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今回もヤバいやつらが勢ぞろい!

拳の交換が不良の人生を変える!? 『THE OUTSIDER第18戦』血まみれ人間交差点

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 地下格闘技界の重鎮が、いよいよアウトサイダーに殴り込み!──リングス・前田日明主催の不良系アマチュア格闘技イベント『THE OUTSIDER(アウトサイダー)第18戦』が14日、東京・ディファ有明で開催された。

 今回の目玉選手は、全国の地下格闘技大会を転々と渡り歩き、この2年余りで50戦ものケンカファイトを繰り広げてきた前田島純だ。人生の三分の一を獄中で過ごし、”地下”では勝率8割を誇るこの男。果たして”地上”の檜舞台で、栄光をつかむことはできたのか?

 注目の前田島に密着取材するとともに、会場を沸かせた他のケンカ屋たちにもインタビューを試みた。

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●”漢塾代表 千葉の不動明王”
 前田島純(30歳・千葉・初出場)

 試合前、駐車場にいた前田島に話を聞いた。射るような目つき、低くて無愛想なシャガレ声、背中に彫られた不動明王。コワモテだらけの会場の中でも、この威圧感は別格だ。

──KRUNCH、強者、喧王など、これまでさまざまな地下格闘技の大会で前田島選手の試合を見ました。一体どれだけの数の団体に参戦しているのでしょう?

「10以上の団体に出てますね。北海道から九州まで出てるのは、たぶんオレだけだと思います」

──複数の団体を股にかけて戦う理由は?

「特に理由はないっす。オファーがあったら出るだけです」

──相当な試合数をこなしているのでは?

「この2年ちょいで、50試合ぐらいやってますね」

──僕が見る限りいつも勝っていますが、負けたことは?

「ありますよ。10回負けて1回引き分けたから、勝率は約8割ですね」

──地下格闘技の世界で戦い続ける理由を教えてください。

「始めた理由はテキトーなんですよ。誘われたから、最初は軽い気持ちで出ただけ。でもやってくうちにみんなが応援してくれるようになって、いつの間にか漢塾っていう道場の代表までやらせてもらえるようになった。だから、簡単にやめるわけにはいかない。あとオレが先生と崇めてる将軍って選手が、1コ上でまだやってるんですよ。その人がやめるまでは続けていこうかなと」

──今回アウトサイダーに参戦しようと思った理由は?

「最近どこからもオファーがなかったのと、地下格闘技に出てた仲間がアウトサイダーに出て負けたりしてたんで、名誉挽回じゃないですけど、オレが敵討ちしたいと思って」

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──その仲間とは、誰のことでしょう?

「漢塾の桜井貴大とか、将軍選手のことです」

──本日対戦する比夏瑠選手は、第6回大会でMVPを取っている若きストライカーですが。

「年齢は若いけど、アウトサイダーの中ではベテランですね。ま、大丈夫でしょう。似たようなタイプとの試合は経験したことあると思います」

──生い立ちを聞かせてください。

「生まれは沖縄で、小1のときに今の地元の行徳(千葉県市川市)に来て。そっから少年院3回入って、刑務所2回入って……」

──どんな悪事を働いたのでしょう?

「強盗とか、オヤジ狩りとか、監禁とか。通算すると10年ぐらい入ってましたね。自分、組織に所属してたんですけど、刑務所から出て来たら、組がなくなってました」

──ケンカは昔から強かった?

「親父がめちゃくちゃ怖かったんで、自分の身を守るためにも強くなるしかなかった。ちょっとでも中途半端なことしたらボコボコにされるんで……。ガキのころは地元の暴走族の特攻隊長をやっていたので、ストリートファイトはしょっちゅうでした」

──刑務所の中では?

「することないから、鍛えてました。毎日、腕立て腹筋500回ずつとか」

──失礼ですが、今は更生されてますか?

「昔に比べたら丸くなりましたね。ただ、酒とたばこはやめてません。酒ばっか飲んでると下痢になるじゃないですか。それで体重を調整してる感じです(笑)」

──現在30歳。体力の方は?

