125億ドルでモトローラを買ったGoogleアンドロイド陣営の真の狙い
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8月中旬、世界を驚かせたグーグルによるモトローラ・モビリティ買収劇。その異例の買収額も相まって、さまざまな憶測が飛び交った。果たしてグーグルの真の目的はどこにあったのか?ヒートアップする携帯OS戦争の行方を探る。
グーグルが、アメリカの通信機器大手モトローラ・モビリティを125億ドルという驚異的な金額で買収することを発表した。日本円にして、なんと1兆円に達しようという価格である。
モトローラは、コンピュータ業界に古くから接している人にとっては非常になじんだ企業名だ。設立は第二次世界大戦以前。1970年代末から80年代にかけては、インテルに張り合って68000シリーズと呼ばれる32ビットの高性能CPUを開発し、マニアックな人気を誇った。シャープのX68000なんてパソコンもあったほどだ。このシリーズはMacintoshにも搭載され、後継でIBMなどと共同開発されたPowerPCも含めれば、モトローラはずっとアップルの良き友だったのだ。
携帯電話の世界で言えば、同社から80年代末に登場したマイクロタック、そして90年代半ばのスタータックという端末は超カッコよかった。90年代半ばはまだ携帯の黎明期で、日本製の機器にはろくなデザインのものがなかった時代である。スタータックの小ぶりでソリッドなデザインは、多くのマニアの心をわしづかみにし、ちょっとレトロな「M」のマークに皆憧れた。
モトローラ携帯最後のヒット作は、04年のレーザー。iPhoneを先取りしていたような超薄型で優れたデザインだったが、これ以降はヒット作を出すこともなく、停滞してしまう。シェア争いではノキア、サムスンに引き離され、さらにiPhoneやアンドロイドの登場でスマートフォン化が進み、携帯電話の市場が大きく様変わりをしていく中で、独り置いてけぼりを食らう状況に陥ってしまったのだった。
携帯電話機器が極度の不振に陥ったことで、モトローラはこの分野の分社化を決意する。そうして11年初頭、モトローラは携帯電話とテレビ関連の機器事業を担当するモトローラ・モビリティと、ネットワーク関連機器などを扱うモトローラ・ソリューションズに分社されたのだった。
今回グーグルが買収したのは、前者のモトローラ・モビリティだ。スマートフォン戦争にすっかり乗り遅れ、かなり落ち目になってしまった社員1万9000人の大企業を1兆円もの巨費を投じて買収したのは、いったいなぜだったのだろうか?
グーグルは、買収の理由は特許戦争の防衛だったことを認めている。
スマートフォンの開発は特許のかたまりで、何か新しい機能を実装しようとすると必ずほかの企業の特許に抵触することになる。他社から提訴されればたいへんな訴訟費用がかかってしまうため、自社の持つ特許と「無料で特許を認め合う」というようなことを行って、特許訴訟を回避する。これがクロスライセンス契約と呼ばれるものだ。
ところが携帯電話OS「アンドロイド」を普及させようとしているグーグルは、携帯電話市場ではまったくの新参者。クロスライセンス契約を結ぼうにも、交換できる特許をほとんど持っていない。そしてこれをいいことに対立陣営は、アンドロイドの機器メーカーに特許訴訟を仕掛けてくるようになった。このままでは訴訟費用に負けてアンドロイド陣営は崩壊し、市場も収縮しかねない。そういう状況の中でグーグルは、大枚をはたいてモトローラを買収したのだ。なにしろ携帯電話市場の古株であるモトローラは、約1万7000件にも及ぶ携帯電話関連の特許を所有しているから。
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