陰鬱すぎる『不思議の国のアリス』その暗さがクセになりそう!!
#映画
──節電で大変そうな今年の夏に、暑さを忘れられるDVDを、お化けメイクの小明ちゃんほか、本誌になじみの深いお歴々が、厳選レビュー!!
■『アリス』
【小明の『アリス』レビュー】
多くの人が思い浮かべる「アリス」って、ディズニーアニメの『ふしぎの国のアリス』なんじゃないでしょうか。だから、この『アリス』を観たときは、ギャップにたいそう驚きましたよ。
ストーリーはルイス・キャロルの原作に沿ってるんですけど、世界観がひどく陰気で悪趣味なんです。もうね、「遅刻だー!」って慌ててる白ウサギとアリスの関係性が最悪。アリスはしょっちゅう白ウサギの邪魔をしてるし、白ウサギはボートを漕ぐオールでアリスをバンバンぶっ叩いたり、あるいはお互いにレンガをぶつけ合ったり。この白ウサギは、もともとはアリスの部屋にあった剥製なんですけど、腹が裂けてるんです。そこから詰め物のおがくずがボロボロこぼれてくるから、安全ピンで留めたりして。まあグロい。でもね、そういう不気味さ、醜悪さが、逆にクセになりそう。
ほかの登場人物っていうか人形たちも、みんなグロテスクで意地悪。出てくる食べ物も全部まずそう。「終わらないお茶会」とか、すごく楽しいシーンなはずなのに、「おまえの席なんかねーから!」みたいな陰湿なイジメが延々続くような感じ。アリスもアリスで、まあカワイイ幼女ではあるんですけど、終始無表情で、パンツ丸出しで体育座りしてるシーンとかあっても、ぜんぜん萌えない(笑)。しかも体が縮むと、アリス自身も気持ち悪い人形になっちゃって。
冒頭のお姉さんとのピクニックシーンから、どうもアリスがかわいそうな子に描かれてるから、愛されてない子どもが頭の中で考えた、ひねくれたお話なのかな。愛された子どもだったら、きっとディズニーみたいにガーリーでドリーミーな世界に行けたんでしょうか……。
(構成/須藤輝)
(ヘア&メイク/梁取亜湖)
(写真/田中まこと)
【宣伝担当者おすすめポイント】
シュヴァンクマイエルの特徴のひとつである、細部まで作り込まれた小道具や人形がふんだんに登場する本作。今回のブルーレイ化で、それらの汚れやほつれた糸、動物の骨のディテール、今は亡き妻エヴァの絵のタッチなどが鮮明になり、まるで別の作品のような新たな感動があります。ぜひ、アート作品として繰り返しご鑑賞ください。
『アリス』
シュヴァンクマイエルが3年の歳月をかけて作り上げた、初の長編作品。1988年のベルリン映画祭後、翌年には日本でも公開された。実写と人形アニメーションを組み合わせ、ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』を源泉に、シュヴァンクマイエルのいかがわしくも悪趣味な妄想が噴出する。
発売/日本コロムビア 監督/ヤン・シュヴァンクマイエル 出演/クリスティーナ・コホウトヴァー
ブルーレイ版4935円、DVD版3990円(共に税込)にて8月24日に発売
小明(あかり)
1985年1月14日、栃木県生まれの千葉県育ち。エプロンアイドルとして華々しくデビューするも、今ではなぜかフリーのアイドルライターに。地デジ化にもついていけずにテレビはDVD専用なので、知らない間に映画通に。
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