「落ちてるかもしれないけど、それなりに場数を踏んでるんで、要領で戦えますね」

 試合はまさに、前田島の「場数」が物を言った感じであった。比夏瑠の勢いに押し込まれる場面がありつつも、ここぞというチャンスにラッシュを仕掛けてダウンを奪い、3-0で判定勝利。

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 試合後の前田島に喫煙所で話を聞く。

──ナイスファイトでした。

「どうも。たばこあります? 1本ください。いやー、でも久しぶりにあんなに食らいましたね。一瞬、”こりゃヤバい、負けるかも”って思いました。アウトサイダー、ちょっとナメてました」

──比夏瑠選手の印象を。

「パンチが速いし、強いですね。痛いっす……(と言って、腫れ上がった目尻に氷を当てる)。オレ、こんなにボコボコになったの初めてかも。蹴り過ぎて足も超いてーし……」

──とはいえ、勝ちは勝ちです。

「こういうのは最初が肝心なんでね。仲間のためにもぜってえ負けらんねえ、という気持ちで踏ん張りましたよ。オレ、気持ちだけは一流のつもりなんで」

 ”地下格”の猛者が、地上でつかんだ傷だらけの1勝。「今日はいい体験しました」と言って、うまそうに煙を吐き出した。

maedajima04.jpg前田島にサイゾー賞を贈呈。

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●”三枝軍団 平成の次世代ケンカ戦闘機”
 島田勇(20歳・東京・出場2回目)

 駆け引き、小細工、一切なし! 勇という名にふさわしく、フックをビュンビュン振り回す勇ましいファイトで観客を沸かせたのが、この島田だ。まるで組織の幹部のような風貌だが、まだハタチというからビックリ。試合後に取材してさらに驚いたが、この男、話し方や考え方も実に大人びているのだ。

──ハタチとは思えない風格ですね。

「普通に生きてたらこうなりました」

──ケンカでは負け知らず?

「いや、上には上がいるんで、ボコボコにされたこともありますよ。それにオレ、昔から臆病なんで、自分からはケンカを売ったりしないんですよ。ただ、売られたケンカは必ず買いますね。神輿の会に入ってるから、お祭りで殴り合いになることが多かったです」

──アウトサイダーに出ようと思ったきっかけは?

「なんも練習しないまま、ノリで地下格闘技の『素手喧嘩(ステゴロ)』『victory』『喧嘩一武道会』に出たら、全部負けました。で、負けっ放しは悔しいから、ちょっと前から格闘技のジムで練習を始めて、アウトサイダーにチャレンジしてみたら2連勝。オレ、同世代や年下の人たちに伝えたいことがあるんですよ」

──何でしょう?

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「オレ、ホントにどうしようもない人間だったんですけど、格闘技始めてから仕事も続くようになったし、まじめにもなったし、こうして大舞台に立たせてもらえて、勝てるようにもなった。だから、同世代や年下でまだヤンチャやってる人たちに、『ちょっと努力すれば勝てるよ』ってことを伝えたい。格闘技に限らず、仕事でもなんでもそう。真面目に努力すれば、きっと報われる。ちょっと上から目線になっちゃいますけど、オレはそう思うんですよ。今日は技術じゃなく、そういう気持ちを伝えたかったから、ケンカスタイルで戦いました」

──気持ちは十分に伝わって来ましたよ。次に戦いたい相手はいますか?

「山田史博くんですね。以前、『素手喧嘩』って大会で戦ったときに、オレ、あっという間に負けちゃったんですよ。今日もマイクで言いましたけど、オレは一度戦った相手とはずっと良き関係でいたいんで、あの人のことを今でも好きで応援してるんですけど、やっぱ負けちゃった悔しさはあるんで、もう一度試してみたいな、と。別にケンカを売ってるわけじゃなくて、振り向いてくれるならお手合わせ願いたいと思ってます」

 このところ欠場続きの山田にラブコールを送った。

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●”埼玉白岡町の兄貴分 一蓮托生”
 佐藤美朗(30歳・埼玉・出場3回目)

 この佐藤も、格闘技で人生が変わったひとりだ。試合後の勝利者インタビューから。

──おめでとうございます。激しい打撃戦でしたね。

「大会前、対戦相手の須藤君と話す機会があったので、バチバチの殴り合いをしようって約束したんですよ。思い切り殴ったし殴られたけど、気持ちと気持ちでぶつかり合ったんで痛みは感じなかったですね」

──現在の佐藤さんは見た目もしゃべり方も好青年に見えますが、以前はどんな人だったんですか?

