フィールドは世界! 劇場、観客すべての概念を覆すにぎやか集団・快快って!?
#インタビュー #演劇
ダンスをしたり、歌を歌ったり、パーティーを開いたりお化け屋敷をやったり……、快快(ふぁいふぁい)のステージはとにかく多幸感にあふれている。代表作となる『SHIBAHAMA』では、古典落語の「芝浜」をベースに、酒好きな夫と愛情深い妻の人情噺を、新たな解釈で刷新。巨大なスクリーンやガジェットを駆使し、観客を巻き込んだライヴ感あふれる試みで見事なエンターテインメントに仕立て、高い評価を得た。彼らのエンターテインメントは、「踊るあほうに見るあほう同じあほなら踊らにゃソンソン♪」とばかりに観客に迫ってくる。と書いていても、何をやっている集団なのか分からないだろう。快快リーダーの北川陽子さんに、快快とはいったいどんな集団なのか、そしてこれからどこへ向かっていくのか、話をうかがった。
──まずは快快の成り立ちについて教えてください。
北川陽子(以下、北川) メンバーはみんな美大時代の同級生で、私が「いいな」って思った人をピックアップしたんですよ。セレクトの基準は適当で、オーラがあって、見た目もかわいくて、一緒に遊んでいて楽しそうな人って感じで。そしたら十人くらい集まって、それが今でも続いているという感じです。
──メンバーを集めてどんなことをやりたいと思っていたんですか?
北川 最初は演劇ですね。今は恥ずかしくて絶対に人には見せられませんが、結構普通の演劇です(笑)。卒業してからのものは、がらっと変わりましたね。
──では、とりあえず劇団と呼べばいいでしょうか? 皆さん普段は何をされているんです
か?
北川 そうですね、劇団でいいですよ(笑)。エンターテインメント集団とよく言われますが、意外と真面目に作品を作ってます。メンバーの職業はみんなバラバラです。デザインをやっていたり、出版社に勤めていたり、料理人もいるし、何もしてない子もいますね。外国人もいます。彼女はもともとパパ・タラフマラの研究生で、いろんなヨーロッパの演劇も見た上でうちの芝居が面白かったと言ってくれて。で、そのときに私がちょうど外国人を芝居に出したかったんですよ。それで出演してもらったらすごくよくて、所属することになりました。
──公演やパフォーマンスをたくさんこなしていると思うんですが、その内容についてはどうやって決めていくんですか?
北川 テーマとスタイルは一貫したものはなくて……。メンバーがそのときいちばん盛り上がっていることをやるんです。それがテーマですね。例えば、震災後、メンバーのみんながものすごく愛に目覚めたんです。そんな感じでみんなの中で高ぶっている気持ちをそのまま公演に入れちゃうんです。ゴールデンウィークに行われた『SHIBAHAMA』の大阪公演では、思いっきり愛に目覚めていました。そんな感じでホットトピックをすごい早さでやるという感じですかね。だから、現代じゃなくて現在美術みたいなものですね。
──9月には『SHIBAHAMA』のヨーロッパ公演が行われました。 この芝居は快快の代表作ともいわれていますが、どのような内容なんですか?
北川 ストーリーとしては、落語の「芝浜」のストーリーを分解して3部構成にしました。1部は芝浜を音で再生するというもの。2部は私たちと芝浜の関係をフィールドワークを通して解釈するというもの。みんながそれぞれ街に出てしょうもないことをやってきて、それを実際の芝居に入れ込みました。3部には全部がまとまったひとつの流れもくみつつ、私たちの物語も入ってきます。落語の物語というか、落語という文化についてかなり考えたと思います。こんなに「芝浜」のことをよく考えて、演劇に落とし込むなんて私たちにしかできないんじゃないかと思っています。立川談志さんにもこの作品のDVDを手渡したんですが、見てくれているといいなあ。
──落語の「芝浜」をやりたいと思った経緯はなんだったんですか?
北川 みんなが知っているお話で、それを分解して芝居を作ろうという話があって。たまたま、「芝浜」でいいんじゃないっていう話になった。「お酒」と「財布」と「芝浜」が出てくるっていうのがすごいしっくりときたんです。
──快快は芝居を作り上げるのもみんなでやるということでしたが、脚本も結構変更されちゃうんですか?
北川 全然変えますね。面白いものは全部取り入れます。他人の意見万歳です。本当はよくないんでしょうけど、公演中も変えていきますね。「芝浜」では、1部と3部は同じで、2部のフィールドワークがその土地によって毎回変わるという構成なんですよ。ベルリン公演では、スペイン人の友達の家で女体盛りパーティーしたり、「FKK」というすべての快楽が味わえる、いわゆる風俗みたいなところに行ったり、他にも公演を見に来てもらわないと言えないようなことをたくさんしましたね。ほんっとに毎回フィールドワークがひどいんですよ(笑)。
──快快は、観客参加型の芝居をやったり、定型にとらわれないスタイルの作品が多いですが、芝居を作っていく上で心がけていることとか、これはやりたくないとかいうのはあるんですか?
北川 もちろん観客の人たちが見るだけの芝居もやるんですけど。そういうんじゃなくて、もっとプロレスみたいな感じでお客さんとやり合うような演劇をやってみたかったんですよね。また、芝居を作るスタイルにしても、脚本演出をする、ある才能のあるトップの人がいて、その人のツルの一声で動くという世界が、まあ、一般的じゃないですか。でも、私はそうではなくて、みんなで意見を出し合う「場作り」をしていくというか。劇団の名前を「快快」にしたとき、どこでも人に見せられるものができる集団にしたかったんです。街に溶け込むというか。演劇から離れていたとしても、公園でもクラブでも、どこでも呼ばれたら出ることを意識的にしていました。そういうムーブメント作りですね。東京を自分たちが生きやすい場所にしたかったんです。
それは、「見る、見られる」の関係をもっとフラットにしたかったということがありますね。パーティーをやってみたりとか、でもちょっとやりすぎた感はあるんですけどね(笑)。それが一段落したので、次の作品には集中してぎゅぎゅっと面白いのをやろうかなと思っています。と言いつつ、年末にSHIBAHAMAパーティーをやるつもりだし、ベルリンですごく仲良くなったスペイン人アーティストと「KIMOI(きもい)」というイベントをやろうと計画しているし、結局面白いことはやめられませんね。日本がこんな状況になって、メンバーの海外移住も増えてきました。私たちにはやることがあると思います。世界は広い! はばたけ快快です☆
(取材・文=上條桂子/撮影[快快]=加藤和也)
●ふぁいふぁい
2008年結成。メンバー10人+サポートメンバーによる東京のパフォーマンスチーム。ステージ、ダンスにとどまらず、常にたのしく新しい場を発信している。10年9月、代表作「My name is I LOVE YOU」がスイスの伝統あるZürcher Theater Spektakelにてアジア人初の最優秀賞、「Winners of the ZKB Patronage Prize 2010」を受賞。
公式サイト<http://faifai.tv/faifai-web/>
オリジナル。
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