スコットランド人)という名前通り、彼らの多くがスコットランド系。
祖先は最初、アイルランドに入植したが、19世紀に起こったじゃがいも飢饉で難民としてアメリカ南部に渡ってきた。だが、農耕可能な土地はすでにイギリス系に独占されていたので、小作人になるのを嫌った人々は山奥に入った。
山奥は斜面と岩だらけなので、麦畑や牧畜には適さない。代わりにトウモロコシを栽培し、豚や鶏を飼ったが、規模を拡大することはできなかった。今でもアパラチアやオザークはアメリカで最も貧しい地域だ。
その代わり、ヒルビリーたちはトウモロコシで酒を密造した。最近では風邪薬を煮沸して覚せい剤を精製するようになった。リーの父もまたそうだ。
その父も行方をくらまし、収入を失ったリーの家族は冬を越せるのか。リーは、銃でリスを狩って、それでシチューを作って弟たちに食べさせる。リーを演じるジェニファー・ローレンスは、実際にリスをナイフでさばいた。しかしながら、この21世紀のアメリカで、リスを食べて暮らす白人がいるとは!
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