火葬されてもやっぱり産業廃棄物! 法なきペット葬祭業界の光と影
#ペット #プレミアサイゾー
──90年代のペットブーム以降、ペット業界にはびこる闇組織や暴力団のニュースは絶えない。そんな中、業者が増え続けるペット葬儀に関しても、トラブルが頻発しているようだ。法規制のない同業界に参入するヤクザの荒らしや、焼き芋屋台感覚で営業する移動火葬車の実態を、改めて検証してみたい。
本ペットセレモ」の敷地内に設置された合同墓地。
キレイに掃除され、花も生け変えられていた。
2010年3月、埼玉県飯能市の正丸峠に大量の犬や猫の死骸が捨てられているのが発見された。廃棄物処理法違反(不法投棄)容疑で逮捕、起訴されたのは、「花園ペット祭典」を経営する阿部忍被告。飼い主から火葬するといって預かった遺体の一部を、そのまま山中に捨てていたという。被害者の会の遺骨回収にボランティアとして参加し、裁判を傍聴した男性A氏はこう証言する。
「阿部被告は自前で火葬炉を持っていなかったので、近所の葬祭業者に頼んでいたそうです。一体ずつ火葬するとコストがかかるので、何体かまとめて焼いてもらい、その遺骨を適当にわけて、飼い犬や猫のものと見せかけて飼い主に渡していた。そうすればすべてを焼く必要がなくなるので、余った分を山中に捨てていたようですね」
また、飼い主からペットの死体の”処分”を依頼される場合もあり、それらも火葬せずに山中に投棄していたのだという。阿部被告が立件されたのは14体の死骸投棄についてだが、A氏によれば、実際に山中に投棄されたのは「自分が回収に参加した時だけで200個の頭蓋骨があり、すべて合わせると500体」にも上るそうだ。
昨今、このような飼い主の心情を踏みにじるペット葬祭業者のトラブルが頻発している。ホームページの料金表を見てペットの火葬を依頼した都内在住のある女性は、火葬が始まった後、オプション料金などと称して、予定費用の10倍近い30万円余りの代金を業者から請求された。ほかにも消費者庁には、「火葬した遺骨を引き取ったところ、中に犬歯が6本(犬の犬歯は4本)入っていた」「ほかの犬の首輪の金属部分が含まれていた」など、勝手な合同火葬や遺骨の入れ替えと思われるトラブルについての相談が寄せられている。さらに、東京都板橋区では、ペット葬祭場の建設反対運動が起こり、裁判所が火葬炉の使用禁止命令を下すなどの例もあった。
こうしたトラブルが後を絶たないのはなぜか。その一因は、ペット葬祭業者の急激な増加にあるようだ。マンションやアパート住まいで埋葬する場所がない場合や、ペットの家族化などで心情的にそのまま庭に埋められない人が増え、同業界の需要は一気に増えた。「全国ペット霊園協会」の伊東正和氏によれば、「ペットの葬祭業者は20年ほど前から増え始め、この10年で急激に増加しました。現在、全国の業者数はおよそ800社、うち、400~500社は移動火葬車【編註:移動しながらペット火葬をするための、火葬炉を積んだ車のこと】のみの業者といわれている」そうだ。
しかし、全国ペット霊園協会を設立しても、自社で火葬炉を持ち、同協会に加盟しているのは70社余り。250億円規模ともいわれる巨大市場を持つ同業界だが(『ペット葬儀・霊園市場の現状と将来展望』/09年、株式会社JPRより)、実は、冒頭の事件のような遺体の不法投棄などを起こさない限り、悪徳な運営を取り締まる法律はなく、監督官庁も存在しないのだという(当特集【3】参照)。とすれば、申請や審査などの手間がかからず、新規参入もしやすい。ところが、「この新規参入の容易さこそ、悪徳業者を増やす要因となっている」と伊東氏は指摘する。
「はっきり言って、我々のように真面目にやったら、ビジネスとして成り立たせるのは難しい業界です。火葬炉を作るだけで500~1000万円。更地から始めると、土地代に加え、事務所の建物や墓、供養塔の建設など、初期費用が億単位でかかることもある。しかもペット葬祭は人間の場合と違い、火葬から葬儀、埋葬、遺族のケアまですべてやるため、人件費もかかります。それで、1回の葬儀費用は全国平均で3万円前後くらい。うちの会社でも、動物病院などからのご紹介を受けて、ひと月せいぜい180~190件の葬儀です。参入したもののあまり儲からないため、あくどいやり方に走る業者も中にはいるみたいですね」(同)
とはいえ、飯能市の事件のように、いくらでも利ざやを稼ぐ方法があるのも事実。そもそも、「葬祭」という、もともとあまり好まれない業種であることから、90年代にはバブル崩壊で土地の使い道に困った反社会勢力の参入が増え、これがトラブルの増加を助長しているという。
「確かに、ペットショップやブリーダー、人間の葬儀業者は儲かっていますから、簡単に参入できるペット葬祭業にそういった人たちが目をつけてもおかしくはありません」(同)
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