政界スキャンダルからカルーセル麻紀まで ”ワイド特集の元祖”「新潮」の底力
#雑誌 #出版 #元木昌彦 #週刊誌スクープ大賞
第1位
「ワイド 『大和なでしこ』漂流譚」(「週刊新潮」8月11・18日号)
第2位
「スクープレポート 東電マネーと朝日新聞」(「週刊現代」8月20・27日号)
第3位
「特別付録 春画の秘宝 四十八手」(「週刊ポスト」8月19日・26日号)
合併号も出揃い、各週刊誌が気合いを入れた企画が並んでいる。中でも第3位選びに苦労した。
候補作は「スクープ撮! 泥酔 TOKIO城島茂に『寄り添いお泊まりする美人OL」』(フライデー)、「AKB48窪田社長『野球賭博の常習者』だった!」(週刊文春)、「スクープ!菅直人『3・11後』を語る」(週刊朝日)、「独占スクープ公開 田畑智子 完全ヘア・ヌード」(週刊現代)、「特別付録 春画の秘宝 四十八手」(週刊ポスト)である。
「フライデー」はTOKIOのリーダー城島が7月下旬、西麻布、六本木と飲み歩き、途中で合流した美女とマンションに入る時にはフラフラの千鳥足だった、という顛末を写したものだ。エレベーターに乗り込む城島の後ろ姿が、いかにも「酔っぱらっちゃいました」感丸出しで、とてもいい。
AKB48スキャンダルは「文春」の独壇場。今回もAKB48の運営会社「AKS」の窪田康志社長が、野球賭博の常習者だったというスクープ。記事中には、胴元が仲介者を経由して窪田の注文を受けるのに使用した携帯電話の写真まで載っている。しかも、窪田が野球賭博で負けた金は数億円にものぼるそうだ。どうするAKB48?
「朝日」は菅直人首相の単独インタビュー108分と謳っているが、予想通り、内容に新味はない。最後に、「いつ辞任するんですか?」と聞かれ、「いずれ去る日が来るその時まで、言うことは言い、やるべきことはやりぬきますよ」と答えている。辞める気なんかまったくないことだけは、よ~く分かる。
「現代」のグラビア&袋とじは、かつてNHKの朝ドラ『私の青空』のヒロイン役も演じた田畑智子のヘア・ヌード。たしかに新鮮ではあるが、そそられるようなエロチシズムは感じられない。
これらの中では、今さらという気もするが、「ポスト」の「春画の秘宝」はやはり迫力もあり、わいせつ感も十分。袋とじをあけるとミニ画集が入っているというのもいいアイデアである。田中優子法政大学教授は、春画の女性たちは、ポルノに出てくる女性のように、視線をこちら(鑑賞者)に向けていないのは、男女どちらでも楽しめるものにしているからだと解説している。
憂きことばかり多き世の中に、幾ばくかの刺激を与えてくれたことを多として、これを3位に選んだ。
先週の「ポスト」も「朝日新聞と菅官邸の『不適切な関係』」をやっていたが、やや消化不良の内容だった。
今週の「現代」は、東電との関係に絞って朝日新聞を追及しているが、私も知らなかった事実関係が明かされていて、興味深く読んだ。
朝日新聞が70年代に原発容認へと路線を変更し、東電からの広告受け入れや東電からの接待、出張旅費肩代わりなどがあったということは、元朝日新聞経済部記者・志村嘉一郎著『東電帝国 その失敗の本質』(文春新書)に詳しい。
今回「現代」は、朝日新聞OBの井田敏夫が社長をしている「井田企画」が発行している「SOLA」という情報誌に注目する。
事実上東電のPR誌であるこの雑誌は、1989年8月に創刊されている季刊誌である。この雑誌は東電本店営業部が一括して買い上げ、各営業所に配布されている。
編集長に元「週刊朝日」副編集長の江森陽弘、看板の要人インタビューには元朝日新聞論説主幹の田中豊蔵、元朝日新聞論説委員の岡田幹治が環境問題にまつわる寄稿をしているという。
