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いよいよ議論が本格化

マンガ・アニメの未来はどうなる? またまた浮上した児童ポルノ法改定問題の行方

DSC_8070.jpg25日に開催された院内集会の登壇者。
(撮影=永山薫)

 民主党代表選は野田佳彦氏の勝利に終わり、9月初めに臨時国会で新首相に就任する見通しだ。補正予算や関連法案の審議など、震災対応の課題が山積する臨時国会の中でマンガ・アニメファンから動向が注目されているのが、再び持ち上がった児童ポルノ法改定をめぐる審議である。

 2009年6月、当時の与党だった自民・公明両党と民主党との間で一時は改定が合意された児童ポルノ法だが、この時の改定案は会期末の時間切れで廃案、直後の衆院選で規制に慎重な議員が多くを占める民主党が政権を得たことから、改定議論の再浮上はなかった。だが、今年6月になり、改定を求める与野党各党の議員らが改定と規制強化を求める院内集会を開催し、議論が再浮上してきたのだ。

 これを経て、8月には自公両党と民主党がそれぞれ改定案を提出し、国会への審議がスタート。8月中には議論はまとまらず、次期国会での継続審議となっている。

 2つの案の隔たりは大きい。自公両党は、児童ポルノの所持自体を禁止する「単純所持」規制の導入を柱に、マンガやアニメなどが児童ポルノが絡む犯罪の要因となっていることを重視し、政府による調査・研究も求めている。対して、民主案では「有償かつ反復の取得」を違法とした上で「専ら医学その他の学術研究の用に供するもの」に対する適用除外を明記するなど、犯罪となる基準を厳密にしようとする意思がみられる。また「この法律のいかなる規定も、架空のものを描写した漫画、アニメーション、コンピュータゲーム等を規制するものと解釈してはならない」と、マンガ・アニメへの規制を容認していない。

 臨時国会での審議入りを前に、8月25日には規制強化に反対する立場から表現の自由の問題取り上げてきた市民団体・コンテンツ文化研究会主催による「児童ポルノ禁止法改正を考える院内集会」が開催された。平日の10時30分開会という時間設定にもかかわらず、70名あまりの一般参加者を得て開催されたこの集会、発言した上智大学文学部新聞学科の田島泰彦教授は民主案を評価しながらも、問題点を指摘した。田島教授が問題点として指摘したのは、民主案が自公案よりましながら、09年の案よりも後退していることだ。09年の民主案では、誤解を招きやすい「児童ポルノ」という用語についても「児童性行為等姿態描写物」への変更を求めていた。さらに「性欲を興奮させ又は刺激するもの」「衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態」等の曖昧な定義の改定もなされていたが、今回の案では手がつけられていない。そのため、田島教授は「自公両党との修正協議が心配である」と不安の色を隠さない。

 続いて発言した、児童の人権保護に取り組む弁護士で、子どものためのシェルターを運営する「カリヨン子どもセンター」理事長の坪井節子氏は、単純所持の前にやるべきことがあると指摘。実際の性犯罪の被害の現場では、捜査機関が被害児童に対して「気持ちよかったか?」などと平気で聞くような現状があること、性的虐待を受けた子どもが生きていくために援助交際をし、さらに性的搾取されている構造があることなどを述べた。

 また、日本インターネットプロバイダー協会の立石聡明氏からは、インターネットでの自主規制の努力が報告された。

 さて、この集会は児童ポルノ法の「改悪」を防ぐ上で効果があったのか。

主催者であるコンテンツ文化研究会の代表・杉野直也氏は「議員に事務所関係者を合わせれば、2ケタは参加しているので、関心があることは間違いないでしょう」と話す。

 その上で改定は避けられないが最悪の状況を避けなければならないと杉野さんは語る。

「児童ポルノ法を、一度の改定で理想的なものにするのは困難です。現行法でも”3年に1度の見直し”が定められているわけですし、ちょっとずつ理想の方向に持って行きたいと考えています」

 多くの人が動向を見守る児童ポルノ法改定の行方だが、実際にできることは少ない。

「規制に慎重な議員の方々は、既に意思表明をしてくれているわけだから、今さらメールや手紙を送っても効果は薄いと思います。できることがあるとすれば、集会の際に坪井さんも話していたように、対策の遅れている実際に性虐待の被害にあっている児童の保護などの問題に(寄付をするなりの行動で)眼を向けることではないでしょうか」

 昨年、「非実在青少年」の言葉が象徴となった東京都青少年健全育成条例改定問題では、議員へのメールや手紙は非常に効果があった。ところが、児童ポルノ法改定問題では、事情が違うことは明らかだ。お手軽な方法だけでは、問題は解決できない。
(文=昼間たかし)

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最終更新:2013/09/11 18:01
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