大手新聞社の「増税礼賛」は、財務省の”接待””洗脳”の賜物!?
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「経産A:(略)財務省は1円も使わずに復興増税【編註:東日本大震災の復興財源として、所得税、法人税、消費税などの臨時増税を政府は検討中】の世論を作った。主要メディアに税務調査をかけまくって黙らせたわけです。読売が丹呉泰健・前財務次官を社外監査役に迎えたことも”偶然”のはずがない。メディア工作というならそっちの方が有毒だと思う」
「週刊ポスト」(小学館/8月5日号)に掲載された「覆面官僚座談会」でのこの発言が、税務調査の際は前面に立って国税局への対応を行う、企業の財務担当者たちの一部で話題になっている。
彼らの間には、「財務省や国税庁に批判的な言動をする経営者や個人がいると、各地区の国税局が急にその企業や親族などに税務調査に入り、嫌がらせをする」というウワサがあるらしい。そこに、新聞が「復興増税反対」の論陣を張らないよう、財務省が自省の外局である国税庁の税務調査権を使って新聞社を脅しているという、もし事実であればウワサを裏付けるような記事が出た。
発言者は現役の経産官僚。復興増税論議が起こった3月以降、実際に税務調査が行われたという事実は確認できなかったが、2009年には朝日新聞と読売新聞に東京国税局による税務調査が入り、所得隠しが発覚。朝日は約1億3,800万円、読売は約9,800万円の追徴課税を納付した。
読売は、「取材費として経費計上した一部について、社員同士の飲食費が含まれていることが税務調査で判明し、交際費と認定された」と釈明しているが、後出の全国紙新聞記者OBのB氏によると、「在職中に税務調査が入った際は、カラ出張や次長クラスの領収証改ざんまで発覚した」とのことであり、新聞社側にも調査を避けたいやましい事情があるようだが……。このような税務調査を利用した圧力は、実際にあるのだろうか?
まずは、各紙の復興増税への姿勢について確認しようと、大手全国紙5紙+東京新聞の社説を見てびっくり。明確に反対を表明しているのは、なんと産経新聞1紙のみである。
読売新聞に至っては、「新政権は、(略)消費税率の引き上げに向けた、具体的な道筋を早急に示してほしい」(9月4日朝刊社説)とまで書いている。まさか本当に圧力が……。
さっそく同省からの”天下り(?)”の件とあわせて、読売新聞に聞いてみたところ、「一体どのような意図でそのようなご質問をされているのか、まったく理解できません!」と、一蹴。「税務調査が恐いから論調を変えた」とは、万が一にも認めることはないだろう。
ということで、経済官庁担当の経験が長い、新聞記者OBのA氏に話を聞いたところ、「同省にとってみれば、新聞に増税賛成の記事を書かせるのは、赤子の手をひねるくらい簡単です。国税庁の力を借りる必要などありません」との答えが返ってきた。しかし、その赤子の手をひねるくらい簡単という手法を探ってみると、そこには、あっぱれと言わざるを得ない財務省流”情報活用術”の実態が見えてきたのだ。
■「調査部」の膨大なデータが、有利な論調を作る
まずこのA氏によると、同省では営業マン顔負けの”接待”活動が行われているという。
歴代総理との東京ドーム観戦だとか。
「同省は、マスコミの中でも特に大手新聞社との懇親には、『ここまでするのか』と思えるほど、日々勤しんでいます。まず、財研(財政研究会)と呼ばれる財務省記者クラブのリーダーであるキャップ、社説を執筆する論説委員、部長クラスと、主に昼間勉強会と称する会合を定期的に開き、財政や税制に関するレクチャーを行います。もちろん内容は、同省の方向性に沿うものばかり。夜は、同省幹部が各社の社長や役員と懇親会を開き、飲めや歌えやとやるわけです。天下の同省幹部に誘われれば、そりゃぁみんな悪い気はしないですよね。そこに役員たちは、自分のいいところを部下に見せたいから、現場の記者を同席させる。記者もしょせんはサラリーマンなので、『あっ、うちの役員は財務省幹部とこんなに仲がいいのか』と刷り込まれれば、自ずとペンの方向も決まってくる」
こうして、族議員ならぬ族記者が生まれるとともに、結果的に新聞社は、上も下も無意識のうちに、同省寄りの考えをするようになってしまうというのだ。
このような”接待”活動は、1990年代後半に「ノーパンしゃぶしゃぶ」という流行語を生んだ「大蔵スキャンダル」により、マスコミがこぞって旧大蔵省をバッシングした以後から始まったという。
「当時危機感を持った旧大蔵省は、さすがに何か手を打たねばと思って始めたのでしょう。10年以上たった今、この”接待”活動は、予想以上の効果を上げたといえるでしょう」(A氏)
それにしても、いくら”接待”活動の影響とは言え、それが原因で、ほぼすべての全国紙が歩調を合わせて、復興増税容認のスタンスに立つなどということがあるのか? 何か他にも圧力があるのでは? 別の全国紙記者OBであるB氏によると、まるでCIAかのような、同省による情報活動が行われているという。
「圧力があるとするなら、圧倒的な情報量を利用した、目に見えない力でしょうか。税制の企画、立案を担当する主税局の中に、『調査部』という部署があります。初めて同省を担当したころは、『一体何をする部署だ?』と思っていましたが、まさにこの調査部が、同省に有利な論調を作る上で、大きな役割を担っていたのです。調査部の表向きの業務は、税制の企画や立案のために必要な情報を、国内や海外から収集し分析することです。しかし、それ以上に重要な裏の役割は、一言で言うと、その収集した情報を加工し、同省が望む政策に都合のよいデータに仕上げること」
そしてその情報収集のため、財務省という組織全体がフルに活用されていると、B氏は指摘する。
「同省本省には約1万5,000人の職員が働き、日本の税制、財政、各官公庁の予算を一手に管轄しています。また、外局の国税庁では約5万6,000人の職員が、全国津々浦々、中小企業から大企業、アンダーグラウンドに至るまで、税務調査を通じて日々情報収集に努めています。調査部は、これらの同省しか知り得ない膨大な情報をベースに、同省が推し進めたい政策の根拠となるデータをつくり、勉強会などを通じて記者たちに流すのです。内容があまりに完璧なため、記者たちは鵜呑みにしてしまいます」
しかし、同省から提供されるデータだけに頼らず、民間のエコノミストや学者などへもきちんと取材していれば、同省とは反対の論調になることもあるのでは?
「はっきり言って、エコノミストや学者の話など、同省のレクチャーに比べると説得力に欠けます。でもよく考えれば、そりゃそうですよね。同省のレクチャーがベースとする膨大かつ詳細なデータや情報は、同省にしか手に入らないものばかりですから。また、同省の批判をする学者に、それらを定期的に提供することで、彼らを手なずけたりもしていますよ」(B氏)
なんだか話を聞いていると、財務省と国税庁って、やろうとすれば何でもできてしまうように思えてくるのだが……。
「うーん、無敵と言ってもいいかもしれません。ある政治家は、取材した際に国税庁の批判をしていましたが、『税務調査をかけられると恐いから、絶対オレの名前を記事に出すな』と言っていました。また、『検察なんて、うちからの情報提供がなければ捜査なんてできないでしょう。検察官と一緒に飲んでも、”次は誰々を引っ張る!”とかいう話しか出ない、レベルの低いやつばっかりですよ』と、露骨に検察を見下す同庁職員もいます」(B氏)
『財務省が教える”最強の情報活用術”』なんてタイトルのビジネス書が出版されれば、今年の読書の秋一番のベストセラーになるかもしれない。
(文=編集部)
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