『マンガ嫌韓流』の作者・山野車輪がお台場の「嫌韓デモ」に首をかしげる理由とは
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「TV局の韓国おし無理。けーPOP、てめーの国でやれ」
俳優・高岡蒼甫のTwitterと、それに起因する事務所解雇を発端に、にわかに高まりを見せはじめている”嫌韓ブーム”。8月7日(日)には、2ちゃんねるやTwitterの呼び掛けで集まった数百人が「嫌韓流デモ」と称してフジテレビへ抗議の声を上げた。日章旗を持った元自衛隊員を名乗る男性は、「日本のテレビ局は韓国資本に乗っ取られている」と憤り、30代の子連れ主婦は「私の周りに韓流ファンなんていない」と、韓流ブームそのものを否定した。
ところで、「嫌韓」というフレーズはもともと、漫画家・山野車輪氏の代表作である『マンガ嫌韓流』(晋遊舎)から派生していることは明らかだ。同作が日韓問題を真正面から論じた問題作で、発行部数が累計100万部を超えたのは周知の通り。実は筆者はこの日、山野氏とお台場で同行しながらデモ現場を見学していた。当の『嫌韓流』作者である山野氏は今回の動きをどう見たのか。デモ終了後、新橋の居酒屋で山野氏に一連の騒動について聞いてみた。(聞き手/浮島さとし=フリーライター)
──おつかれさまでした。まずはデモのご感想を。
山野氏(以下、山野) 人数が多かったのに驚きました。道路の反対側から見た個人的な印象では、300人から500人くらいはいたように見えましたね。その後、ネットを見ると、2,000人くらいいたという情報もありましたし。主催者とすれば成功と言えるんじゃないでしょうか。
──ただ、Twitterを拝見する限り、山野さんは今回の騒動に懐疑的なようですが。
山野 まぁ、フジテレビが韓国のコンテンツを使うのは、安くてそこその数字が取れるという経営的な判断からだと理解してます。もし韓国コンテンツを排除したいのであれば、それに代わる、安くてそこそこの数字が取れるコンテンツの代案を出さないといけないと思うんですが、それが今回ないですよね。単にデモをするだけでは建設的ではないように思います。
──CP(コストパフォーマンス)を考えたら韓国モノを使うのも無理ないと。ただ、デモに参加した人たちの主張には、「フジテレビが韓国資本に株式を支配されているため、韓国の圧力で番組編成が行われている」というものもあるようなのですが。
山野 そういう事実があるかないかは、はたから見ても分からないんですよね。分からないことを「ある」と批判しても仕方ない。
──山野さん自身は、韓国からの圧力で番組編成が行われていると思いますか。
山野 僕は、あるかないかは分からないです。ただ、もし「ある」と批判するのなら、まずはそれを証明する必要があると思います。
──ひろゆき氏も指摘していますが、フジテレビの株式の外国人直接保有比率が、電波法に抵触する20%を大きく超えている(約30%)ことについては。
山野 それはそれで問題だと思いますが、それをもって「韓国からの圧力」の証明にはなり得ませんしね。繰り返しになりますが、関連性があるのなら証明する必要があるということです。
このあと警官は参加者たちから罵倒されることになる。
──山野さんも『マンガ嫌韓流』で韓国に批判的なことを書くためにかなりの調査をしているわけですよね。
山野 『マンガ嫌韓流』では、根拠が証明できない批判は書いていません。すべて立証できることを書いています。実は『マンガ嫌韓流』の記載内容について訴訟を起こされたこともあるのですが、結果的に高裁判決で完全勝利したのもそういうことからなんです。
──あの裁判では『マンガ嫌韓流』が公益性を目的に書かれたという点も認められました。
山野 判決文に「本件書籍の目的は、もっぱら公益を図ることにあったということができる」と記載されています。韓国批判そのものが目的でないということが、裁判所に認められたということです。
──批判意見の中身に戻るのですが、韓国政府が国策として日本にコンテンツを輸出していること自体を批判する声もあります。
山野 国策として海外にコンテンツを輸出することは悪いことではないと思いますよ。韓国の番組を使うかどうかは日本のテレビ局の問題で、それをもって韓国や韓国の番組を批判するのは違うんじゃないかと思いますよ。
──まさにそういう趣旨でデモに参加した人も多かったようです。主催者の一人も「人種差別的な行動は絶対にしないでほしい。偏向するフジテレビの襟を正すのが目的で、韓国を批判することが目的ではない」と現地で一所懸命説明していました。
山野 その考え方には賛成できます。日本の放送局の姿勢としていかがなものかという批判はアリでしょう。だからこそ、今回のデモを含め、高岡氏の発言から続くこの一連の問題には、韓国批判はもちろん、「嫌韓流」という表現も、使われるべきではないと思います。ネット上ではそういう表現をよく見掛けますからね。
──批判の中には「韓国のコンテンツは質が低い」というのもあります。
山野 それもどうかなぁと思います。高いのも低いのもあるでしょうけど、日本の番組と比較して、ものすごく劣っているのかと。私、テレビ持っていないので分かりませんけどね。
──その一方で、茂木健一郎さんのように「韓国コンテンツの増加を批判するのはグローバリズムに反する」という人もいますが。
山野 それもおかしいですよね。グローバルっていうのは別に韓国化することじゃないですから。いろんな国の文化、番組を取り入れるという動きがグローバル化であって、それが今進んでいるとはまったく思えませんから。むしろ、グローバリズムという言葉を悪用して、韓国コンテンツの増加を擁護する主張に見えますけどね。
──デモに肯定的な人の中には、『マンガ嫌韓流』作者の山野さんは無条件に味方だと思っている人も多いと思いますが、作者としては困惑しているというのが実感ですか。
山野 そうですね。あの作品で伝えていることは、日韓の間に横たわっているさまざまな問題を全部知った上で、認めるべきは認め、言うべきことはしっかり言って、その上で日韓友好を目指そうということなんですよ。その旨を、1巻の「まとめ」でちゃんと書いています。「嫌韓流」という言葉の意味を理解しておらず、単に韓国を非難するだけの意味で使っている人も見受けられるんですよね。それは作者としては非常に残念だと思ってます。逆に、「嫌韓流」の意味をちゃんと理解している人ほど、「日韓友好を目指す山野はけしからん」と、僕の考えを非難するんですけどね(笑)。
再読。
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