「あんまり言えないですが……。とりあえず、よく寝込みを襲ったり、刺したりしてました」

──それはいつまで……?

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「格闘技を始めて、そういうヤンチャをやめました」

──格闘技を始めたのはいつですか?

「去年の9月です(笑)。後輩の齋藤龍正がやってるのを見て、格好いいと思ったし、自分もああいう場で更生して輝けたらいいんじゃないかと思って」

──格闘技を始めるだけで、そんなに人って変わるものですか?

「変わりますね。自分が井の中の蛙だってことがよく分かる。表の社会を見れば、ちっちゃい街でいきがっててもしょうがないって思えてきます。だったらもっと大きな場所で合法的にケンカファイトして有名になりたいし、そうなればこれまで突っ張ってきた意味があるというか、これまで僕についてきてくれた友だちや後輩にも多少は恩返しができるかな、と」

 アウトサイダーによって更生した若者は、思いのほか多いようだ。

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《番外編》
●”元・暴走族『陽炎』第十三代目総長”
 大倉利明(32歳・愛知)

 客席にいた大倉利明選手に「先月入れたばかり」という顔面タトゥーについて話を聞いた。

──痛くなかったですか?

「思ったより痛くなくて。電気彫りで2~3時間程度で終わっちゃいました」

──マイク・タイソンと同じ絵柄ですか?

「一緒ですね。タイソンが大好きで」

──それにしても、顔に彫るのは一大決心だったのでは?

「実は前から顔に入れたかったんだけど、いろいろ考えた結果、やめてたんですよ。ところが先日、僕に不良のイロハを教えてくれた地元の大先輩が、『今はなかなか会う機会がないけど、離れていても思いは一緒だ』と言って、僕が入れようと思ってた刺青を先に入れちゃったんですよ(笑)。というわけで、その思いを裏切るわけにはいかないから、僕も入れることにしました」

──親御さんには相談を?

「一応、入れる前に顔だけ見せに行って、『入れるから』って報告しました。別に反対も賛成もされなかったですね(笑)」

──街での注目度は?

「相当上がりますね。道が空くか、声かけられるか、どっちかです。こないだモンゴルに行ったんですけど、そこではスター扱いでした(笑)」

──もう悪いことはできないですね。

「覆面するしかないですね(笑)」

●”第4回大会MVP リアル神代ユウ”
 佐野哲也(29歳・静岡・出場13回目)

 更生するもへったくれもない。生まれてこのかたずっと優等生なのが、この佐野だ。しかし、腕っぷしの強さと向こうっ気の強さは不良にも決して負けていない。この日は65-70kg級ランキングトーナメントの準決勝と決勝に連勝し、宿敵・吉永啓之輔が保持する同級タイトルへの挑戦権を獲得。

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 佐野は客席にいた吉永をリング上に呼び出し、激しい睨み合いを展開した。

──リング上で舌戦を繰り広げていましたが、どんなやりとりがあったのでしょう?

「『今すぐここでやってやるよ』って言われたから、『やだ。疲れたから』って言い返しました」

──最後、吉永選手に「カス」と言われてましたが、返す言葉は?

「ないっ!! だって今日の試合、実際つまんなかったでしょ? 勝つのを最優先させたから」

──内容はなんであれ、勝ってコマを進めたのはすごい。

「だって、僕が勝ったほうが面白いでしょ? (吉永戦を)見たかったでしょ?」

 確かに見たい、佐野VS吉永の因縁バトル。過去の対戦成績は1勝1敗で互角。11月13日(日)に横浜文化体育館で行われる次回アウトサイダーで、両者はいよいよ雌雄を決することになった!
(取材・文=岡林敬太)

ジ・アウトサイダー 2011 vol.1 完全版

怒らせたら大変です。

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最終更新:2013/09/11 18:18
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