また「井田企画」の中に、91年6月に「地球こどもクラブ」という特定非営利活動法人が設立され、東電からも寄付を受けており、北海道電力、東北電力、四国電力、日本原燃も会員企業になっている。
先の元朝日新聞OBはもちろん、中江利忠元朝日新聞社長まで名を連ねている。
「現代」は、朝日新聞は反原発寄りだと見られているが、総論では原発推進に賛成してきたので、その社論をリードしてきたのは田中慎次郎に始まる「田中学校」だったと指摘する。
中でも岸田純之助は科学畑が長く、電力業界とは親密で、関電の広報誌「縁」の監修者にもなっているし、91歳のいまも「日本原子力文化振興財団」の監事を務めているという。
江森は、インタビューに答えて、こう話している。
「(中略)恥ずかしい話ですが、地震が起きてやっと気が付いたんです。これは東電が朝日新聞を巻き込んだ世論操作のための隠れ蓑だったのかもしれない、と。かかわっているメンバーを見れば、それは否定できないですよね。気付くのが遅かったんです」
朝日新聞を叩けば週刊誌が売れた時代があった。いまはそれほどではないと思うが、やはり新聞界の雄であることは間違いない。その朝日新聞に、東電が食指を動かした意図もよく分かる。
そうした東電マネーによって新聞の論調が動かされたのだとすれば、その罪は大きい。
東電との癒着構造は、原子力の父をいただく読売新聞も然りであろう。否、朝日新聞以上のスキャンダルが出てくると思うのだが、どこかやってくれないか。
今週のグランプリは「ワイド特集の元祖」新潮のワイド22本にする。まずは「なでしこジャパン」にちなんだ「大和なでしこ」漂流譚というタイトルがいい。
人選も内容も、他のワイドを圧倒している。
菅総理夫人・伸子が、息子の嫁の浮気を疑って興信所に調査を頼んだという仰天情報でワイドが始まる。
「今年3月、伸子さんに頼まれたという警察庁のキャリアOBがかつての同僚や後輩を頼り、興信所探しをしていました」とある。そもそもは、菅の古くからの支援者(後にこの男は元新聞記者であることが判明)が、彼女が別の男と街中で抱擁しているのを見たという情報を寄せたことから始まったらしい。
結局、この「嫌疑」は晴れたようだが、このことの報告書は警察庁にあるというである。
警察庁の考え方としては、もし中国や北朝鮮の情報機関に、国の権力者の弱点を入手されてしまったら、それを使って外交に利用するかもしれない。したがって、こうした総理の家族の不倫情報なども収集しているのだと、警察庁の初代国際部長・大貫啓行氏は話している。
だいぶ前になるが、橋本龍太郎総理(故人)と中国人美人通訳との「不倫」関係が話題になったことを思い出した。あのときは、中国人女性の出入国申請書の写しが、われわれ週刊誌の間にも出回ったことがあった。
この記事を読んで一番ドキッとしているのは、菅首相と伸子夫人ではないのか。警察関係に強い「新潮」でなくてはとれないネタである。
お次は、筒井信隆農水副大臣と一緒に生活する30歳下の女性との「艶聞」である。グラビアでも、二人連れだって仲良く食事する姿や、帰りに女性が積極的に筒井の腕に手を絡んで歩く姿、地下鉄のシートでも腕を絡めている写真を掲載している。
7月26日、彼の選挙区である新潟が記録的な豪雨に襲われていた夜も、彼女と一緒に天ぷら屋で食事を共にしていた。
その後、いったん彼女と別れた筒井は、「議員パス」を提示して駅構内へと入っていく。地元新潟へ帰ることにしたのか? だが、ほどなく筒井は駅から出てきて、件の女性とタクシーで都内のマンションへと消えて行く。
この日のことを、筒井副大臣は自らのブログに、「29日に地元入りするはずだったが電車不通のため断念」と書いているのだが、「新潮」によると、上越新幹線も長野新幹線もその夜は運行していたのである。
