ファミコン実機でゲーム音楽を合奏!? 話題のバンド「NES BAND」マツケン先生を直撃!
#ネット #ファミコン
ここ数年、ゲーム音楽を”演奏してみた”系の動画がYouTubeやニコニコ動画に多数アップされ、人気を集めている。その大半は鍵盤などありふれた楽器で演奏されたものだが、ここ数日、”ファミコン本体”を楽器として使った演奏動画が話題になっている。演奏者の「NES BAND」は、昔遊んだあのファミコンをMIDIケーブルでキーボードにつなぎ、『ドラゴンクエストⅢ』や『スーパーマリオブラザーズ』などを4人で合奏しているのだ。
9月7日の時点で、「NES BAND」の動画<http://www.nicovideo.jp/watch/sm15398102>はニコニコ動画の”演奏してみた”カテゴリでデイリーランキングトップ3を独占。実は、「NES BAND」リーダーの松澤健さんは、2007~08年頃にJRの発車メロディをピアノで弾いた動画で、「発車メロディの人」「スタインウェイの人」として一躍人気を集め、発車メロディ楽譜集『鉄のバイエル』(ダイヤモンド社)を出版もしている。”演奏してみた動画”の中で最古と言われている松澤さんの発車メロディ動画は、その細部に至るまでの再現度が魅力。その原曲重視の姿勢は、「NES BAND」の演奏でも最も重視していることのひとつなのだそう。
例えば、上記の『ドラクエⅢ』演奏では、ファミコンを立ち上げて、「セーブデータが失われたときの曲」に始まり、「城」 ~「 フィールドに出るときのザッザッザというSE」 ~ 「フィールド」~「村に入るSE」~「村」~……といった具合に、細かい部分までゲームの音楽&SEをそのまま演奏している。村の音楽が演奏されている時には、同時に村の人との会話の”ピピピ ピピピピ ピピ”というSEや、「はい」「いいえ」のコマンド入力音、その後宿屋に泊まった音まで弾いているため、実際にファミコンで自分がプレーしているかの錯覚に陥る。
「NES BAND」リーダーの松澤さんは、なぜここまで原曲の再現にこだわるのだろうか。
松澤健さん(以下、松澤) ファミコンを始めとした昔のゲーム音楽は、同時に出せる音の数が限られているだけに、アレンジがすごく工夫されているんです。例えば、ファミコンが同時に出せるのは、基本的には3和音+1ノイズだけですが、『ドラクエⅢ』のエンディング「そして伝説へ」などは、そんな少ない音の数であれだけ感動的で”聴かせる”曲に仕上がっている。だから、僕は演奏するからには、その原曲の良さを大事にしたいと思っているんです。
――それをなぜ”4人”で合奏しようとしたのですか?
松澤 ゲーム音楽はそもそも打ち込み音楽として作曲されているので、人間が弾くことを前提に作られていないんですよ。なので、ひとりでピアノで原曲通りに再現しようとしても、指10本だと物理的に指の数が足りない曲が多いのです。そこで、ファミコン曲が3和音+1ノイズの4パートから成り立っていることに目をつけ、4人で1パートずつ弾いて、しかも本物のファミコンの音源を使って合奏しようと思い、「NES BAND」を立ち上げました。この、キーボードとファミコン本体をつなげて、4人で1パートで演奏するパフォーマンスは、僕の調べた限り、世界でまだ誰もやっていなかったので、1年以上前から実現したくて妄想していました(笑)。
――3和音+1ノイズの4パートとは、どういうことでしょうか?
松澤 まず、4パートというのは、1ch、2ch、3ch、4chと言うのですが、それぞれ、パルス波、三角波、ノイズ、という音色が出ます。「NES BAND」の動画だと、右から1ch、2ch、3ch、4chと並んでいて、右から2番目の赤いキーボードで2chのパートを弾いているのが僕ですね。具体的な役割分担は、簡単に言うとこのようになります。
1ch:パルス波……メロディ(歌で言うソプラノパート)
2ch:パルス波……ハーモニー(歌で言うアルトパート)
3ch:三角波………ベース(バンドで言うベース)
4ch:ノイズ………パーカッション(バンドで言うドラム)
唯一、ドレミの音階ではない4chは、「ドラクエ」シリーズの階段や、その他ゲームでの爆発音など、SE全般を担うことが多いパート。上記のような形態の曲が最も多いものの、曲によって役割が変わることもあり、例えば、『ドラクエⅢ』の村の曲だと、2chがベース、3chがメロディ、と立場が入れ替わります。
もっと専門的なことを言うと、1ch、2chはそれぞれ、波形の”Duty比”が異なる4種類の音色を出せます。曲の途中でDuty比を切り替えて音色を変えるのも、原曲通りに再現するために重要なポイント。動画をよく見ると、演奏中に、ときどき右の2人(1chと2ch)が、左手でキーボードの端の方を触ってDuty比を切り替えています。
***
「NES BAND」では、”ファミコン音楽の原曲の良さ”と、”ファミコン本体からしか出せない独特の音の良さ”の2点を伝えるのがコンセプトだと言う。ゆくゆくは、「ドラクエ」や「FF」シリーズはもちろん、『MOTHER』『スターソルジャー』などのファミコン世代なら間違いなくトキメく曲も披露していくとのことで、今後の活動にも期待大! 来たる日まで、押し入れからファミコンを引っ張り出して復習にいそしみたいところだ。
(取材・文=朝井麻由美)
●「NES BAND」 HP
<http://nesband.com/>
「NES BAND」の次回ライブは12月頃を予定している。詳細は今後HPにて発表される。ちなみに、”NES”とは、”Nintendo Entertainment System”の略で、海外で言うファミコンのこと。
●松澤健 HP
<http://dad.cside.com/km/nicotube.htm>
ファミコンしようぜ!
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事