今度のジェイソン・ステイサムは暗殺請負人!『メカニック』
#映画
公式HP<http://mechanic-movie.jp/>
今週は、夏向きの痛快なアクションと、バディ(仲間)の存在のありがたさや時に起こる困難を描く新作映画2本を紹介したい。
ジェイソン・ステイサムが凄腕の暗殺請負人に扮する『メカニック』(公開中、R15+指定)は、1972年にチャールズ・ブロンソン主演で公開された同名アクション・スリラーのリメイク版。闇組織から殺人指令を受け、どんなに厳重に警護された標的も事故死に見せかけて暗殺するビショップ(ステイサム)。だが、新たに指示された殺しの相手は、親友で恩人のマッケンナ(ドナルド・サザーランド)だった。組織への抗議は受け入れられず、仕方なく任務を遂行するビショップ。感情を抑えて次の仕事に移ろうとする彼のもとに、マッケンナの息子スティーブ(ベン・フォスター)が、父の死の真相を知らないまま、暗殺請負人の弟子にしてくれと志願してくる……。
監督のサイモン・ウェストは、『コン・エアー』(97)『トゥームレイダー』(01)など、記憶に残るアクション大作を手がけてきた実力派。基本ストーリーにキャラクター描写、ファッションなどでオリジナルの趣をスタイリッシュに再現しつつ、現代的なアクションとスピーディーな展開で新たな魅力を加えることに成功した。出世作の『トランスポーター』シリーズをはじめ、これまで一匹狼的な役どころの多かったステイサムだが、中盤以降ではベン・フォスターとのバディ・ムービー風の掛け合いにも挑戦。精密機械のように緻密な暗殺計画を、卓越した身体能力で正確かつ大胆に遂行する姿から漂う「男の美学」と、仲間同士で交わされる繊細な感情の揺らぎからにじむ「人間味」もほどよくミックスされて、作品全体の味わいを深めている。
もう1本は、ウィル・フェレルとマーク・ウォールバーグがサエない”脇役”刑事コンビに扮したアクション・コメディー『アザー・ガイズ 俺たち踊るハイパー刑事!』(8月20日公開)。ニューヨーク市警でデスクワークに精を出すアレン(フェレル)と、過去の失敗を引きずっているテリー(ウォールバーグ)。同じ署では、捜査のたびに派手なカーチェイスと銃撃戦を繰り広げ、犯人を逮捕する黒人刑事コンビがヒーローで、彼らに憧れるアレンとテリーは”その他の連中”だった。だが、ある出来事をきっかけに、2人は難事件を自ら解決しようと乗り出す……。
04年の『俺たちニュースキャスター』以来、監督アダム・マッケイ、主演ウィル・フェレルのコンビでおバカな男どもを描く一連のコメディー映画は、内容的には直接の関連性はないものの日本では「俺たち○○」とシリーズ風の邦題が付けられ、コアなファンたちに愛されてきた。フェレルのキャラを活かした笑い、映画マニア受けするパロディー、ユーモアで包んだ社会風刺がこれらの作品に共通する特徴で、本作は刑事もののバディ・ムービーを徹底的にパロっている点が最大の爆笑ポイント。特に、サミュエル・L・ジャクソンとドウェイン・ジョンソン扮するヒーロー刑事コンビが、序盤で早々に映画から”退場”するシーンは、アクション映画のばかばかしいほどに過剰な演出に対する皮肉も込められ、笑い死にしそうになるので要注意。ほかにも、理不尽なほど美女にモテまくるフェレルや、相棒の妻(エバ・メンデス)にやたらと執着するウォールバーグなど、小ネタでもしっかり笑いを取る。
一方で、本作の裏テーマは、サブプライムローン問題、リーマンショックなどに代表される米国発の金融危機に対する批判だ。主人公コンビが挑む敵役に金融投資家を配した点もそうだが、インフォグラフィックスを駆使して金融業界の不正を視覚化したエンドロールまで、笑いというオブラートに包んだ製作陣の怒りのメッセージもしっかり受け止めていただきたい。
(文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉)
「メカニック(2011)」作品情報
<http://eiga.com/movie/55998/>
「アザー・ガイズ 俺たち踊るハイパー刑事!」作品情報
<http://eiga.com/movie/55287/>
こっちもすごい。
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