「ひそかにブームの兆し!?」マニアを熱狂させる”フックトイ”ってなに?
#本 #サブカルチャー
君は「フックトイ」を知っているだろうか?
観光地の土産物屋や高速道路のサービスエリア。はたまたファミレスのレジ脇やスーパーのお菓子コーナーで売られている、フックに引っ掛けられた”チープ”というほどにはチープ過ぎず、かといってそれほど立派な作りとも言えない、今一つ正体不明なおもちゃ。それが「フックトイ」である。
そんなB級なおもちゃ──「駄玩具」を集めに集めて、フックトイ・メーカーに取材までしてしまった究極のフックトイ本が『スーパーB級ロボット大戦ダガング』(アスペクト)だ。
今回は中学2年生のころから駄玩具を集めまくっているという著者・加藤アングラ氏にフックトイの魅力を語ってもらった。
知れば知るほど、その奥深さに頭がクラクラしてしまうフックトイの世界をのぞいてみよう!
■”子ども目線”が計算されているフックトイ
──いきなりですが、加藤さんイチオシのフックトイはどれでしょうか?
「『ロードライダー』ですね。たぶん始めて買ったフックトイで、今でも大好きなんです」
──フックトイの魅力って何なのでしょう。
「”カッコ良さ”と”ヌルさ”がちょうど良いバランスで共存しているところです。例えば、アジアで発売されているパチモン玩具なんかは、極限までのヌルさを楽しむという部分があるんですけど、一方で日本的なカッコ良さのちょうど良いさじ加減がたまらないんです」
──価格も基本的に1,000円以下と、手に取りやすい金額ってのもポイントですよね。
「そうなんです。僕の子どもが旅先でゴネた時に、『まあ、この値段なら買ってやるか』と思って、お土産屋さんで買ってあげた経験があるんですよ。まさに『この戦法か!』って気付きましたね。例えば、大手メーカーのおもちゃって電池は付いてないし、安全基準などの事情で電池ボックスがネジ止めになっているんです。ところが、『レールガー』シリーズ(列車がロボットに変形するおもちゃ)など電池で動くフックトイには必ず電池が付いています。それに電池ボックスもはめ込み式で入れ替えも楽にできるから、子どもが旅先ですぐに遊ぶことができる。実はフックトイには、こういう気配りが行き届いていますよね。マニア目線だとあまり気付かないことなんですけど、子どもを持ってみたらすごくよく分かりました」
──なるほど……奥が深いんですね。そんなフックトイはいつごろ生まれたものなのでしょうか?
「正直なところ、まだ僕自身も詳しく分かっていません。ただ、キャラクターものや超合金のおもちゃの全盛期である1980年代半ばに大手メーカーから独立した方たちが、オリジナルおもちゃを企画していくうちに『今、トランスフォーマーが流行っているから、ウチも変形ロボットものを作ろうぜ』というノリでスタートさせたんじゃないかな。これも今回の本の取材の中でなんとなく感じたことだから、正確なところは分からないのですが」
──面白いのが、ウイングというメーカーのおもちゃは、倒産したタカトクトイスの『超時空世紀オーガス』や『超攻速ガルビオン』などの金型を流用し、新しいおもちゃとして名称を変えて復活しているところですね。
「そうですね。僕自身も取材するまで、『何でこのメーカーはタカトク系のおもちゃが多いんだろう』と思っていたんですよ。元々、マニアの間でいろんな推測があって、まるでそれが事実のようにひとり歩きしたりしていたんですが、この本を作るにあたって、いろんな確証を取っていくうちに、ようやく真相が分かってきたくらいです。そういう意味では、本当に収穫の多い本でしたね」
■実は「来てる」!? フックトイの現状!
──ちなみにフックトイは誕生してから現在に至るまで、進化したり流行り廃りがあったりしたんでしょうか?
「進化しているというか、退化しているというか……でも、確かに変化はありますよね。これまで、フックトイは基本的には日本のメーカーが作っていたジャンルだったんですが、最近はだんだん各メーカーに国内で企画開発をする力が弱くなってきた印象があります。実際、香港辺りのメーカーのおもちゃを輸入してパッケージだけ変えて売るシステムになってきているし、その分、日本独自の”似てるんだけど似てない”という微妙なバランス感覚が薄れて、単純に顔がガンダムに似たものばかりになっているんですよ。例えば、駅だの線路だの踏切だのが合体する牧歌的なロボが生まれる、日本独自のフックトイの味付けが薄くなってきていますね。というか、こんな発想、この国以外あり得ないでしょう(笑)」
──これはたぶん中国にはないセンスですね(笑)。
「電車って日本の文化でもあるんですよ。中国をはじめ、アメリカやフランスでも鉄道がそんなに一般的でもないので、外国のアニメファンが日本に来てまず感動するのが、アニメと同じように電車がそこら中で走っているってことらしいんですよ」
──フックトイって、日本の生活文化に根差したおもちゃなんですね。
「日本の子どもに分かりやすいストレートさがあるんでしょうね。流行りでいうと、ハリウッド版『トランスフォーマー』が特に中国で大ヒットして、今までほとんど変形ロボットなんか作っていなかった工場が、どんどん変形ロボットを作り始めたんです。その結果、中国で変形ロボットのおもちゃがどんどん増えて、結果的にはここ最近は日本のフックトイも何だか熱くなってきてるんです」
──おお、実はフックトイって今、「来てる」ホビーなのかもしれないですね!
「そうですね(笑)。そして、この本がきっかけで『フックトイっていいな』って思ってくれる方が増えてくれたら嬉しいですね。ただ、それによってフックトイのコレクター価格が上がっちゃうと僕が困ってしまうんですが……」
(一同笑)
(取材・文=有田シュン)
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