【震災5カ月】先の見えない状態がさらに不安をあおる……宮城県石巻市現地レポ
#東日本大震災
東日本大震災発生から5カ月が経過する中、いまだ震災のつめ跡が深く残る宮城県石巻市。地震と津波によって、死者数は3,153人、行方不明者849人(8月11日現在/県発表)という甚大な被害を受けた。駅周辺には、石ノ森章太郎の「石ノ森萬画館」があり、「いしのまきマンガロード」として『仮面ライダー』『サイボーグ009』などのキャラクターの像が立ち並ぶ。だが、商店街にはいまだに手付かずの商店などが多数あり、街中にまだ津波で流されたヨットが放置されている。
駅付近の飲食店の男性店主にその理由を尋ねると、「手がついてない家や店は、家主がまだ消息不明だから。見つかってないと、行政もどうすることもできない。誰も手を出せない」と言う。壁がはがれかけ、”落下注意”と書かれた家もまだあるが、しばらくはまだこの状態が続くようだ。
店主が営む飲食店は、昨年12月に開店したばかりで、開店資金を支払い終わらないまま、3月11日に震災が発生。店主は「まだオープンしたばかりだし店をやるしかないから、4月18日から再開しました。最初はガスが来てなかったから、ホットプレートでたこ焼きを焼いて、カセットコンロでうどんを作って出していた。でも、店舗や事業所には今のところ震災の救援金などが出ないんですよ。仙台市や気仙沼市は知事権限だけど、石巻市は市長権限で状況が違う。市の対応も後手後手に回っている」と状況を語った。
駅周辺の片付けなどは進んでいるものの、夏休みに入り新たな問題が発生しているという。飲食店に来ていた客のひとりが語った。
「夏休みになって、ボランティアとも冷やかしとも言えない”バカチン”が増えた。手伝いに来てくれたのはいいけど、すぐに『疲れたから帰る』とか文句を言う。観光客も来てくれてお金落としてくれるならうれしいけど、『(被害が)一番ヤバイのどこっすか?』と聞かれたことがあって、そういう無神経な行動はやめてほしい」
交通機関も復旧したことから新たな騒動も起きているようだ。実は震災発生当初に、こんなトラブルもあったという。前出の店主は次のように続ける。
「震災後、被災地のマナーは良かったと報じられたけど、泥棒はかなりあった。ウチの店の片づけをしていたら強盗が来て、店員を強盗仲間と間違えたのか『何かいいのあったか?』と聞かれた。返事をしたら、一目散に逃げていったけど。もう当時は『北斗の拳』の世界みたいでしたよ。コンビニのATMから強盗した若者もいて、それは逮捕された。でも、そういうことは地震が起きた直後だったら言えなかった。直後にそれが報じられていたら、もっと泥棒が増えたかもしれないから」
今だから話せる当時の真相だ。だが、石巻の人々は長い将来を見据えて、やはり不安を抱いているという。地元の女性はこう心情を吐露する。
「みんな不安が増してきていると思います。地震が起きた当初は、がむしゃらに頑張るしかなかった。でも、事態が長期化して、これからどうなるのか分からないという先の見えない不安を抱えていますね」
長期化への不安、怒りをぶつけられないもどかしさ……。抱えきれない思いを胸にしながらも、石巻の商店街の人々は自ら立ち上がり、別の場所で仮店舗として営業を再開した商店も多い。ある飲食店は、現在は避難所に身を寄せながらも「ここで再建します」というメッセージを店頭に掲げていた。今なお、石巻市では2,600人を超える人々が避難所で暮らすなど、苦境とも言える状況は続いている。これからも日刊サイゾーでは、震災を風化させないように現地の最新情報を伝えていく。
まだ終わってはいないよ。
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