「新潮」の取材に、地元にいる妻は絶句。筒井は、彼女と腕を組んでいたことを聞かれ、目が悪くて段差があると転ぶから「世話」してもらっているのだと取り繕うが、地下鉄のシートでも腕を組んでいたではないかと聞かれると、慌てて「あ、そう? 必要はないんだよね。座っているときは、腕を組む必要性は」としどろもどろである。これで次の選挙はダメかもしれないな。
オウム真理教が裁判所から解散命令を受けて「アーレフ」と名称変更したとき、会長に祭り上げられ、テレビや新聞、雑誌で引っ張りだこだった村岡達子が脱会していた。その当時のことを話しているが、これが面白い。
やがて麻原の妻・三女と四女との勢力争いが激しくなり、四女を支持する村岡は本部から遠ざけられ、飼い殺し状態になり、離れていったという。
61歳になる彼女は、酒もたしなむようになった。だが、麻原への気持ちに変わりはないと話している。麻原の呪詛は信者の中で生き続けるのか?
お次は、国民栄誉賞までもらってしまった「なでしこジャパン」のエースストライカー澤穂希が、あまりのストーカー被害で、引っ越しせざるをえなくなっているという話。なにしろ、年収350万程度といわれる澤だから、オートロックのマンションには住めなかったのだ。
菅首相の人気取りのために利用されたとしか思えない「なでしこ」への国民栄誉賞だが、もらった35人は、これから、その重荷を背負って生きていかなくてはならない。
他には、先日収監されたホリエモンの母親が、福岡の社会福祉法人の「女帝」として君臨している。
人気の女優兼モデルの萬田久子(53)と事実婚を続けていた内縁の夫に、別の女性がいて、隠し子までいることが発覚した。インタビューされた萬田は、そのことをまったく知らなかったようで、つぶらな瞳をさらにまん丸にして遁走したそうだ。
おかしいのは、ニューハーフの草分けで、女性以上に美しい(ずいぶん前の話だが)タレントのカルーセル麻紀(68)が、男の病気にかかったという話。
彼女(?)の美を追究する涙ぐましいほどの摂生ぶりは有名だが、その彼女に昨年9月ごろから体調異変が表れた。右足に違和感を覚え、そのうち右足全体が痛むようになり、激痛が走った。
病院で判明した病名は閉塞性動脈硬化症。50歳代以降の男性に多く見られる、動脈硬化によって血行障害を起こす病気なのだ。
やはり見かけは完全な女でも、体は正直なものである。そういうことで今週は「新潮」の圧勝!
(文=元木昌彦)
●元木昌彦(もとき・まさひこ)
1945年11月生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社入社。90年より「FRIDAY」編集長、92年から97年まで「週刊現代」編集長。99年インターネット・マガジン「Web現代」創刊編集長を経て、06年講談社退社。07年2月から08年6月まで市民参加型メディア「オーマイニュース日本版」(2006年8月28日創刊)で、編集長、代表取締役社長を務める。現「元木オフィス」を主宰して「編集者の学校」を各地で開催、編集プロデュースの他に、上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで教鞭を執る。
【著書】
編著「編集者の学校」(編著/講談社/01年)、「日本のルールはすべて編集の現場に詰まっていた」(夏目書房/03年)、「週刊誌編集長」(展望社/06年)、「孤独死ゼロの町づくり」(ダイヤモンド社/08年)、「裁判傍聴マガジン」(イーストプレス/08年)、「競馬必勝放浪記」(祥伝社/09年)、「新版・編集者の学校」(講談社/09年)「週刊誌は死なず」(朝日新聞社/09年)ほか
カルーセル麻紀という生き物。
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