『キック・アス』クロエ・モレッツが冷酷なモンスターを熱演! 『モールス』
#映画
夏バテ気味の軟弱な草食系男子に喝! とばかりに、暑さたけなわの8月、危険な魅力漂うコワくてパワフルな女子たちがスクリーンで大暴れ。鮮烈な刺激とひとときの涼を味わえる新作映画3本を紹介したい。
まず先陣を切るのは、8月5日公開の『モールス』(R15指定)。雪に閉ざされた田舎町で、クラスメートからのいじめに遭っている12歳の少年オーウェンは、アパートの隣室に引っ越してきた美少女アビーと出会う。ともに孤独な2人はやがて心を通わすようになるが、アビーは雪の中でも常に裸足、青白い顔色、日中は決して姿を見せないなど、多くの謎に包まれていた。時を同じくして、町では少年が生きたまま血を抜かれて殺された事件を皮切りに、猟奇殺人が立て続けに起きる。アビーから驚愕の秘密を明かされたオーウェンは、ある決断を下す……。
本作のオリジナルは、スウェーデン製ホラー『ぼくのエリ 200歳の少女』(2008)で、『クローバーフィールド HAKAISHA』(同)のマット・リーブス監督が舞台をアメリカに移してリメイク。アビー役を演じるのは、『キック・アス』の超過激なスーパーヒロイン役で世界を魅了したキュートな女の子、クロエ・モレッツ。過酷な宿命を背負った憂いの表情、冷たい刃物のような鋭い視線、ひとときのデートで見せるあどけない笑顔など、卓越した演技力で難役を演じきり、思春期の切なさとモンスターホラーの恐怖が絶妙に共存した傑作に仕上がっている。
続いて参戦するのは、8月27日公開のサスペンスアクション『ハンナ』。フィンランドの山奥で、元CIA工作員の父に高度な戦闘技術と数カ国の言語を徹底的にたたき込まれて育った16歳の少女ハンナ。彼女はある目的のため父と別れ、自らCIAに捕らえられる。厳重に警備された地下施設に拘禁されたハンナだったが、身に付けた戦闘能力を発揮して任務を遂行し、いとも簡単に施設を脱出。だが、父の昔の同僚でCIA捜査官のマリッサが、非情な工作員を操りながらハンナを次第に追いつめていく……。
主演は、『つぐない』(07)で弱冠13歳にしてアカデミー助演女優賞にノミネートされるなど大ブーイクしたシアーシャ・ローナン。すでに定評ある演技力に加え、今作では初の本格アクションに挑戦。格闘や銃撃で大の男たちをバッタバッタとなぎ倒す場面の連続にゾクゾクする。冷酷な殺人マシンとして育てられたハンナだが、旅の途中で出会った家族とふれあい、年頃の女の子らしい感情が生まれる過程もしっかり描写。監督のジョー・ライトは、ローナンと最初にタッグを組んだ『つぐない』で、撤退する連合軍兵士たちがあふれる海岸シーンを5分間の長回しで収めたショットで映画ファンを驚かせたが、本作の後半にも、父親役のエリック・バナが躍動する印象的な長回しのアクションシーンがある。ローナンの熱演と合わせ、じっくり味わってほしいポイントだ。
しんがりを務めるのは、韓国発の官能サスペンス『ハウスメイド』(8月27日公開、R15指定)。上流階級の邸宅にメイドとして雇われたウニ(チョン・ドヨン)は、優しい主人、双子を妊娠中の妻と6歳の娘の世話をするため、先輩メイドと共に忙しく日々働いていた。ある日、ウニは主人から求められるまま肉体関係を結んでしまうが、それ以降、彼女の身にさまざまな異変が降りかかる。無垢な愛情が裏切られたと悟った時、ウニは復讐を決意する……。
韓国映画界の名作『下女』(60)をイム・サンス監督がリメイクした作品で、第63回カンヌ国際映画祭にも正式出品されるなど、完成度の高さは折り紙付き。前述の2本のヒロインたちが怖さ、強さを外に発散するのに対し、本作では内にこもる狂気の強さと恐ろしさがじわじわと心に染み込むかのよう。終盤でウニが実行する異様な”復讐”に、誰しも肝を冷やすはず。映画館で三者三様のコワい女子を見比べて心身共にクールダウンし、節電で冷房も控え目の今夏を涼やかに乗り切っていただきたい。
(文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉)
『モールス』作品情報
<http://eiga.com/movie/55782/>
『ハンナ』作品情報
<http://eiga.com/movie/56063/>
『ハウスメイド』作品情報
<http://eiga.com/movie/56059/>
大暴れ。
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